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「あの人は魔物とつながりがあったんだ」
パトカーに乗り込むと、少年が言った。
「そんなはずないわ。だって・・・・・・そんなつながりがあるはずが無い」
「彼女は以前結婚していたようだが、今は独身。それに、君たちが観覧車でトラブルに巻き込まれた日、監視カメラに魔物らしき子供と一緒に歩く姿が映っている」
キツネ目の刑事がパトカーの窓から顔をのぞかせた。
「そんな・・・・・・だって、何かの間違いよ」
少女は震えていた。少年がそっと彼女の手を包む。
「まあ、どういう関係なのかはこれから調べる。これまで、君の行く先にやつが現れていたのも、彼女が教えていたからだろう。彼女の家に、やつが身を隠していた形跡がある。言い逃れはできまいよ」
刑事が眼鏡を押し上げ、近くにいた刑事に何事か叫んだ。
少女の手の震えが止まると、少年はパトカーから降りた。
「一緒に帰らないの?」
「僕はまだやることがあるから」
少年は困ったような顔でそう言った。
パトカーが動き出す。検問を越えたとき、後ろで大きな音がした。
「止めて! 戻る!」
少女は泣き叫んだが、運転手は車を止めなかった。少女は座席に顔を埋めた。