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家庭菜園部で行こう!!  作者: ゼリー
導入
12/210

12 くまさんとおいかけっこ


 くまの着ぐるみを目にした未来は息を飲んだ。

 

 ・・・下手に人間とかよりも、正直今の未来にとっては怖い。

人間にしても幽霊にしても、表情がついてる分(幽霊の表情はまだ見たことがないが)、そこから何を考えているのか大体読むことができる、

 それで何かしら対策を講じれると考えていたのだが・・・。

 いかんいかんと回らない頭を無理やり回し、今までに出会った時のクマを思い出そうとしたが、

童謡の、森の熊さんが思い出されて思考をかき乱される。

 ある~ひ、もりのなか、くまさんに、であ~った

童謡?動揺?いろんなものがごっちゃぐちゃになったが、そこでもなんとか自分を保とうと、未来は冷静になろうとしていた。

 クマに出会ったときは死体のふりをすればいいんだっけ?

 

 違う!

 

 まてまて、あれだ、こちらが見たときに、クマがこっちに気付いているならば、目があったはずだ…!とはいっても着ぐるみの視界がどうなってるのかはわからない、だが、こっちに気付いたのなら、一直線にこちらへ向かってきてもよい気がする。

それとも、こちらを怖がらせるため、じわじわと近付いた後に、ひっそりと陰から顔を出すとか…。


 パキッ


 未来ははっと我に返った。先ほどまで全くもって冷静になっていなかった。

どうやら混乱して後ずさりしている時に小枝を踏んでしまったようだ。

 それでも普段なら気が付きもしない音だったに違いない、

しかし他の音が聞こえない今、この距離だと…聞こえないわけがないだろうなと、そう未来は確信してしまった。

 却ってそのことが未来を冷静にさせた。

 

 先ほどの音を発してしまった後、クマも一度動きを止めた。


 そして確信を持ってか、恐る恐る(と未来は感じた)こちらへ向かってくる。


 クマが壁の横を覗いた時、


 未来は家庭菜園部の入口から見て真裏にいた。


 未来の作戦はこうだ、

クマに見つからないように部室の周りをぐるぐるまわれば、やがて向こうもあきらめて、

アレは幻聴か、ネズミかなんかが立てた音かと思ってくれるかな、とそういうことであった。


 クマが横を覗いた(足音の緩急からそう未来が思った)時も未来はそうっと音をたてないように奥の壁の陰を目指していた。


 しかし、クマが再び動き出した時、未来はまずいと感じた。

 足音のスピードが先ほどよりも速い!

 このままだと見つかってしまう。

 慎重に、だが急いで角を曲がる!


 向こうもちょうど曲がったようで、

おそらくお互いに一瞬の息をつく

そして、動き出さないとまた追いつかれてしまう。

そう思い抜き足を差し出そうとした時、


 !!!

 

 クマが走ってこちらへ向かってきている!

確信に変わるような、

そうか角を曲がった時に見られたんだ!

まずい!

まずいまずい!

どうする、どうするよ

走る?

音が出てしまう!

もうすぐそこだ!

角の横まで来てる!


南無三!



・・・


クマがその壁の横を覗いた時には人影は何もいなかった。

もう一度、家庭菜園部の部室を一周回った後、

確かに見かけたと思ったんだけどなぁ、というような考える動作をし、

その状態で1、2分くらい固まった後に校舎から中庭に入る入口の方へ戻って行った。


 未来は冷や汗をかいていた。

 簡単に言うと、あの瞬間部室の屋根まで飛びあがっていた。


 近くに段差があって高さが稼げたことと、中学の時に部活で高跳びをやっていて、結構いいところまで行ったこと。そのことがなければ思いつきもしなかっただろう。

 さっきは必死だったが、下にマットもない、下手をすると頭を角にぶつける。そんな危険なところでよく背面跳びをしたものだ。引退して時間もたっているから鈍っているだろうし。

 しかし、どんなとこで特技が活かされるかわからないものだ。

 未来の場合、中学に入る時も身長が低かったため、伸びることを期待して&小さいからこそ高い場所へのあこがれがあった、そんな気持ちで始めたのであった。

 だが、やはり結局身長が伸びなかったため、一生を賭けるにはあまりにも壁が大きすぎるとスポーツ推薦の道もあったが、それを蹴って違う道を選んだ。いや選んでいる途中といったところか。もしかしたら好奇心の強さはそんな理由があったからかも知れない。


 と、過去を思い出してる場合じゃないや。

息の荒れが収まったところで、やるべきことを思い出す。

ずっと手に持っていたファイル、それを眺める。

 目は夜の暗闇に慣れてきたので、何とか文字が読めるかもしれない。

 裏を確認すると、家庭菜園部活動報告書と書かれている…気がする。漢字が集まっているとさすがに読みにくい。

 中をめくると、ページ数はそこそこあった…が、

 どれも白紙であった。

 まだ書いてないのかなぁ。ペラペラとめくって最初のページを目指す。

 そして2ページ目に差しかかった時、ようやく手書きの文字が目に入った。


「なになに…ミントを植え、水を遣る」


 …裏をめくる。が、生徒会室で見たものと同じように、家庭菜園部設立、とその日付が書かれているだけだった。

 アレだけ苦労したのに…とがっくりした。先ほどの緊張の疲れがどっと来たようだった。

今日はもう帰って早くお風呂に入って寝ようと決めた。

とりあえずファイルを戻さないとと思い、再び部室に入る。

そして元にあったところに戻す。


 ふと、隣のファイルが気になったが、森野先輩のことだからどうせ大したことは書いてないだろうし、あまりまた時間かけてると、またクマに出会ってしまってもやだなぁと思い、すぐさま部室を出る。

もちろん帰る時も、音や人影には注意しながら十分帰った。

正直、家に帰った後のことは覚えていない。




 ・・・その日、夢を見た。

 

 クマの着ぐるみの夢だった。

 

 クマの着ぐるみに九十九神という物に憑く幽霊?妖怪?がとりつき、中に誰も入っていないまま夜な夜な学園を徘徊している。


 そして生きている人間を見つけると、その人間を捕らえ、着ぐるみの中に押し込むのである。

中に入れられた人間は、出ることもかなわず、着ぐるみと一緒にずっと歩き続ける…。

出られるのはそう、死んで腐ってしまったあと、クマが新たな獲物を捕らえた時だけ…。



 目覚めはもちろん最悪だった…。



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