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楽屋に置かれていたテレビで、失踪事件のニュースが流れた。この間の件らしい。誘拐とは言われていないことから、何らかの情報統制がなされているのだろう。
少年はあの後どうしただろうか。性格的に、あの刑事に力を貸すのだろう。そのことばかり考えてしまって、仕事に身が入らなかった。つまらない失敗ばかりをしてしまう。そのたび、養母からの折檻があった。服で隠していたが、腕があざだらけだった。
「どうした、元気ないじゃ無いか」
映画監督が彼女の頭を撫でた。この一年で、彼女は背も伸びて体つきも急激に女らしくなっていた。中年男性に触れられることが、とてつもなく嫌だった。この日は虫の居所が悪く、監督の手をはねのけてしまった。
現場がシンとした。少女はやってしまったな、と心の中で思った。マネージャが慌てて彼女の手を引き楽屋に連れ込んだ。
楽屋でマネージャの小言を聞いている間、少女はテレビの画面を見ていた。先程のニュースの続きをやっていた。現場の様子が映されている。あの刑事が映った。その後ろにチラと見えたのは、間違いなく少年だった。
少女は思わず「あっ」と声を上げた。その視線の先を、マネージャが振り返った時には、少女はすでに走り出していた。
撮影所の外に出ると、運良くタクシーを拾うことが出来た。
「警察庁まで」
少女は早口に言った。




