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家庭菜園部で行こう!!  作者: ゼリー
本編
55/210

初めての家庭菜園部 1




「うぐぁああああああ!!」

「おい馬鹿、音量下げとけ鼓膜破れるぞ」


 夜、人気のない家庭菜園部の畑付近で何やら怪しげな丸みを帯びた影が二つ。


「うううううううあああうあうあ」

「さっき言ったろ、念じればいいぞ」



「・・・っはぁはぁはぁ、うう~、始まる前に初期設定とかないんですかねこれ…、ってちょっ、音量下がったと思ったら、じょ、情報過多すぎる!うっ」


 どしんと一つの影がその場で崩れ落ちる。


「ああ、保たなかったか。まぁ最初はしゃーねぇな」



 と、もう一つの影が呟く。それはよく見るとクマであった。

クマといっても、山や森にいるような生き物のクマの類ではなく、

デパートの屋上とかでこどもに風船をくばっているような着ぐるみのクマである。

その中身というのは、家庭菜園部に所属し、その部長という肩書を持つ森野拓という人物である。

そして森野であるところの着ぐるみのクマは、もう一つの影に近づき、軽く頬を叩く。



「いいい、いいっった痛い!!」

「ちょっとまず深呼吸しろ、そんでもって頭の中で、視覚触覚の拡大領域を解除するイメージをしろ、さっきの音量下げる感じな」


「すーーーーーはーーーーー。・・・・・・・おっ、おお」

「まぁ、まずはやってみなきゃわからねぇからな。そこから徐々に慣らせばいいんじゃねぇか?」

「・・・わたしさっき、気を失ってたんですかねぇ、なんか意識なかったですけど」

「ああ、失ってたぞ。まぁでも俺の時は誰のサポートもなかったからな、まだましだ」

「ええ…。森野先輩はあんなのどうやって切り抜けたんですかね?」

「何日かやってたら慣れた」


 もう一つの影の中身はというと、

先日学園に入学し、様々な部活の仮入部を経て家庭菜園部に入部をした司馬未来という一年生であった。

 その司馬未来は先ほどの森野との会話に対し、

 バケモノか?いやバカ者かもしれない。逆に普段頭が空っぽだから、情報がたくさん入ってきても、それでトントンなのかもしれない。と、先輩に対して失礼なことを考えていた。


「お前なんか失礼なこと考えてるだろ」

「い、いやそんなことは…ないですよ?」


 こういう時だけ野生の勘がよく働くやつだと、またしても失礼なことを考えている。


「・・・まぁ音量だけは下げといた方が無難だな。まぁでもある程度だが他の感覚は鋭敏にしといて慣れといたほうがいいかもしれねぇな。いざという時に使い物にならないからな」




 彼らに一体何が起こっていたのか、時間を遡ってみてみると、

 

 この日の授業が終わり、放課後に家庭菜園部の部室に未来が行こうとすると、

途中で森野に呼び止められた。


「おう、今日はお前の歓迎会やるからな。部室に20時に集合だ、いいな」


 それだけ言うと去っていった。ふむ、時間が空いてしまった、一旦帰るべきか、校内をうろうろするかどうしようか。

 しかし歓迎会か、そんなことは全くと言っていいほど予想だにしなかったので面食らってしまう。とりあえず腹は空かせておくことにしよう。

 なので普段なら喫茶店部などでお茶しようかとも考えるのだが、

そうなるとついついおやつなんかも食べてしまうので、我慢することにした。お金も節約したいし。

 ということで校内をぶらぶらすることにしよう。家庭菜園部の使命である見回りも兼ねて。



 そうして言われた通り夜の8時、家庭菜園部の部室にくると、

森野が椅子に座り、雑誌を読みながら待っていた。

 森野がその姿勢のまま親指をくいっとして部室の奥を指差す。

 素直にそちらの方を見てみると、左奥にあるロッカーが、二つに増えていた。


 これは、もしや…


 ロッカーが二つに分裂した…?

この学園というのは少々不思議なことがよく起こるようで、

モノが分裂したりしても特段おかしくはない。


「お前、なんかくだらないこと考えてるだろ?」

「・・・はっ!?」


 いやいや、さすがにモノは分裂しないだろう。危ない危ない。罠に引っかかるところであった。


 未来はロッカーに近づき扉を開ける。


 片方には前からある森野のクマの着ぐるみ、

 もう片方には・・・


 その場でそれを身に着けようとするが、その前に森野に制された。


「家庭菜園部の畑で待ってるからそっちの方へ来い」


 と言うと自分はさっさと着込んで、もう一つのものも持って去っていった。

ふ~む、もったいつけるようなことなのだろうか。

まぁ確かにあそこなら今、人気は無いだろうし、動き回っても問題にならないだろうけど、

でもそれなら今着てもいいと思うのだが。

それにわざわざ畑に行かせるなら最初からそっち集合にしておけばいいのになぁとも思った。

まぁ良い、とりあえず来いと言われれば行くまでだ。


 家庭菜園部の畑というのは、この学園の校舎からだいぶ離れたところにある。

広めのグラウンドをはさんで、その奥にある。さらに進むと妖怪なども出てくる森があったりする。


 もうこの時間ともなれば運動部も活動してないので、

その付近にいる人間はほぼ皆無である。もしいるとすれば好奇心旺盛な人間くらいなものであろう。




 そして、その家庭菜園部の畑で未来に森野から渡されたものは、

 着ぐるみである。

 森野のクマの着ぐるみと同じ性能のものを、未来が家庭菜園部に入ったことで支給されることになったのである。

 そこで好きな動物を選んでいいということで、

未来は森野と同じクマではなく、ゾウガメにすることにした。

しかもガラパゴスゾウガメのくら型である。


「う~ん、やっぱり高いサボテンを食べれるように進化したくら型ですかね~、ドーム型のほうが甲羅で守りやすくて弱点も少なそうですが、ほら、背が小さいと高いところを目指したくなるんですよ、その辺のロマンとでもいうべきものが…」

「知らねぇよ!」


 という会話がその時に繰り広げられていたのである。




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