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家庭菜園部で行こう!!  作者: ゼリー
導入
49/210

49 にかわとゼリーは仲間なようだ。


 木工部仮入部二日目



 未来が放課後木工部に来ると、後から他の先輩が一人やってきた。


「お、珍しい、一年生かな?」

「はい!仮入部ですが、昨日から三日間ほどお世話になります」


 何で三日間なんだろうと首をかしげているが、まぁいいかという様子で作業の準備に向かう。


「あの~、先輩は今何か作っているんですか?」

「ああ、本棚だよあれ」


 奥の方に各人のスペースがあり、そこに材料らしきものがまとめておいてある。

今のところ、パーツで分かれているせいかそれが本棚とは分からない。


「ほぉー、なるほど。木工と言うと椅子とかを思い浮かべていましたが、

なるほどそういうのもアリですねぇ」


 話しているうちに用務員さんがやってきていた。


「木工でもジャンルみたいなものがあってな、椅子は脚モノと言われていて、収納するもの箱モノなんて言って分けていたりするぞ」

「へぇ~」

「それぞれ性質が違っていてな、会社によってもどちらかしか作らないなんてこともよくある」


 家具を作っているところなんて、何でも作っているもんだと思っていたが、どうやら違うらしい。


「様々な理由があるが、せっかくだ畑中」

「はい!」

「それにはどんな理由が考えられると思うか?」

「う~ん」

「自分が作るイメージで考えて見ると良いかもしれない」

「おお、授業っぽいですね!」

「なるほど、あっ、まずは効率ですかね」

「いいぞ」

「あとは、そうだなぁ、機械設備や道具の種類なんかも変わってくる気がします」


 おお!、しっかりと答えてすごい!


 あっ今わかった!これが勉強と言う事か!

普段授業は正直つまらなくて、他のことを考えたり、寝てたりご飯を食べたりしているが、

 実際にやってみて、それを元に経験から考える。なるほど机に向かうだけが勉強じゃないんだなぁ。


「そうだ、畑中、今日本棚は接着か?」

「そうです」

「せっかくだから手伝ってもらえ、自分も見ていてやるから」

「助かります!」

「本棚組み立てるのですか?」

「そうです!」

「接着剤を塗った後は時間との戦いだから、こういう少し大きめのものは人数居るなら一人より二人の方がいいんだ」

「なるほど~、役に立つかはわからないですが、よろしくお願いします」

「大丈夫だ、やり方自体は難しいわけではない」


 まず接着剤を必要な場所に塗る。ホゾ組みで加工してあるので、

出っ張っているところと溝の部分に塗ればよいようだ。

そしたら溝にホゾを差し入れて本棚を組み立てる。

きつくて一生懸命に押しても完全には入りきらない。

そこで、クランプというもので圧着する。


クランプというのはギュッと締め付ける道具だ。


締め付けたことにより接着剤も押し出されるので、それをふき取る。これをしないと接着剤が残ってしまい、塗装してもつかないわ、塊は残ってしまうわで良いことがないようだ。


 そこまでしたら直角を確認する。

これをちゃんとしないと極端な話、平行四辺形になってしまう。

クランプの使い方も重要なようである。

 形ができて自分は喜んでいたが、こういう細かいところを見るのも大事なようだ。

これがプロの仕事というものか。

いじっているうちにまた接着剤が出てきたのでまたふき取る。


 そこまでしたら明日までこのままの状態にしておくようだ。


 昨日の箸作りも完成した時の満足感があったが、

こういう本棚のような大きいものが、材料の状態からこうして組みあがると、おおーっ!と満足感が半端ない。

簡単にはできないだろうけれど、自分もそのうちこういうもの作ってみたいと思った。



 完成後、畑中さんは帰り、少しまた用務員さんと未来が話している。


「私、正直勉強があまり得意でなくてですね。座って授業受けるとすぐ眠くなってしまうんですが、

なんか今こうして用務員さんに習っていることって現実に近いというか、

教えを乞うと言う意味では授業と同じなんですけれど、

勉強と実益と言うか現実が、こう、繋がっている感触があるんですけれど。

ってうまく言えてないですが伝えられてますかね…」


「いや、なんとなくわかる。正直学校の勉強なんて実際に直接使うことが少なく、

社会というか生活の役に中々立たない。って思うのと近しいかもしれないが、

例えば自分の仕事で言うと、木工でも数学の簡単な三角比を使うこともあるし、

…今ではパソコン上で図面を描けばその数字もでることはでるが、それはそれでそういう能力もある程度必要だしな。

まぁそんなようにどういう能力が自分にあっていて、どこで何の知識が繋がるか分からないんだ。まぁ、全部マスターしろとは言わないが、好きなものくらいはちゃんと聞いといて損はないのではないだろうか。

好きな教科とか、好きな先生とかくらいはあるだろう?」


 ほぼ全部の授業で他のことを考えている気がする…。しいて言うなら体育くらいだろうか。

興味がそそられたらもう少し聞いてみようと思う。


「そうだな。たとえばこれなんかでも繋がる所もあるかもしれないな」

「ボンドですか?」

「ボンドというのは商品名だ。正式名称は酢酸ビニルエマルジョン接着剤という。

ボンドがコニシ社のもので、同じ用途のモノをセメダイン社も出している」

「へぇ、全部ボンドと呼んでいましたねぇ」

「ここを見てみろ」

「星が並んでますね」

「これはフォースターというもので、ホルムアルデヒド放散量が基準値以内のものを言うのだが、化学の授業でホルムアルデヒドは聞いたことはないか?」

「いえ・・・」

「まだやってないか。化学式がHCHOで、まぁそれはいいんだが、いわゆるホルマリンと言われるやつだ」

「あの、生物なんかを保存する?」

「そうだ。これが身体に有害な物質でな、昔はよく使われていたのだが、

今は一定量の基準をクリアしていないと販売もできない。

では、何故それが使われていたのかというとだ、ホルムアルデヒドを接着剤に混ぜることによって接着力、特に目立つのは耐水性が飛躍的に向上するんだ」

「ほー、確かにそうなると使いたくなりますねぇ」

「それはこの酢ビ(酢酸ビニルエマルジョンを略した語)だけでなく、古来から使われている接着剤のにかわでも有効だ」

「にかわってたまに聞きますが、どういうものなんですか?」


 そう言うと用務員さんは顎に手をやり考え、


「子どもの好きなおやつのゼリーと同一物質だ。ま、ゼラチンだな。

ゼリーの場合はたっぷりのお湯に粉を入れて冷やして固めるが、

大雑把に言うとそれを濃厚にしたものだと考えてよい。なので、急遽接着剤が必要になったら、少量のお湯でゼラチンを煮詰めれば使えるぞ。

・・・まぁ接着剤がなくてゼラチンの粉があるなんて謎の状況があるかはわからないがな。しいて言うなら野外でサバイバルをして獣の皮とかがあったならそれを煮詰めればにかわになるかもしれないが…」


 すっごい極端な状況すぎる。


「そんな感じで手間が多少かかるんだが、にかわも使い方によっては優れている面もあってだな、

温度が下がると急激に固まるから、瞬間接着剤ほどではないが、固まるスピードが極端に早いんだ」

「ほぉ!それは使い道がありそうですね!」

「なので工房や工場の方向性によっては積極的に使っているところなんかもある。まぁ、個人で使うならやはり化学接着剤が使い勝手と手間的に使いやすいぞ」

「ふむふむ」

「少々脱線してしまったが、先ほどのホルムアルデヒドの話とか聞くと、

化学の授業とかでその名前が出たときに親近感というか、なじみがある分、ちょっと聞いてみようかという気にならないか?」

「確かに…。今化学の授業で聞いたら、あの耐水性のあるやつだ!って思いますねぇ」

「そういうように知っていると知っていないのじゃ興味の入り方も違うんじゃないかと思う。

知っているものが増えれば増えるほど感心することや感動することもあるだろう。

また何かの助けになることもあるかもしれない。今は役に立たなくても将来役に立つかもしれない。

ま、せっかく学校にいるんだ、楽しんで授業を受けたら良い」


 楽しむ、か。そんなこと考えたことなかったな。

用務員さんは用務員さんで教師ではないけれど、なんか自分にとっては教師よりも教師らしい気がする。

仕事を真剣に考えてやっている人に師事するのは、こちらの学びにもなる。そんなことを思った。





 にかわか…。森野先輩の食べているゼリーをうんと濃くしたら、にかわになって、内臓に張り付いて苦しまないだろうか。

 ふとそんなことが思い浮かんだ。


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