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滅んだ世界より愛を込めて(旧版)  作者: よねり
第一章 旧世界のディストピア
4/71

4


「そいつは大冒険だったな」


 今日の出来事を話すと、祖父が笑った。笑ったあと、咳き込む。最近の祖父はいつもそうだ。心配になったが、心配な顔はしないで置こうと決めていた。祖父が悲しむのがわかっていたから。


「笑い事じゃ無いよ、おじいちゃん。もう少しで死ぬところだったんだ」


 僕は憤慨してわめいた。まだ、あのときのことを思い出すと動悸がする。


「狼たちが助けてくれなかったら、今頃食べられていたよ」


「案外、お前と友達になりたかっただけかもな」


 そう言っておじさんが笑う。この人がもっと早く助けに来てくれたら良かったのに、と言いたかったが、甘ったれと言われるのが嫌でやめた。


「だってはさみが・・・・・・」


「握手のつもりかもしれないよ」


「おじいちゃんまで、そんなことを言うの」


 僕が怒れば怒るほど、彼らは笑った。


「それより、今日の釣果は散々だな」


 僕が一匹も釣らなかったことも原因だが、いつも大漁のおじさんも今日はパッとしなかった。


「坊主が遊んでたからな。エースがいないんじゃあ、仕事も進まねえよ」


 魚の脂が焼けた匂いがした。一人一尾ずつしかない魚だったが、三人で食べればなんだって美味しかった。


 見上げると、星が綺麗だった。


「あれが、こぐま座、あれがこと座、あれがはくちょう座・・・・・・」


 僕は一つ一つ指さしていった。


「坊主はインテリだな。将来は学者先生か?」


 馬鹿にしたような言い草は気に障ったが、学者という言葉の響きは良かった。おじさんはいつものように、嫌らしい顔で笑って煙草の煙を吐いた。


「インテリってなあに」


「お前のじいさんみたいに、色んな事を知ってる奴のことさ」


「僕もおじいちゃんみたいになれる?」


「もちろんだとも。だからよく学びなさい」


 祖父が僕の頭に手を置いた。おじさんに触られるのは暑苦しかったが、祖父に撫でられるのは嫌いじゃ無かった。


「たくさん勉強したら、僕も学者になれるかな」


「もちろんさ。お前は何にだってなれるんだ」


「僕頑張るね」


 そのあと、二人が寝てしまうまで正座を数え続けた。

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