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家庭菜園部で行こう!!  作者: ゼリー
導入
52/210

52 屋上での攻防

 未来が屋上の扉を開けると、


 目の前で件の女生徒が、今まさに屋上の柵をまたいで越えようとしているところであった。


「ちょっ、ちょーっとまったーー!!」


 勢いで声を掛けたはいいが、しまった!この後どうしたらよいのかがわからない!

霊にとりつかれた人の対処までは水神に聞いてなかった!


 声をかけた相手はその態勢のまま首だけこちらを振り向く。


 まるで人形のような青白い顔に、感情のこもっていない眼。

 そして今ははっきりと視える。女生徒にとりついている霊。


 その顔を見たら、なんだかだんだん腹が立ってきた。


 この学校に来てからというもの、会う人会う人、皆汗水たらして生き生きと頑張っている。

時には机と同化するように死んだように寝る人もいるはいるが、

それはなんかしらの目的をはたすために身を粉にしている。



 なのに目の前の人物はなんだ!


「死んだ魚のような目をしているし、

やたら血色悪い顔だし、

ガラの悪い霊を連れて屋上から飛び降りようとしているだと?

自分が気に入っているこの学園でそんな事させやしない!」


 未来は柵を越えた女生徒に駆け寄り、腕をつかむ。


「ジャマするな!」


 女生徒は腕を思いっきり振るい、未来は吹っ飛ばされる。


 すごい力だ。未来は小さく体重も軽いとはいえ、地面をごろごろと転がってしまった。

脳のリミッターとかが振り切れているのかもしれない。


「何度だって邪魔してやるわ!」


 獣と対峙している時は気合が大事と聞いたことがある。

作戦とかそんなもの考えなしに再び突っ込んで掴みかかる。


 ブン


 再び屋上に転がされる。


「負けるもんかーー!」


 すぐさま立ち上がって掴みかかる。


「だからジャマするなといっているだろう!」


 ブン


 また転がされる。


「お前が諦めるまで諦めない!私はここを護る、家庭菜園部に入るんだからな!!」


 再び掴みかかろうとしたその時。


 未来は顔面に衝撃を感じた。


 一瞬意識が飛び、何が起こったのかわからなかったが、

掴みかかろうとした両方の手の間から、

彼女の拳骨が顔面に伸びてきていたのだ。

即ちクロスカウンターというやつか。


「なかなか良いパンチを打つじゃないですか…!」


 捨て台詞をなんとか吐いたものの、頭がクラクラし立っているのがやっとだ。

もしこの瞬間に飛び降りようとしても捕まえられる気がしない。


 そんなことを思っていると、どうも目の前の相手の様子が変だ。


 自分と今頂戴したカウンターの拳を信じられないような顔で見比べ、

顔色が真っ青になっていく。

 先ほどの血色の悪い青白い顔ではなく、しでかした!という時の血の気が引いた感じだ。

自分で思っておきながら違いが分からないが、まぁアレだ、表情を見れば分かる。


「わ…わたし…?」


 自分のやったことがとても信じられないという顔で震える手を見つめる。


 そして辺りを見やる


 そう、屋上の柵の向こう側なのである


「わ・・・!」


 足場のない後ろを見て目がくらんだのかふらつく


「危ない!」


 瞬間的に動かない体を無理やり動かし、柵を飛び越え相手を掴む。

柵を越えるときに掛けた手はそのまま掴んだままで。


「早く!態勢立て直して!」


 足は屋上のへりにかろうじて着いていたものの、上半身は斜めに宙に飛び出たところだった。

自分の筋力では、完全に持ち上げることなんてできないので、間一髪だった。


 未来の腕を必死に伝って屋上に全身戻ってくる。

柵の外側が恐ろしいのか、そのまま柵を乗り越え内側に戻ったところで地面に倒れこみ、身体を自分の手で抱えながら震えている。


 良かった

 頭のキーンとしたのもなくなったし


 これで大丈夫だろう


 ほっとして気が抜けた瞬間、なにか違和感を感じた。


 自分の手が柵から離れていた。


 ちょっと待って、まず柵を掴みつつ彼女を掴んで、腕伝いに帰ってきて柵を越えたのを自分は見てたわけでしょ?

 ということはつまり自分はずっと外側に力がかかったまま柵を掴んでいたと、そういうわけで、その手を離すとどういうことになるか、あら不思議、

 空中にダイブすることになるというわけで…


 あら不思議じゃないわっ!


 自分の体がゆっくりと外側に傾いていき、空中に倒れこんでいく

意識はゆっくりはっきりとしているが、実際にはそうではないのだろう

倒れこむのを止められない


 死ぬ


 そう思った瞬間、無理矢理体をひねって、

完全に落ち始める瞬間に屋上の端に手を伸ばす。


 ガシッ


 なんとか片手でつかめた。


 しかし度重なる攻防で、登りきれる力がない。


 どんどんと手から力が失われていく。


 こんな時にあの人だったらどうするのだろう。


 このときに頭に浮かんだのは森野であった。


 絶体絶命だとしても、きっと諦めない。


 自分はそうはなれなかったが、さんざんこっちも振り回されたんだ、

 学園を護るという言葉を信じ、

 少しくらい希望を願ってもいいだろう




 未来は最後の力で大きく息を吸い込み、


「せんぱーーーーーい!!!!!!」


 言い終わると同時に手の力が抜ける。


 ま、自分はよくやったと思い、落下しながら目を閉じた。




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