20
「明日は向こうの山へ行ってみようと思う」
火をおこしながら、僕は言った。おじさんは相変わらず手伝わず、スルメを食べている。あのポケットの中にはスルメの生産工場でも入っているのだろうか。
「家に戻るってことか。冒険はおしまいか?」
「いや、家じゃあ無い。魔物を探してる」
魔物、と言ったとき、おじさんの表情が曇った。
「やめとけ。わざわざ死ににいくこたあない」
「気になるんだ。魔物がなんなのか」
「魔物は魔物だ。お前のじいさまを殺したレッサーデーモンみたいなもんだ」
「図書館で見た魔物は、人の姿をしていた」
「あいつらは、何にでも化けられるんだ」
火が生まれた。見る間にそれは大きくなり、踊った。
「何にでも化けられるって言うことは、知能があるんでしょう?」
おじさんが舌打ちをする。それは、噛み切れないスルメのせいなのか、それとも気分を害したのか。
「さあな。俺は知能がねえからわからんよ」
「話し合いをしてみたいんだ」
「お前が言葉だと思っているのは、たくさんある言語の中のほんの一部だ」
「わかってる。言葉が通じないかも知れないんでしょう」
おじさんは答えない。
「冒険には目的が必要だよ」
僕はそう言って眠りについた。