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家庭菜園部で行こう!!  作者: ゼリー
導入
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1 入学




「皆さんご入学おめでとうございます、わが校は・・・であるからして・・・」


 教頭先生かなんかの長い話を聞き流しながら、司馬未来はこれから始まるであろう高校生活に思いを馳せていた。

その頭の中は友達100人できるかなとか、部活は何部に入ろうかなとか、誰しもが思うような当たり前のことであったが、ドキドキワクワクしつつもどこの学校もえらい人は決まって話が長いなぁとも思いながら今は座ったまま時間が過ぎるのを待っていた。


「続いて部活紹介に移りたいと思います」


 生徒会の人が入学式の進行を務めている。その姿を見て、この学校に来たときから気になっていたことを思い出した。この学校は服装に決まりはなく自由となっているのだが、二、三年生はワイシャツなどを着ている人も多く、入学式を取り仕切っている生徒会の中には制服らしきものを着用している人もいる。


「さすがに他の学校の制服を着たら問題ですよねぇ…?」


 誰にきかすともなく未来はぼそっと呟いた。

 そうして考えごとをしているうちに部活紹介は進んでいたようで、慌ててそっちに集中することにした。入学式が始まる前にもらった資料をざっと見た限りでは変わった部活が多いので、どこに入るかまだ決めていない自分としては見逃すわけにはいかない。


「え~購買部では部員を募集しています。特に足の速い人求む」


 部員を募集していない部なんてないだろう!!と心の中でつっこみつつ、なぜ足が速い人?と疑問が湧いて出る。どうやら一筋縄ではいかないらしい。そもそも購買部って部活なの!?

 


 そうして体育館での入学式もすべて終わり、各クラスに移動となった。のだが…。


「うう…真剣に部活悩んでそのまま寝ちゃったとか言い訳通るかな…というか誰か起こしてくれてもいいのにしくしく…」


 体育館でパイプ椅子に座ったまま、気が付いたら大口開けてよだれ垂らして寝こけていた。とても女子高生という響きには程遠いとがっくりした。


「とりあえず急がないと、えーと1年A組かぁ」


 体育館から渡り廊下を通り抜け、階段を上り、早歩きで自分のクラスである1年A組の教室まで行こうとする…が、


「んじゃこらぁ!」

「てめーこそぶつかっといてなんもねぇんか!?」


 ん?なんか外から聞こえたなぁと思い、廊下の窓から中庭を覗き込む。

 すると二人の男子生徒が胸ぐらをつかみ合っていた。

 司馬未来は、それを見るや否や、先ほど登ってきた階段をかけ下り、二人がけんかしている中庭に向かった。

 そこで見たものは鼻血を垂らして倒れている二人の生徒…つまりは先ほど胸ぐらをつかみ合っていた人たちであった。


「…私が中庭に来るまでの間に一体何が。…はっまさか!」


 胸ぐらを二人でつかみ合っている。同時に反対の手で顔面を殴る。二人とも鼻血を出して倒れる。それで今の状況に。間違いない!


「お、なんだなんだ?どうしたんだこれは?」

 

 そこに来たのは上下ジャージ姿で、長い黒髪をポニーテールにまとめ、つり目で気の強さを感じさせる、そんな女性だった。年齢的に教師かな?と思ったので、先ほど思ったことをありのまましゃべった。


「ふ~ん、でおまえは何してるんだ?新入生?とりあえず教室に戻りな、後始末は私が何とかする」

 

 二人を保健室にでも連れていくのかなぁと思い、その場を離れようとすると、突然その人が倒れている生徒の一人を殴りだした。


「ちょ、先生(?)な、なにやってるんですか!?」

「あ?事情を聴こうと思って、気絶したまんまじゃ聴けねぇだろ?」

「だからっていくらなんでも殴るのは…」

「手っ取り早いだろう?」


 駄目だ!この人はすごくダメなにおいがする!そう思った未来は、てきとうに挨拶してその場を離れることにした。


「く…くま…が」


 離れる時に聞こえてきた言葉が耳に残った。




「ふぅ…なんか疲れちゃいましたねぇ」


 独り言をつぶやきながら教室で机に突っ伏していると、となりの席の男子生徒が話しかけてきた。


「よぉ、俺、鳥居学、お前なんで教室に遅れてきたんだ?入学式にはちゃんといたろ?」


 髪が無造作に立っていて、正直寝ぐせなんだかファッションなんだか見分け付かないが、その勢いを性格に体現したような好奇心で質問してきた。


「えーとバイオレンスがありまして…さらにそれをバイオレンスでねじ込むというか…」


 鳥居学という少年の頭に疑問符が浮かぶが、それを一からちゃんと説明する気力も起きず、そのまま放置することにした。


「ああ、そういえばお前が教室に来る前に担任の先生が言ってたけどさ、4月いっぱいは部活は仮入部だってよー」


 早く友達作りたいのかお節介焼きなのかなんなのか、また話しかけてくる。しかしその情報は部活を決めかねている未来にとって有益であったので素直に受け取ることにした。


「おおっ、それはいくつか見て回ってみたいですねぇ」

「まだ決めてないのか?」

「ええ、ちょっと興味をひかれる部がいくつかありまして」

「ふ~ん、まぁちょっと変わってる部活多いしなぁ。あ、それと生徒手帳見たか?」

「うん?」

「さっきちらっと目に入ったんだけど、この学校の規則の欄ちょっと見てみろよ」


 言われたとおりに見てみると、


「校則第一条 学園長の命令に従いなさい。…うん?」


 その後のページを開いても第一条以外が見当たらなかった。



ふと受験の時のことを未来は思い出した。

筆記試験はなく面接のみ、推薦とかでもなく、中学在学中の成績も提出していない。なんだろう、ほんとに面接だけで決定されたんだろうか。


「この学園を志望した理由は何かね?」


 目の前のえらそうな校長?だったかの質問に


「面白そうだったからです!」


 と、いかにもだめな返事をしてしまい。大笑いされた記憶しかない。何故面白そうなのか、何故入りたいのかと、理由を突き詰めていくのが面接試験であると中学校で教わったはずなのに、その校長の顔を見ていたらそう答えるのが正しいような気がして…。


 そんな生徒(と言っても自分だが)までも合格させているとなると、こういった規則やら暴力先生がいるような校風もありえるんじゃないかと思った。

 また、先ほどのけんかといい、受験方式といい、この学校は何を目指しているのだろうか。そんな疑問も沸いたが、とりあえず目の前のことだ。そういうものは後に回して、根をしっかり張って人生を楽しもう。

司馬未来はポジティブでもあった。

 そうこう考えているうちに、教室でのホームルームも終了し、放課後になった。


「そんじゃあ俺は運動部でも見てくるわ~じゃあな~」

 鳥居学はそう言って教室から去って行った。


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