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滅んだ世界より愛を込めて(旧版)  作者: よねり
第一章 旧世界のディストピア

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「いい朝だね」

 海さんの声で目が覚めた。その顔を見ていると、昨日のことは夢ではないかと思えてくる。しかし、しっかりと覚えている。彼の言葉、彼の表情。

「今日もこれだけかい」

 海さんが缶詰をつつく。彼はジャケットこそ着ていないが、ワイシャツにネクタイをしっかり締めていた。よく見れば、彼の体が筋肉に包まれていることがわかる。

「こりゃあ、ダイエットがはかどるね」

「もっと食べたかったら、ご自身で動物でも狩ってきたらどうですか」

 僕が言うと彼は黙った。

「やだなあ、冗談じゃないか。狩りなんて君はできるのかい」

 彼は缶詰の油まで丁寧にすすった。

「できますよ。やらないと生きてゆけない」

 僕はロッカーの中から弓と矢をとりだした。それを見た海さんのめが鋭くなったように見えた。

「銃は使わないんだね」

「銃は祖父が禁じていたので」

「なるほど」

 うみさんが缶詰をゴミ箱に放り込んだ。

「これで熱いコーヒーでもあれば最高な朝なのになあ」

 海さんは大きくのびをして僕に向き直った。「ところで」と言ったあと、大きく咳払いをした。「君にお願いがあるんだ」

「なんですか、改まって」

 昨日の海さんの様子が頭をよぎる。

「魔物の話に興味が湧いてね。君の話の通りならば、もう脅威となる大男はいないのだろう? その巣に行ってみたいのだけれど。いいかな?」

 魔物の巣を思い出すと、今でも背筋が凍る思いがする。あの永遠に感じた数日間。泥水をすすり、正体のわからない生肉を食らって生き延びた。もう一度捕まったら、僕は正気を保っていられないだろう。絶対に行きたくない。しかし一方で、興味はあった。僕があの大男を殺してしまったせいで、中にいた他の魔物は飢えているだろうか。彼らはむしろ外では生きて行けないくらい弱々しい存在に感じた。

 僕は悩んだ。海さんが僕の手を取り、顔をのぞき込む。

「頼むよ。俺は失った記憶を取り戻したいんだ」

 人にものを頼まれるのは苦手だ。今までこんな風に頼られることはなかった。

「まあ、少しなら・・・・・・」

「ありがとう」

 海さんが僕を抱きしめる。なんだか果物のような良い匂いがした。ドキドキした。

「危ないと思ったらすぐに引き返しますから。それに、あなたが死にそうになっても僕は助けませんからね」

「ああ、それでいい。ありがとう」

 僕は弓矢を持って車に乗り込んだ。弓矢は後部座席に投げ込む。

「彼女は連れてゆかないのかい?」

 海さんが、彼女を助手席に案内した。

「あんな危ないところに、彼女を連れて行くわけには・・・・・・」

「お留守番なんて可哀想じゃないか。誰もいない家に一人は、寂しいだろう?」

 後半は彼女に語りかけていた。彼女は小さくうなずく。

「本当に良いの? 危ないんだよ」

 彼女は助手席に乗り込んで、シートベルトを締めた。それが彼女の意思表示だった。

「おや、これは」

 後部座席に乗り込んだ海さんが、図鑑を見つけたようだ。

「へえ、これは手作りかい。器用だね、ちょっと見せてもらうよ」

 まだ何も言っていないのに、海さんは本のページをめくり始めた。別段、見られて困るものというわけでは無いが、気恥ずかしいものもある。最初のうちはしゃいでいた彼が、いつの間にか静かになったのでルームミラーで彼の顔を見ると、難しい顔をしていた。

 エンジンをかけると、車体が大きく震えた。彼が喋らなくなると、途端に車の中は静かになる。助手席の彼女の顔を横から窺うと、いつものように窓を開けて風を髪の毛を遊ばせていた。昨日から彼女の元気がないように思う。

「ねえ、どこか具合が悪い?」

 訊くと、ワンテンポ遅れて彼女は僕の方を向いた。

「そんなことないわ」

 そう言うと、また窓の外に顔を向けた。

 今日も空は高くて大きなキャンパスに、青い水彩が広がる。うろこ雲が天高く横たわり、風がその身を導く。

 嫌な臭いがした。振り返ると、海さんが煙草を喫んでいた。

「煙草はやめて下さい」

 海さんはまるで、その時初めて煙草を喫んでいることに気付いたみたいに驚いた顔をした。

「すまないね。癖なんだ。頭を使うときはこれに限る。一本だけ駄目かな」

 彼女が咳き込んだ。

「駄目ですね。早く窓からそれを捨てて下さい」

「窓から捨てるのはマナー違反だよ」

「良いから早く」

 言うと、海さんは渋々といった表情で、最後のあがきとばかりに大きく吸い込んでから外に放り投げた。

「ここはいいね、外に煙草を投げ捨てても誰にも咎められない」

「一体、そんなものどこから持ってきたんですか」

「ガソリンスタンドにたくさん並べてあったよ」

 思い出してみれば、あったかも知れない。興味がないものに対しては、認識しないということがわかった。

 祖父も死ぬまで煙草を喫んでいた。大人はみんなあれが好きだ。あんな臭いもののどこが良いのか、食事をとれないほど具合が悪いときだってあれを喫んでいた。

 車の中には煙草の臭いがこびりついて離れなかった。窓を開けていても、時折臭ってくる。

 それからは、彼は静かにしていた。よほど図鑑が気に入ったのだろう。

 いつも通り、ラジオはノイズだけを垂れ流していた。

「海さんは、ラジオを聞いたことがありますか」

「え? 何だって?」

 よほど図鑑に夢中になっていたらしい。彼は慌てて聞き直した。

「ラジオですよ。知っていますか、ラジオって」

「知っているとも。俺はラジオが大好きで、中学生の頃よく聞いたもんだよ」

「えっ!」

 僕は驚いてハンドルをぐいと回してしまった。車は大きく道を外れたが、運良くアスファルトの上に戻れた。

「どうしたんだい」

「いや、海さんのいたところではラジオがまだ生きていたんですね」

「え、いや、どうだったかな・・・・・・忘れてしまったな」

「本当に?」

「誓って本当だとも」

 ルームミラーで見る彼の顔は真剣だった。胡散臭いなと思った。

「教えて下さい。ラジオってどんなものですか」

「聞いたことが無いのかい?」

「歌が流れているのは聞いたことがあります」

「そうだねえ。俺も詳しくは知らないけれど、DJがリスナーの悩みを解決してくれたりするねえ」

「DJ? リスナー?」

「うーん、聞いている人が番組に悩みを相談するんだ。そうすると、司会の人が答えてくれるんだよ」

 今ひとつピンとこなかったが、なんだか楽しそうだ。

「へえ、良いですね。きっと、それも世界が滅びたときに終わってしまったのでしょうね」

「世界が滅んだ・・・・・・そうだね」

 海さんはつらそうな顔をした。

「世界が滅んだとき、海さんはもう産まれていましたか」

「ん? ああ、そうだね。俺もあのときのことは憶えているよ。ものすごいパニックだった」

 つらそうな顔をする彼の声音は、先ほどとは違い本当のように聞こえた。

 太陽が一番高いところに上がっていた。

「そろそろ着きますよ」

 洞窟の大分手前で車を降りた。体が震える。日差しの割に風が冷たいせいだろう。

「様子を見てくるので待っていて下さい」

「強がらなくて良い。ここは俺もついて行こう」

 海さんが車から降りて、弓矢を僕に投げてよこした。それを掴むと、僕は何も言い返さずに洞窟へ向かった。本当は少しほっとしていた。

 鹿が道を横切った。丸々と太った、良い鹿だった。食べ甲斐があるだろうなと思った。嫌な場面に直面したとき、どうも僕は全く別のことを考えて誤魔化すきらいがある。

 洞窟が見えてくると、心臓が高鳴った。近くの岩に隠れて様子を窺う。入り口は誰かが出入りしている様子は無い。

 ハエが飛んでいた。鬱陶しくて、何度も手で払った。陽光の眩しさと相まって、僕はイライラしていた。

「まあまあ、落ち着きたまえよ」

 海さんは今にも鼻歌でも歌い出しそうなほどウキウキしている。僕はそんな彼の様子に腹が立ったので、つい言ってしまった。

「そんなに気になるなら、見てきたらどうですか。僕はここにいるので」

「良いのかい?」

 彼は臆すること無く、瞳を輝かせた。

「どうぞ」

 どうせ、すぐに怖じ気づいて戻ってくると踏んでいた。

 彼は身を低くするでもなく、まるで散歩でもしているみたいに鼻歌交りに洞窟に近付き、少し中を窺うと、スーツの内ポケットから懐中電灯を取り出して、堂々と入って行った。

 驚いた。あんなところによく入って行けるものだ。それに準備が良すぎる。いつの間にあんなものを持ってきていたのだろうか。

 陽光がじりじりと頬を焦がす。彼が中に入って、随分時間が経ったような気がした。

 汗が地面に落ちた。それを見て、自分が汗をかいていると言うことに気づいた。いくらなんでも、出てくるのが遅すぎる気がした。

 もしかしたら、魔物に殺されてしまったのかも知れない。あのときの僕のように囚われてしまったのかも知れない。

 すぐに助け出さねばーー。

 足が前に進まない。一歩踏み出そうとすると、ドッと汗が出てくる。これは暑さのせいではないだろう。

 早く行かねばーー焦れば焦るほど、足は鉛のように重く、吐く息は灼熱、指先と空間の境界がわからなくなってくる。

 指先がジリジリと焦げ付く。

 一歩、また一歩。まるで蜃気楼を見ているみたいに、まったく近づいている気がしない。

 パンッーー突然、洞窟内から破裂音がした。

 再び破裂音。

 僕は走り出していた。いやな予感がした。

 洞窟に入る前からすでにあのいやな臭いがした。記憶が脳裏をかすめる。

 音のした方へ走ってゆくと、海さんが立っていた。

 その前方に、魔物二体。

 どちらも仰向けに倒れていた。あのとき、洞窟内にいた目のない魔物と、耳のない魔物である。

 そして、立っている海さんの手には拳銃。彼の体は返り血にまみれていた。

「海さん、それ」

 声をかけると、彼は上気した顔で振り返る。顔にも血が飛んでおり、彼は舌を伸ばしてそれを舐めとる。

「最高だな、ここは」

 彼の表情は、昨夜と同じで別人に見えた。

「どうしてこんなこと」

「どうして? 君だって言っていたじゃないか。あの図鑑にも書いてあったぞ。魔物は敵だって。敵を倒すのは当然だろう?」

 彼の手は震えていた。目は瞳孔が開き、口からよだれが垂れている。一体、彼に何があったのだろうか。

 ムッとする血と臓物の臭い。糞尿の臭いに相まって、吐き気がした。

「あんた・・・・・・なにやって・・・・・・」

 海さんは引きつったような顔で、僕を振り返った。

「君の話では、もう一匹子供の魔物がいるそうじゃないか。探そう」

「やめてください。魔物とはいえ子供ですよ」

「君が食べている缶詰だって、もしかしたら動物の赤ん坊の肉かもしれないよ。敵に子供も大人もないと思うね」

 彼は僕の制止を振り切り、洞窟内を走り出した。何か叫んでいるが、反響してよく聞き取れなかった。

 洞窟内は広くはあるが、仕切りがない。部屋数も少ないのだ。彼がその部屋にたどり着くのはすぐだった。

「これは素晴らしい」

 海さんは拳銃を振り回しながら、あの部屋に入った。あのときと変わらず、電極の刺さった脳髄が液体の中を浮遊し、そこから伸びたケーブルの一端には、やはり脳髄に電極を刺された人が椅子に座っていた。

「これは何かのデータベースか。どうやってサルベージする。システムはどうなっている」

 海さんはまるで狂ったみたいに独り言を漏らしながら、彼らをいじくり回した。部屋の中は腐臭がして、これ以上ここにいるのは耐えられなかった。どこで見つけたのか、注射器を手にしていた。

 僕は洞窟の外へ出た。あれほど恐ろしかった洞窟だったが、拍子抜けしてしまった。それよりも恐ろしいのは海さんだった。死体になったあの魔物たちを思い出した。再び吐き気が襲ってくる。胃袋が震える。

 僕は深呼吸をして車に戻り、見たことを彼女に伝えた。

「海さんは危険だ」

 彼女は怯えて両の腕を体に回し、歯をカチカチ鳴らした。

「僕が守ってあげるから」

「・・・・・・違うの」彼女がか細い声で言った。「彼に何か、変わった様子はなかった?」

 海さんが変わっているのは元々だ。一緒にいた時間は短いが、決定的に彼が変わったと思ったのは、やはり昨夜のことだ。

「外で、何かの板に向かって独り言を言っていたよ」

「板・・・・・・」

 彼女が息を呑む音が聞こえた。目を見開き、彼女は叫んだ。

「逃げて、殺されるわ」

 ただならぬ雰囲気に、僕はうなずく暇もなく車を発進させた。

「どういうこと?」

 僕が尋ねると、彼女は少し逡巡した後、ぽつりと言った。

「あの人は多分、調査する人」

「なにそれ」

「ここを調査しに来たのよ」

「どうして」

 言いながら、ハンドルを握る僕の腕は震えた。

「ここは・・・・・・特別な場所だから」

「特別? こんなに何もないところなのに?」

 訳がわからなかった。

「私はここに逃げてきたの」

「逃げてきた? やっぱり、外は危ないの?」

「むしろここの方が危ないって言われているわ。だからここに逃げてきたの」

「言っている意味がわからないんだけど」

「ちょっと、車を止めてくれる?」

 洞窟からはだいぶ遠ざかったはずだった。僕は彼女の言う通り車を止めた。

「あのね、落ち着いて聞いて」

 彼女が改まって僕の方を向く。見えていないはずの目が、僕を捉えている気がした。

「世界は滅んでなんかいないの」

 彼女の言っている意味がわからなかった。

 世界は滅んでなんかいないーー。

「世界は滅んだって祖父が言っていたよ。それに、人だって全然いないじゃないか」

「違うの。違うのよ」

 彼女は苦しそうな顔をして、うつむいた。

「君や海さんが海の向こうから来たってことは、まだ生き残ってる人はいるんだろう。でも、旧時代の頃のように人がたくさんいる訳じゃあないんだろう? もしそうなら、ここに僕を助けに来てくれたって良いはずじゃないか」

 気づかないうちに、声が大きくなっていた。彼女の方を掴んだ僕の手に力が入って、彼女が痛そうに顔をゆがめる。

「僕が見捨てられたって言うの?」

 彼女は再び顔を上げた。

「世界が滅んだわけではないの。ここが隔離地域なの。だから、誰も近寄らないの」

 彼女の言っていることが理解できなかった。

 世界が滅んでいない?

 僕だけが取り残されている?

 では、祖父が言っていたことは嘘だったのか。

「おじさん、ねえおじさん」

「なんだよ坊主」

 開け放した窓から、おじさんが顔をのぞかせる。

「そんなの嘘だよね。世界が滅んでなんかいないなんて」

「俺がそんなの嘘だって言って、お前はそれを信じるか? 男はみんな冒険家だ。冒険家って言うのは、自分の目で見たものしか信じねえんだよ」

「誰かそこにいるの?」

「僕のおじさんさ。冒険家なんだ」

「あなたの声しか聞こえないけれど」

「何言ってるんだよ。おじさんはここにいるよ」

 再び窓の外を見ると、おじさんの姿はどこにも無かった。

「なんで・・・・・・おじさんどこだよ。返事してよ」

 叫んでいた。何度も何度も、おじさんを呼ぶ。ハンドルや窓を叩いて暴れた。クラクションがうるさかった。おじさんは答えない。血の気が引いて行くのを感じた。

「一体、何が嘘で何が本当なんだ」

「落ち着いて聞いて。ここは、私やあなたが産まれるずっと前に、ある災害が起こった場所なの。その影響で、この中は人が住めないところだと言われていたの。その調査にやってきた人も一人残らず帰ってこなかった。あの壁を見たでしょう。あの壁は、この地域一帯を隔離するものなの」

「隔離・・・・・・?」

「そう、隔離。ここは人が住めない土地として隔離されているの」

「何言ってんだよ、僕達はここで生きてるんだよ」

「そう言われているんだもの、私は知らないわ。そんなこと、小学校の教科書にだって書いてある」

「災害って?」

「巨大隕石の落下でウイルス汚染されてるとか、誰かが細菌兵器をばらまいたとか、核実験をしたとか、色々なことが噂されているけれど、本当のことはわからないわ」

「そんなのおかしいよ。だってーー」

 僕が言いかけたとき、後方から獣の咆哮のようなものが聞こえた。魔物の声に似ていた。

「あの男・・・・・・」

 彼女が言った。

「あの男って、海さんのこと?」

 彼女は頷いた。

「そんな、今のは海さんの声なんかじゃ・・・・・・」

「私には音楽の才能があるから、耳の良さには自信があるのよ。それより、あの男、私たちをどうにかするつもりよ」

「どうにかって」

 彼女は後方を窺った。

「追って来るみたいね。すぐに車を出した方が良いわ」

 彼女に急かされるように、僕は車を発進させた。

「彼が何をしたいのかは、わからない。私たちを殺したいのか、それとも捕まえて壁の外に連れて行きたいのか」

「どうしてそんなこと・・・・・・」

「あなたは単純にサンプルとして。そして私は・・・・・・」彼女はため息をつく。「私のこと、彼は知っているでしょうね」

「君の事って?」

「私はこれでも少しは名の知れた音楽家なの。小さい頃から神童と呼ばれていたわ。でも、そのお陰で恐い目にもたくさんあった。一番恐かったのは・・・・・・」

 彼女は寂しそうな顔をして続けた。

「ママが私を道具としてみていたこと」

「道具?」

「そう、私学校にもほとんど行ったことが無くて、友だちもほとんどいなかったの。ただ、そんな私と同じ境遇の子が他にもいて、その子達と励ましながら頑張っていたの。でも、そのうちの一人が死んでしまって、私もパパもこれ以上仕事をするのはいやだったから、ママにいやだって言ったけど、ママはもっと厳しくなったの。それで、パパが逃がしてくれたの。たぶん、日本のどこにいても私は有名人だから見つかってしまう、ここなら誰にも見つからないからって」

 学校の前で彼女が見せた、寂しげな表情を思い出した。

「目が見えない君を一人で?」

「ごめんなさい。騙すつもりは無かったのだけれど、私、本当は目が見えるの」

 彼女の瞳は、しっかりと僕を射貫いていた。

 僕の頭は混乱していた。一度に入ってくる情報が、完全に僕の頭の容量をオーバーしていた。発火しそうだ。

 とりあえず僕は家に向かった。

 家に着くまで僕はずっと彼女の話をぐるぐると考えていた。

 夕日が彼女の頬に茜を差して、綺麗だと思ったことだけは本当のことだと思った。

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