45 夜の森で影踏み
さて、今日の活動はというと、話の流れもあって妖怪探しに出かけることになった。
しかし先ほど聞いたように、妖怪というのはたいてい目的に沿って現れることが多いため、探しに行って見つけられる可能性は少ないという。なので見つからなかったらすまんと言葉を添えられた。
一応その中でも可能性の高い、家庭菜園部の畑の奥の森の辺りに行くことになった。
自然物が残っているところに現れる可能性が高いらしい。畏れがどうとか言っていたように思う。
・・・あの辺りは妖怪が多いのか。森野は襲われたりするのだろうか?まぁ対して活動していないので大丈夫だろう。
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森の辺りに来た面々。ミステリー部の活動の一日目以来である。ふと、あの幽霊も気になったが、きっと同じように其処に在るのだろう。
「あんまり奥に行かなければ、力を持った妖怪に出会うこともまず無いとは思う。あくまで可能性が低い高いの話だが、気を付けることに越したことはない」
もう夜更けなので、各自懐中電灯をもって歩く。
そこで10分少々か、そのくらい歩いた時に異変に気付く。
「お?」
懐中電灯に照らされたときに自分の影がどうも変に感じる。
光の角度によって影が伸びたり縮んだりするのは当然なので良いとして、
未来は髪を片側だけ結わっているのだが、影を見ると両側から生えているように見える。
気になって頭を触ってみるが、そこには何もない。
変だなと思っていると、頭のてっぺんから角みたいな影が生えたり、
片手だけやたら長くなったり。
三人に何か変だと言おうと思ったら、水神と泉は気づいていたらしく、影をじっと見ている。
「影法師か?」
こいつは影法師というのか?
二人の反応から察するに、たいして害はなさそうである。
「影法師っていうんですか?」
泉が水神に問う。
その辺りで鳥居も異変に気付く。
「なんか面白いなー」
緊張感のない奴だ。
「いや、ちゃんとした名前は分からないが、初めて見るやつにはとりあえず名前をつけているだけだ」
「それにも意味があるんですかね?」
「知らないというだけでも、恐怖心を煽るには充分な要素だろう。
自分たちが怖れることによって必要以上に力を持ってしまう怪異もいるにはいるからな。とりあえず分かりやすい名前を付けたら良い」
「可愛い名前とかの方がいいんですかねぇ」
「それ面白いですね!」
自分の意見に泉がのっかってくる。悪ノリとかじゃなく純粋に良いと思っていそうで逆に困る。
「かげちゃん」
未来の影の不自然に伸びた部分に向かって泉が小走りでかけ寄る。
影法師は近づかれるのを嫌がるように、左右にビヨンビヨンと影を伸ばす。
その時、
ズッ
未来の身体から影が離れた。
「えっえっ?」
「おおっ?お前、影が無くなったぜ?」
懐中電灯で照らしても自分に影ができない。
逆に先ほどの影法師に光を向けると大きい黒い塊の影になっている。
元は恐らく最初動いていた小さい分なので、今の大きさは未来の影の分だけ増えていることになる。と思う。
「ちょっと、人の影とらないでくださいよ!」
どうやって捕まえたらいいのかはわからないが、とりあえず影法師を追いかける。
それを見て影の塊は逃げていく。
「影が無くなるとどうなるんですか?」
「影は本体ではないが、モノがあるところに影ができる。
つまり影が無いということは存在が無いということにもなり、存在そのものが消滅するだろうな」
「ええ、あいつ死ぬの?」
「いや、存在の消滅だから居たという事実すべてが消える」
「そっちのほうがこわいわっ」
「期限は?」
「光、即ち日が昇るまでだろう」
「時間はありますが、この森の中で見失ったら時間がいくらあっても足りませんね」
「まぁ、あの手の妖怪はまだ力が弱い、影を奪われるなんて話も聞いたことが無いし、たいていおっちょこちょいだから、大体は大丈夫だろう」
「でも、影が無くなったら存在が消滅するんでしょう?としたら後世に残らないのでは無いでしょうか?」
「そういう側面もあるな」
「大変!?影を捕まえる方法は?」
「影踏みの要領だ。本人が影を踏めば返ってくる。他の人間でも踏めばある程度動けなくなるはず」
「未来ちゃんー!影を踏めば戻ってくるってー!」
泉の声が届いたよと返事代わりに手で大きく丸が返ってくる。
戻ってくる方法は聞いたものの、未来は捕まえるのに苦戦していた。
素早くはないものの、木々の影に混ざると一旦見えなくなり、繋がっている部分からならどこからでも出られるためだ。
なんとかひらけた場所に追い込まないとだ。
影法師がどんどん森の奥へ向かっていく。
先ほどの水神の、奥に行けば行くほど力を持った妖怪に出くわすかもしれないという言葉を思い出したが、自分の影には代えられない。とにかく追うしかない。
と、しばらく追いかけると少し先の方が木々が無くなるのが見えた。
未来は、しめた!と思った。あそこへ追い立てれば、もうほぼ丸裸も同然だ!
だが相手もそれに気づいたのか、空けた場所にでる直前、森を出ないように曲がった。
「ああ!」
そんな知恵を持っているのか、またずっと追いかけっこをしなければならないのかと思った時。
パッ
辺り一帯が明かりで照らされた。
木々に影法師が混ざらないように、ミステリー部の三人が照らしてくれたのだ!
「今だ!」
「影を踏んで!」
「よし!」
未来は跳躍して、影法師を踏みつける。
そーっと前後左右に動くと、未来の影がちゃんとついてくる。
ほっと一安心だ。
しばらく全員で影法師をにらみつけていると、観念したのか、小さな丸の影の形が離れていった。




