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家庭菜園部で行こう!!  作者: ゼリー
導入
7/205

7 活動報告書



「クラブの活動報告書を見たいだと?見たところ新入生のようだが」


 未来は生徒会室に来ていた。ちょうどそこに副会長と名乗る女性がいたので、活動報告書を見たいと願い出たのであった。


「はい!クラブの仮入部するにあたって、気になったことがあったので」

「ふむ、それは構わんのだが、いきなり一年で見たいなんていうやつは珍しいのでな」

「気になったことはそのままにしておけないのです!」

「ほぅ…」


 その言葉に副会長は感心したようであった。そして椅子からおもむろに立ち上がり、


「どのクラブだ?昨年度のでいいか?」

「はい、家庭菜園部です」


 未来がそう言うと、副会長は一瞬動きを止めた。そして何やら少し思案した様子で、


「…多分、お前の知りたいことは解決しないと思うが、ちょっと待ってろ」


 と言って、奥の準備室と言う部屋に入っていった。

 さっき副会長さんが言ったことはどういうことなのだろう?しかしどのみち今は何もわからない状態なので、ぼーっと待つことに専念した。つまりは別のことを考えるということである。


 前髪を切りそろえ、銀縁の眼鏡をかけ、理性的ながらも女性らしく出ているところは出ている副会長。小倉のような明るくて可愛い女の人もいいが、こういう頭の良さそうな女性にもあこがれてしまう。

 しかし自分の姿を思い浮かぶと、見た目に関してはとてもなれそうもないと絶望を抱いてしまう。人一倍低い身長、大きい瞳、そしてサイドテールというか横に結んだ髪。未来から見て右だけしか結んでないのでツインテールとは呼べないはずだ。

 この髪のまとめ方が子供っぽいのかなぁ…、そう思いゴムを外して手鏡を見てみるが、どうにも印象は変わらない。そんなことをしていたら副会長が戻ってきたので、慌てて髪を元に戻し、手鏡をしまった。

 これから背も大きくなって大人っぽくなるはずだ!と思いこむことにして脳内会議(?)を締めくくった。


「これだ」


 副会長は微妙に苦い顔をして、ファイルを差し出した。


「ありがとうございます!」


 感謝の意を唱え、開けてみると紙が一枚挟まっているだけであった。

そこには家庭菜園部設立と言う文字と、設立した日付が書かれているだけだった。


「えっと…これは?」

「見ての通りだ、昨年度の終わりの方に急に設立した部なんでな、活動報告はまだ無いというわけだ」

「そうですか…」


 未来はがっかりしたように力なくファイルを閉じた。その心中を察したのか、副会長が語り始めた。


「ほんとはだな、クラブ設立にあたってはまず同好会を作ることから始めなくてはならないんだ。そして活動報告を続け、部員、活動が部に昇格するにふさわしい状態になった時に、初めてクラブとして認定される。そんな流れなんでな、部が設立したばかりとはいえ本来は活動報告がここに挟まれていなければならないのだが…少し事情があってな」

「事情ですか?」

「ああ…こう言って伝わるかはわからないのだが…学園長の命令でな」

「!?」


 ここでも学園長がでてくるのか!?どうやら運命は未来と学園長の死闘を望んでいるらしい。そんな妄想が一気に広がった。


「まぁそんなわけだ、こちらでは今のところ知る手段がないから諦めてくれ。あとは…部に行って話を聞くくらいしかないだろう」


 最初に直接部室に行って追い出された未来にとっては、この結論は手痛かった。

 しかし…家庭菜園部と学園長。この二つがくっついたことは未来にとって幸運だったとも思える。家庭菜園部の内情を知ることによって、学園長の考えていることが分かるかもしれない。もともと暴こうと思っていたことではないが、知りたいと思う探究心には改めて火がついた。


「わかりました、ありがとうございます」

「すまんな、力になれなくて」

「いえいえ、少なくとも私にとっては益があるお話だったと思います」

「そうか」


 そう言いながら副会長は微笑みながら髪をかき上げる。右耳にチラッと見えたピアスが真面目そうな印象とアンバランスさを醸し出し、ミステリアスだなぁとか未来は思った。そう!年頃の人間はカタカナの言葉を使いたがるのである!




 生徒会室を出て、これからどうしようかと考える。とりあえず外堀は埋まってしまったというか、始めからなかったというか…。あとは、城を直接攻めるくらいだから…。


「森野先輩の観察ですかね」


 そう考えた未来は小倉にクラスだけ聞いて、次の日から行動に出ることにした。


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