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家庭菜園部で行こう!!  作者: ゼリー
導入
15/210

15 トルコライストラップ



 初めての喫茶店部でのお昼の仕事が片付き、談笑していたのも束の間、

昼休み終わりのチャイムが鳴り、急いで各々のクラスに走って行くことになった。



 未来はというと、授業には間に合ったが、うっかり例のハートでレースのエプロンのまま教室に戻ってきてしまったため、クラス中から奇異の目で見られた。


「司馬~、そのエプロンはなんだ?」


 自分で気づいて外した時に鳥居に質問を投げかけられた。そりゃこんな人がいたら、自分でも何だろうって思うよ…。


「えっと、かくかくしかじかで、今喫茶店部に仮入部していて…」

「へぇ~、そんなものがあるんだな~」


 かくかくしかじかは文章中の表現などではなく、本当にそう言葉を発したのだが鳥居には見事にスルーされた。まぁその方が都合がいい気もするが。


 鳥居の他にも、よく話す人たちに何事かと聞かれた。喫茶店部と答えるたびに『そんなのあるんだ』という反応が見受けられる。

 まだ一年には浸透していないのかな?だとすれば良い宣伝になったかもしれない。でも昼にはちょっと来ないでほしいなぁと、心の隅で祈っておく。

 


 疲れと空腹で、その後の授業はほとんど頭に入らなかった。

 そして放課後。



「ムシャムシャッ、ゲフッ」

「未来ちゃん、よく食べるねぇ」

「そりゃそうでしょ…」


 罪悪感を感じた小倉と焔が喫茶店部でご飯を出してくれた。


 トマトピラフに目玉焼き、ナポリタン、ハンバーグになんとエビフライ!それとオレンジジュースもつけてくれた。こんもり盛ったピラフには小倉が旗をさしてくれた。見たところ明らかにお子様ランチである。


 それに対し子供扱いしないでください!と未来が抗議をすると、

だまされたな、これはトルコライスだグハハ!と小倉が言いはり、結局のところ空腹に負け、トルコライスという名のお子様ランチにむさぼりついた。


「しっかし、おいしそうに食べるなぁ…、部長ー、このお子様ランチメニューに加えたらどうですか?」

「ふぁっぱり、おこはははんひじゃないですか!」

「うわっ、未来ちゃん口に入った米粒飛んでる飛んでる」


 と言うとテーブルを拭く小倉。


「これはしつれい…」


 謝りつつも、ちょっと不満気である。


「あのねぇ…、お子様ランチって言うのはどの店にとっても大体はサービス商品なのよ」

「えっと…つまり?」

「お子様にも喜んでもらえるメニューがあるよ~って家族を釣るためで、…そうね、司馬さんが今食べてるの、ごはんとおかず何品ある?」

「ピラフに、目玉焼きでしょ?あとナポリタン、ハンバーグ、エビフライに旗で6品かな」

「旗なんて食べませんよ!キリンじゃないんですから」

「まぁ旗はともかく、目玉焼きもつけ合わせとしても、ピラフ、ナポリタン、ハンバーグって言う目玉料理が入ってるじゃない?」


 それを聞いた未来が、まぐろの目玉がごろごろしている料理を想像した。DHAたっぷりだなぁと思った。キリンは完全に流された。


「お子様メニューで値段も手軽にしなければならないのに、キッチンはハンバーグを焼いて、パスタを茹でる手間があって、ピラフは盛るだけではあるけど、仕事量と、おかずの種類での費用、と、総合的なコストパフォーマンスは高いのよ。一般メニューに比べ量が少ないとしてもね」

「確かに…。一品メニューの方が、つけ合わせとかはあるけど作る側は楽ですね~」

「そうそう、あとここは生徒や先生相手だから、家族連れってわけじゃないし、まぁあったらあったで需要ありそうだけど、値段はちょっと高めに設定した方がいいかしらね」

「ふむふむ、参考になります」


 小倉が熱心にメモを取っている。仕事に関してはしっかりしているなぁ。


「でも、正直ランチタイムに私は作りたくないから、やるなら来年小倉が計画してね」

「ええっ、そう言われると私も二の腕踏んじゃうなぁ~」

「二の足ね」

「てへっ」


 二の腕踏んだら痛そうだ。と未来は想像した。


「まっ、頑張るんだね」


 焔はそう言うと、ちょうど今入ってきた客の接客をし始めた。

 それを見て小倉もおっといかんといった調子で追って行く。が、いったん引き返して、


「未来ちゃんは食べ終わって一休みしたらでいいから手伝ってね。新しい仕事教えるからさ」

「かたじけないです!」


 小倉はひらひらと手を振って、部長をキッチンに押し込んで、客の注文を取りに行った。



 未来がオレンジジュースを飲みながら食休みをしていると、ちょこちょこと生徒が喫茶店部に流れてきていた。

 とは言っても昼とは違い緩やかであり、注文も飲み物やデザートが中心でのんびりできる喫茶店的な空気が漂っている。

 焔と小倉の二人でも十分余裕で仕事が回っているようだ。なるほど、昼にいた男の人はピーク用の人員なんだなと思った。

 客を見渡すと、本を読みながらお茶している人や、クラブでの話し合い…いや、見覚えのある副会長がいるところを見ると、生徒会の会議かな?あとは大人の人もいるなぁ、先生かな?


「よう、何やってんだ?」


 森野先輩だ!相変わらずこの人暇そうだなぁ!


「いえ、ちょっとお昼食べ損ねたので…」

「ああ、喫茶店部は昼食べてる暇なさそうだしな、小倉のやつもいつも早弁だし」


 そう言うと、森野は未来が食べてたものに興味を示した。


「お前、それ何頼んだんだ?」

「えっ…」


 お子様ランチとか言ったら馬鹿にされるに違いない!


「トルコライスです!」

「なんだそれ?メニューにそんなもんあったか?まぁいいや、おい小倉ー!」


 こちらに小倉が気付くと、パタパタと小走りで駆けてくる。


「ごめんごめーん、気付かなかったよ~、注文?」

「ああ、こいつと同じのを」

「お子様ランチだよ?」

「…あ?」

「おぐらせんぱ~い~」


 せっかくだまってたのにプンスカ!


「あ、もしかしてお子様ランチって言うの内緒にしたかったの?」


 そう言うと小倉はにやにやしている。

 何とかして一矢報いたい!


「森野先輩がお子様ランチ食べたいらしいですよ!」


 森野をいじめて憂さをはらすことにした。


「あん?なんかコイツが別の名前言うからよ」

「ああ、トルコライスかな?」

「それだ」

「う~ん、でもさっき未来ちゃん用にサービスで作っただけだからなぁ…」


 と言った後に何か閃いたらしく、手をポンって打った。


「同じのでいいんだね?」

「お子様ランチと言う名前には不服だが…」

「大丈夫大丈夫、見た目はアレだけど、頭の中はお子様でしょ!」

「大丈夫ってなんだよ!」

「あははっ、未来ちゃんちょっとおいで」

「あ、はい~」


 そう言うと小倉は未来をキッチンに連れて行った。


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