2 遭遇
未来はとりあえず冷たいものでも飲みたいなぁと思い。自動販売機を探しに校内をうろうろすることにした。入学式の時の資料に校内の見取り図も入っていたのだが、校内を知るためには自分の目で見て自分の足で歩くことが重要なんです!と言わんばかりに、地図はあえて出すことはしなかった。
十数分後、司馬未来は迷っていた。
「ここは…どこだ…?」
いまさらながら見取り図を見るが、今いる場所がわからないため、見ても全く参考にならない。
「ええと太陽が今あっちに出ているから、西があっちで、こっちが東になるから、今いる場所は…」
校内はそれほど広くないのだが、初めて来る場所と言うのは彼女にとって迷路のようなものだった。
「そしてここが視聴覚教室で…」
ブツブツ言いながら、廊下の角を曲がると、
クマが廊下に立っていた。
思わずファイティングポーズをとってしまった。
クマと言っても本物ではなく、よくデパートの屋上にいそうな着ぐるみのクマだったが、いろんな意味で混乱したため、クマと出会ったら死んだふりは確かやっちゃいけなくて、背を向けて逃げるのもやばかったはずで、手を広げて大声を出すんだったっけ?とかそんな考えが頭の中を駆け巡る。
こっちに見られていることに気付いたクマは動揺したようだが、
パリーン!
次の瞬間に窓ガラスを破って外に飛び出した。
「えっ、ここ三階!!」
慌てて窓の外を見た時にはどこにもクマはいなかった。
…今のはなんだったのだろうか。
「この学校はなんか変わってますねぇ…」
そう口に出すと、頭の中でもちょっと変わってるということで落ち着いた。そこで本来の目的である自販機を探しに、地図を見ようとすると、
「あ~、どうしたのコレ!?君が割ったの?」
ブンブンと首を振った。
「怪我とかなかった?大丈夫?」
体中見回された。
「大丈夫そうだね、あ、新入生かな?おーっとさっきから質問ばっかりしちゃってごめんね~」
「はい、今日ここに入ってきました~」
「おーそっかそっかぁ、いや~私にもついに後輩ができるのかぁ」
話の流れから2年生だろうなと予測する。うっすらと茶色がかったロングの髪に制服っぽいスカートとワイシャツをしていて、さらに特徴的だったのはワイシャツの上からエプロンをし、胸の部分に名札のようなものがあり小倉と書かれている。
「ところでこんなとこで何やってたの?迷子かな?」
「あ、そうです~、ちょっと探検しつつ自販機を探してたら、迷子になっちゃって、くまが…」
「くま?くまってあのくま?がおーっていうやつ」
「ですです!それの着ぐるみを来た人(?)が窓ガラス割って…」
「なんだろう…すごく愉快犯としか思えない…」
その反応を見て、さっきのことはこの学校でも日常的ではないんだなぁと判断した。そしてこれ以上は胸にしまっておくことにした。
「自販機だっけ?のど乾いたの?」
「はい~、仮入部何しようか迷っていてとりあえず冷たいものでも飲みながら考えようかと」
「おっ、じゃあ今からうちきなよ」
「えっ、いきなり家に誘うだなんてそんな!」
「ちがうちがう(笑)私、喫茶店部の部員だからさ、入学祝いにジュースでもおごってあげるから来なよ!」
料理研究から喫茶に派生した部かな?と思いつつ、エプロンをつけていることに納得。
「あ、でもこの窓どうしましょう…」
「大丈夫大丈夫。うちの学校にはスーパーな用務員さんがいるからね、あとまぁ入学したての子にこんなこと言うのもなんだけど、モノ壊れたりすることたまにあるし」
「えっそうなんですか?」
「とりあえず行きながら話そうか」
「はい!」