18 焦げたハンバーグは焦げをとって、あとでハンバーガーにして食べました
喫茶店部仮入部、三日目。
「私思うんですよ。喫茶店部の人たちは学校に授業を受けに来ているんじゃなくて、部活をしにきているんだと…」
昼休みのピークを終え、皿洗いをしつつ小倉にそう言った。
「そうかも(笑)」
「勉強とかどうしてるんですか?」
「おもにカンニングとかかな!」
ニヤニヤしている、これはきっと嘘だろう。
「森野先輩にテストを見せてもらったりだとか?」
「いや、森野君に見せてもらったら今よりひどくなるから…」
カンニングと言う言葉に乗ってみたら、真顔でそう訴えられた。
森野先輩…この部活馬鹿の小倉先輩よりも勉強できないって…。
「なんだろう、結構授業中寝てる時が多いかな。夜更かしさんなのかもね」
「ほぇ~」
「未来ちゃんは?勉強の方はどう?」
「私ですか?」
「うんうん」
「えと、情けないことにあまり頭がいいわけではないので…」
「そうかあ、あ、でも仕事覚えは結構いいよね!」
「そうですか?」
「うん~、まだ三日目なのに今日のピークは結構動けてたしさっ」
「小倉先輩に比べればまだまだですよ~」
「ううん~、これはなかなかの逸材だぞって思ったもん!」
「そうかなぁ…へへ」
今日は小倉と接客を担当した。今までの仕事のできなさに悔しい思いをしていた自分は、
昨日の夜、寝る前にイメージトレーニングをしていた。
中学の高跳びの大会前とかも、理想の動きを頭の中でイメージすると、当日なかなかいい記録とか出たものである。
今日もそれが功を奏したのか、ところどころつまりながらだったが、最初のころに比べるとスムーズに仕事を回せたような気がする。なんと注文まで何回か取れたのだ!
完全に満足した…とはとても言い難いが、自分に及第点はあげたいところである。
もちろん小倉は自分の倍以上は動いていたので、まだまだ足りていないのは分かっているが。
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そして放課後、
「未来ちゃん」
厨房で調理をしていると小倉が話しかけてきた。
「はい、なんでしょ~」
「これあげる~」
なんだろうか、ぺらぺらの名刺くらいのサイズの紙を受け取る。
「!?」
「一生懸命頑張ってくれたからさ、なんだろう、お礼?」
「せんぱい…」
「バイト代…と言うには安いんだけどさ、また暇な時にでもそれ持って遊びに来てよ。昼休みはちょっとかまってあげられないけどね!」
この先輩は食事無料券を3枚もくれたのであった。
「あ、それ2名まで有効だから、なんだろ、無事に家庭菜園部に入れたら森野君と一緒にでも来たらいいよ!」
「・・・短い間ですが、お世話になった上に、こんないいものまでいただいて…ううっ」
目頭が熱くなってきた。
「おおっ、泣くのか、やーいやーい」
「ちがうもん!これは花粉症で」
「スギ花粉の時期は終わったよ!」
「もう小倉先輩のばかー」
後ろを向いて泣いてるところを見せないようにする。この先輩との応対でいじられるから正直泣きたくは
ないのだが、出てくるものは抑えられないし、出だしたら止まらない。
色んな事を教えてもらってこっちが感謝したいくらいですよ!
きっと今はちゃんと言えないから口には出さないでおいた。
赤くはらした目で小倉に振り返った時には、先ほど調理途中だったハンバーグは焦げていた。
お客さんには出せそうもないので、新しいのを焼きなおした。
途中で話しかけちゃった自分が悪かったねと小倉は謝った。
その後はしっかりと仕事をやり遂げた、つもりだ。…相変わらず飲み物には手を出させてくれなかったけども。
終わった後、お礼を言うと小倉が頭をなでてくれた。
ほんとは子供扱いされてるようで、身長の低い未来は撫でられるのがあまり好きではないが、今撫でられていることは嬉しいことな気がして、されるがままになっていた。
たった三日間ではあったが、終わってしまうとなんだか切ない。
朝から晩まで授業と部活とで、家に帰るときには肉体的にも精神的にも疲れていたが、充実したと胸を張っていえる日々だった。




