41 ミステリー部は超常現象研究会だったらしい。
「ところで少々聞きたいことがあるのですが」
「ん?」
「この部活って何かしら利益があるんですかねぇ?」
「…ああ、実はこうこうこういう経緯で~」
未来がミステリー部に仮入部することになった経緯と、今までやってきた部活の説明を鳥居が部長の水神にしてくれた。
「これは俺の考えだが、学校を出たら嫌でもなんでも仕事や実践に放り込まれるだろ?
何の利益にも将来の役にも立たないことを全力でできる時間なんて今しかないからな、
その方が俺は貴重だと思うし何より楽しい。だから俺は今、此処にいる。
だから悪いがこの部活は利益や意味なんてものはない。個々にココに来る意味があればいいんじゃないか?」
水神はニヤッと笑い、話を続ける。
「まぁ他の部活を否定するつもりはないぞ?失敗できる環境で実践ができるっていうのも中々体験できないことだしな」
なるほどそういう考えもあるのか、失敗できる環境で実践か。あまり失敗することなんて考えたくはないが、確かにその通りかもしれない。
「あとはそうだな、兼部も別に構わないぞ。どうしても活動は夜が多くなる」
「他の部活と時間が被らないからな~」
おお、それは助かる。って入部すると決めたわけではないけれど。
そういえばどんどん話が進んでいくが、根源的な疑問がまだ解決していない。
「そもそも聞きたかったんですが、ミステリーって、推理小説とかでよくあるミステリーじゃないんですか?なので最初は推理小説とか読んだり再現したり洋館に行って殺人事件とか解決したり、ゾンビと戦ったりする部活かと…」
「ああ。それも毎回言われるんだが、創設者がミステリーを直訳して不思議とか神秘とかの意味でつけたんだ」
「ほー」
「だから世間的に言えば超常現象研究会のほうが近いか。幽霊の他にも妖怪や未確認生物、あるならだがUFOなんかも研究対象だな。ゾンビはいないと思うがな」
「なるほど」
ゾンビはいないのか、少々残念である。いたらとりあえず定番のホームセンターに逃げ込もうと思って楽しみにしていたが。
「大体はその説明をするとがっかりして帰っていくんだが、極稀にこの話をしたら目の色変わって喜んだやつもいるが、まぁそのうちわかるだろう、今日は来ないみたいだが」
例の天使のことか!
「というか、幽霊が怖いとかそういうのはないんですかね?」
「大丈夫大丈夫」
「その大丈夫はなんか心配ですけれど」
「俺は慣れすぎたせいでその感覚が分からないが、幽霊が怖いっていうのはいるかいないか分からないのが大きいと思う。確実にいるってわかっていて、しかも憑かれる側でなくこっちが追う側と考えたらどうだ?」
「面白くなってくるだろ~?」
面白いとは違うもにょもにょした感覚だが。
「まだ見ていないから何とも言えませんけれど、確かにそう考えると少しわくわくが出てきている気がしますね。視えたりする自信は未だ全くありませんけども」
「大丈夫大丈夫」
「あれは視えなかった奴はいないから大丈夫だ」
「そうかなぁ」
「まぁそこは気にしなくていいとして、その先だな」
「先?」
「研究する部活だから、何故そこに存在するのか、どういった条件でこちらに現れるのか、人に危害を加えるようであれば、どうしたら解決できるのか。そこまでやってこその部活動だな」
「こいつすごいんだぜ、生徒会にも認められて人数少ないくせに部に昇格させたんだぞ」
「先輩に対してこいつとか言うな」
水神が鳥居に対しゲンコツする。
なんだか仲のいい部活だなぁ。
「この部活に入らなくても、この学園はそういったものに出逢いやすい。
だから少しでもこういった知識と経験を身に付けておくと何かの役に立つかもしれない」
「役に立たないかもしれないけどなー」
「まぁそれも一理ある」
「普通に生活してればたぶん普通だもんな」
ん?昨日同じようなことを考えたぞ?
あれか、クマの着ぐるみと出くわす話か。
ということはあれもやはり普通ではない存在ということか?
実体がない感じはしなかったんだけれども。
だとしても話を聞いておいて損はなさそうだな。
もう少し色々と教えてほしいと言うと、
水神が講義のように語りだした。
「重要なことは彼らともともと住んでいる空間が違うということを認識することだ。ただ、それがたまたま何らかの事象により、空間の重なりが生まれ、視えたり影響を与えたりする。その境を読むことが大事なことだ。時間の境、空間の境、より人に近いものであれば生死の境などもあったりするな。もちろんそれぞれの現象にそれぞれのルールがあるからなタイミングも一律ではないし、逆にその時間にそこに行けば決まって会えるというモノもある」
「今日見に行くやつもその類だなー」
鳥居が説明を入れる。
「まぁ大体は自分ら人間が認識できるものなんてごく小さなものだからな、人間とかかわりのあるモノや元々人間であったものくらいしか理解できないのではないかと思う。…極稀に人の力を超えたものをもしかしたら観測できる事もあるだろうが、仮にそれがどのような条件で起こるのかは分かっていても、なぜ起こるのかなどは小さな人の考えでは測りかねる事であろうよ」
□ □ □ □ □
そうこう話をしているうちに外も暗くなりはじめ、おなかも減ってきた。
「よし、そろそろ向かうか」
水神は部室にあった懐中電灯を持って部室の外に出た。
もちろん二人もその後についていく。
「どちらに行くんでしょうか」
「運動部のグラウンドのさらに先の方だ」
そっちの方と言うと、アレか家庭菜園部の畑があるほうかな?
学園とその畑の先にある森の間くらいの辺りかもしれない。
歩きながら水神は言う。
「いいか、幽霊が出ても大声出さない、騒がない、叫ばないこと」
「なんか避難訓練の標語みたいだな」
「そんなことする人いるんですかね・・・?」
「いるいる」
逃げるなら分かるが、叫んで何になるのだろうか。アメリカ映画とかならよく見るシーンだ。そういう偏見を未来はもっていた。
どんどん近づくにつれ、心臓がドキドキしてくる。
陸上のスタート前の緊張感を思い出す。
「よし、着いたぞ、静かにしていろ」
そこは木がまばらにところどころ生えている。
奥には森があり、その手前に一部草ばかりのぽっかりと円形に空間が空いた場所があった。
その空間に目線をやりつつも、手前の木々に少し身を隠すようにして、三人は待機した。




