43 森野泉
ミステリー部二日目
ミステリー部は特に変わったことがない限りは放課後のみの活動ということなので、
未来は今日の昼休みは屋上にお弁当を食べに来た。
いや、ほんとは喫茶店部とかで食べたいんだけどさ、忙しいの分かっていると行けないんだよね。
そうして未来が特大のおにぎりをほおばっていると、
ガチャ、屋上のドアが開く音がした。また森野がきたのだろうか。
ちらりと目線を向けてみると、
違った…女生徒だった。
・・・あれ?この前も屋上に来た人かな?
頭の中で思い返してみる。その時、フワッとなんとも言えない感覚が漂ってきた。
なんだろう、この感覚は…?
もう一度その女生徒をよく見てみる。
・・・なんか顔色が悪そうな感じもする。声でもかけてみようか?
とその時、ドアの音が鳴る。
今度こそ森野であった。
その音に気付いた女生徒は、屋上から去っていった。
それと同時に変なもやっとした感覚は無くなった。
あの女生徒の影響だったのだろうか。
とりあえずちょうどいいところへ森野が来たとばかりに、
ミステリー部に仮入部することになったと報告しておいた。
機嫌が悪いのか、「あっそ」とつんけんどんな反応しか返ってこなかった。
△ △ △ △ △
放課後になり、ミステリー部の部室に来た未来。
これで昨日いた三人が集まったことになる。すると、
「どうも遅くなりました、あれ?新しい部員の子ですか」
部室に後から入ってきた人物に注目すると、この子が例の天使か!と一目でわかってしまった。たしかに可愛い。鳥居の同意をするのは癪だがたしかに可愛い。と思っていると、
「わぁ、可愛い子ですね~、部室が華やかですねぇ」
目の前の子からそんな言葉が発せられた。
お、おぅ。先輩とかならともかく、同級生に可愛いとか言われるのはなんだかくすぐったい。いつも大体身長の小ささで目上の人から言われるくらいしかないのだ。
水神の方を見ると、普段華やかじゃなくて悪かったなという顔をしている。
鳥居の方はというと、君の方が可愛いよという顔をしている。分かりやすい人たちだなぁ!
しかしながら本当に可愛くて清楚な美少女と言われていても不思議じゃないくらいの子だなぁ。かと言ってアイドルなんかみたいにキャラクターを演じている感じでもなく、むしろそういうものには全く興味がない自然体の真の清楚?とでも言おうか。
「あ、自己紹介もまだでしたね、初めまして、森野泉と申します」
テレビの人達みたいにお化粧もしているわけでもないし、…ああ、鳥居から聞いたことあるな、はいはい、泉ちゃんね、名前は知っているよ。ん?もりの?・・・もりの?えっ?
目を見開いてたった今自己紹介をした森野泉と脳内の森野先輩を見比べる。いや、見比べ?想像比べ?わからん!?
そんな未来の様子を見て、森野泉は何かに気づいたようで、手をポンと叩く。
「もしかして、司馬未来さんですか?」
フルネームだと?
「お兄ちゃんから聞いています。背が小さくて眼鏡の子がいるらしいって」
やはり兄妹なのか…似てないなぁ。というかやつがわたしの名前を知っていたことに驚きだ。
「昨日はすみませんでした、ちょっと道に迷ってシンガポールまで行ってしまって」
丁寧に申し訳なさそうにお辞儀をして、って、ん?シンガポール?
「また道に迷ったのか、おい鳥居、授業終わったらお前が迎えに行くことにしたらどうだ?」
「え~、な、なんか毎回迎えに行くとか、つ、付き合ってるみたいじゃんか~」
鳥居は気持ち悪くもじもじしながらそう言う。ってちがう!
そうじゃなくて、シンガポールとか言ってるけどそこは無視なの!?
というか何なの、天然のおボケなの?当たり前に会話が進行しすぎていって
私が逆に変なのかもしれないと思い始めてきたよ?いいのこれ?
うろたえている私の肩を水神がポンポンとやり、
「まぁ細かいことは気にするな」
と言ったが、細かくないわと思わずツッコみそうになった。
一呼吸おいて、
まぁ彼がそう言うなら気にする必要が無いものなのだろうと思うことにして、
とりあえずシンガポールは横に置いておいた。さよならシンガポール。
「あれですね、マーライオンって一つじゃなかったんですね!」
・・・こんにちはシンガポール!
しかしあれだなぁ。純真そうに見えても森野だから油断はできない。
わるいやつほど隠すのが上手いのだから、私が気を許した隙に悪事を報告されたら困る。
いや、あえてここはチャンスだと思おう。
こちらから攻めてあっちの情報を得るのも一つの手段だ。
「一つよいですか?」
「はい、なんでしょうか?」
「名字で呼ぶと森野先輩と被ってしまうので、名前で呼んでもよいですか?」
「はい!嬉しいです」
「泉ちゃんで良いですか?」
「もちろん!」
森野泉は両手を合わせてにっこりと微笑んだ。
「では早速、泉ちゃん。森野先輩って弱点とか嫌いなモノとかってありますかね?」
未来は直球しか投げられなかった。
未来から事情と愚痴を聞いている鳥居はこいつアホだみたいな顔をしている。
「お兄ちゃんの?・・・う~ん、
甘ったるいものは苦手ですねぇ。和菓子とか、あんこ系のものとか」
「ああ…。(それは水ようかんで実証済みだなぁ)」
「弱点は無いです」
「一つも?」
「はい!お兄ちゃんは無敵ですから!」
・・・もしやこれはブラコンってやつなのでしょうかね。
「とりあえずそろそろ今日の活動内容を決めるぞ」
もやもやしたものが残るまま、今日のミステリー部の活動が始まった。
今日は校内でめぼしいことがないか探すこととなった。
もちろん夜で、普通の生徒は帰っている時間である。
あまり大勢でも相手(霊など)から寄ってきにくいだろうということなので、
水神、未来ペアと鳥居、森野泉ペアに分かれて行動する事になった。
「この組み合わせで良かったんでしょうか?」
「お、不満か?」
泉から森野の情報を得たいというのもあったが、今日は別の意味で気になった。
「なんとも言い難いですが、どちらかと言うと向こうが心配というか」
「大丈夫だ、あいつは何だかんだで変な度胸ないし、いい意味でバカだし、
それと意外と面倒見が良かったりするからな」
鳥居への評価がとっちらかりすぎて、まとまりがなさすぎやしないか水神先輩?
どうだったかなぁと思い返すと、仮入部させてくれと言った時もすんなり受け入れてくれたし、暴力教師に捕まりそうになった時もそういえば助け舟を出してくれたっけ。まぁアホだがいいやつだ。
「女性男性チームで分かれたらそれはそれで泉のやつはたまに突っ走るからな。
変なことに巻き込まれても困るしな」
幽霊探しとかは変なことには含まれないのだろうか、という素朴な疑問が沸き上がる。
「さて、そうだなあいつらは外へ探しに行ったから、俺らは校舎の中を探ってみるか」
職員室付近はまだ残っている教師もいるので、部室棟の上の階から見て回ることになった。
カタカタカタ
階段を上がっている時に妙な音が聞こえて一瞬ビクッとなったが、
これはあれだ。裁縫部のミシンの音だ、大丈夫だ、大丈夫。
ひとけのない夜の校舎はそれだけで雰囲気があるな。
そうして一番上の階に着いた
廊下に出る
辺りは全て真っ暗だ
階段から1教室分ほど歩いた時
ふわっと人の影みたいなのが廊下に現れる
と思ったら次の瞬間には消えている
「い、いいいいいまなんかいましたよ!」
今何か見えたほうを指さし、水神に訴える。
次の瞬間、同じような人の影がまた別のところに現れる
しかもそこら中に
「うあ、あああ、そこ、いっぱい・・・」
そしてまた消える
「落ち着け司馬」
「おおお、落ち着いてられないですって!
昨日までわたしゆうれいとか見たことなんてなかったのに、何で急にこんな・・・
喫茶店部の時も裁縫部の時もそこそこ遅くまで学校に残っていたのにににに」
「落ち着け大丈夫だ、飴でも食うか」
そう言って水神はポケットから飴玉を取り出した。
懐かしのカンロの飴だ。
飴はもらった。
飴をなめてすこし落ち着いた。と思った瞬間
自分の目の前に人の顔がフワッと現れた
あ、目が合った
気が付いた時はミステリー部の部室にいた。
「お、起きたか」
ここに戻ってきた記憶がないところを見ると、水神が運んでくれたのだろうか?
そしたらそこまで力がありそうにも見えないが、意外と力持ちなようだ。
それよりも、先ほどのはいったい何だったのだろう。
そう考えたところで、水神がそれを察したのか口を開いた。
「昨日最初に霊を見たことで、要はラジオのチューニングが合った様なものだと考えたら良い、
ただ、これらは昨日のとは違いはっきりとは見えなかっただろう?」
「そうですね…フワッと表れてフワッと消えるし、良く見えなかったです。目は合いましたが…」
「これは残留思念みたいなもんだ、この空間に焼き付いた写真とか記憶みたいなものか」
「幽霊と同じチューニングと言うなら、あれもそういった霊的なものなんですか?」
「近いと言えば近いかもしれないな。霊ではないが人から生まれたるものといえばそうであるし、
昨日少し触れた話で、幽霊が居るか見えているだけかというような話をしたと思うが、この現象に関しては見えているだけと言っても良いだろう。
まだ俺は見たことはないが、究極にこの空間に焼き付いた意識や感情があったならもしかしたら生霊というようなものになるのかもしれないな。
幽霊に関しては、大概そこまでの意志を感じれるものは多くはないから、発生原因は違ったところにあると思うが」
「…なるほど」
とりあえずよくわからなかった時はなるほどと言っておけば間違いはない。
「戻りましたー」
「おかえりなさい~」
「こっちはなんも収穫なかったわー」
鳥居がそう言う。
泉も残念そうに肩を落としている。
「そっちはどうだった?」
水神が未来に聞いてみろと言わんばかりに目線を向ける。
それにつられ鳥居と泉もこちらを向く。
「あぁあ、今日は怖がり憑かれました。いや疲れました」
「・・・確かにそれは疲れてるな」
「なんかあったのでしょうか?」
「まぁ昨日の初体験からのボスラッシュモードとでも言えばいいか」
鳥居はなんだかピンときた様子で、こちらに近づいてきて。
肩を叩く
「ウェルカムトゥ、リバースワールド」(裏の世界へようこそ)
森野泉はニコニコしていて、
水神は頭を抱えてしょうがないなという感じでうつむいていると思いきや。
必死で笑いをこらえていた。
なるほど、これがミステリー部なんだな。




