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滅んだ世界より愛を込めて(旧版)  作者: よねり
第二章 本当のディストピア
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 警察の包囲網をかいくぐって、魔物は消えた。それがどれくらい凄いのか、少女にはわからないが、事態は思っているより深刻であるらしいということはわかった。

 今回、何故少女が狙われたのかわからなかった。人気芸能人の彼女のスケジュールは、ファンでさえ把握していないはずである。偶然と言うこともあり得るが、それにしては出来すぎていた。

 刑事が少女を呼びつけて再び当時の状況を尋ねた。少女は落ち着いて答えることは出来たが、有益な情報は一つも出せなかった。

「どうして君を狙ったのか、俺には全くわからない。狙うなら彼だろう。君も恨まれてるっていうのか」

「たまたまあそこにいただけかも知れませんよ」

 少女は答える。

「そんなはずないだろう!」

 刑事は机に拳を叩き付けた。目が血走り、顔には脂が浮かんでいた。恐らくもう何日も家に帰っておらず、風呂にも入れていないのだろう。自慢の髪の毛も、ぐちゃぐちゃになっていた。

「大きな声を出さないでください。彼女が怖がりますから」

 少年が言う。

「お前たちグルなんじゃ無いのか。この国を潰すつもりなのだろう」

 刑事が振り返って少年を睨み付ける。少年の髪の毛を掴み、壁に押しつけた。

「正直に言ってみろ。あの化け物と、お前たちはグルなんだろう。え? どうなんだ」

「苦しい」

 刑事に襟首を捕まれて、少年はうめいた。

「やめて」

 少女が叫んで刑事につかみかかった。しかし、少女の力では刑事はびくともしなかった。線は細いのに筋肉質であるようだ。腐っても刑事であると言うことか。

 少年の拳が、刑事の脇腹に入った。今度は刑事がうめく番だった。がら空きの脇腹に拳が刺さったのだ。肝臓にダメージが入っただろう。

 少年もまた、均質のとれた美しい肉体になっていた。一年前と比べ、身長も伸びて筋肉質な腕が半袖から見えていた。

 少年が咳き込む。

「勘違いしないでください。僕はあなたの部下でも奴隷でも無いんです。僕達を傷つけることは許さない」

 跪いた刑事を見下ろす少年の目は冷たかった。

 刑事は床を殴る。

「くそ。この私が出し抜かれるなんて」

 こめかみに青筋が浮く。口の端から泡を吹き、食いしばったはから唾液がこぼれた。相当悔しいのだろう。

「当面は君の周りに警護を付ける。せいぜい生きて我々のために囮となりたまえ」

 吐き捨てるように彼は言った。

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