5.Last year
最終話です!
元気にしているだろうか。たった1年しか一緒にやれなかったけど、彼のことを忘れた日はない。本当に、心から会いたい。向こうが、覚えてくれていたらいいのに。
時々、「応援してくれてるって。」という話は聞いた。「すごい。」とも褒めてくれていたそうだ。でも、それも昔の話。
「覚えてくれていたらいいのに。」
王真が辞めて、しばらくたった。ピットは二人の新人を迎え、大会に向けて練習していた。
ちゃんとしていた子だった。二人とも、だ。
私は最後の年だったこともあり、心から全国大会に出場したかった。そのこともあり、家で練習してこなかった子にはキツく言ったこともあった。
それでもピットメンバーは、私についてきてくれた。
とうとう、全国大会出場をかけた大会がやってきた。
結果から言うと、演奏はダメダメだった。自分も、吹いてる人達も。唯一、旗を振るガードだけが優秀だった。
ショックだった。悔しかった。
あんなに頑張ってきたマーチング人生が、全て否定された気がした。あんなに、「最悪、全国無理でも、パーカッション一位取るぞ!」と威勢のいいことを言っていたくせに、ボロボロだった。私がダメだったから。私が下手だったから。私が、パーカッション一位の世界にピットメンバーを連れて行ってあげられなかった。みんな頑張ってたのに。みんな上手くいっていたのに。
私のせいだ。私がミスをしたから…。
本当にごめんなさい。
すごく自分をせめた。結果はもちろん、全国大会出場権なし。すぐにでも泣きたかった。
でも泣けなかった。
最上級生の打ち合わせで、「結果がどうであれ、泣かないようにしようね」と言われていたからだけじゃない。涙が出てこなかったのだ。何故かは分からないけど、涙が出てこなかった。
でも、振り向いても結果は変わらない。全国には行けない。それなら、今からあるイベントを、残り少ないこのチームでのマーチング人生を楽しむしかない、と吹っ切ることにした。
そうしたら、いつもは厳しくて近づきがたかったと思っていたけど、仲良くなれそうだと思ってくれたのか、新人二人はものすごく懐いてくれた。
その影響で、ピットメンバーとは前よりずっと仲良しになった。とても楽しかった。数あるイベントも、楽しく、しっかりとした演奏で終えることが出来た。定期演奏会では、ソロの曲をやらせてもらえた。
最高のマーチング人生だった。
楽しい時間はあっという間に過ぎるもので、私は卒団式を迎えた。卒団式と言っても、お疲れ様会みたいなもので、パーッと明るく、最後に卒業生が一言ずつ話して終わるものだ。本当に楽しかった。全国大会には行けなかったけど、これで良かったような気もする。
最後の言葉の時には、今までのマーチング人生を噛み締めて、涙が溢れた。辛い時もあった。怒られたりもした。でも、嬉しいこともあった。全国大会に行けた年もあった。そんなことを思いながら、私は
「私と一緒に演奏してくれて、最高の思い出を作ってくれて、本当にありがとうございました!私はマーチングが、みんなとの演奏が、みんなが大好きです!」
そう言ってマーチング人生を終えた。
「佳菜。」
名前を呼ばれた。振り向いたら、見覚えのある人だった。
「翔洋、くん?」
「なんでこんなとこで入院してんだよ。こんな再開の仕方ある?」
わぁ、白衣着てる…。似合うな、やっぱり。
「聞いてます?人の話。」
「聞いてるよ!ちょっと事故っちゃって。そんなことより、なんで病院にいるの!?あの看護師さんと一緒の苗字ってことは、結婚してるの!?っていうか、久しぶりだね!ずっと会いたかった…です。」
「は?結婚?なんでだよ、あれは姉ちゃんだよ。病院にいるのは、働いてるから。見りゃわかるだろ?白衣着てんだから。」
あ、あぁぁぁ、お姉さん!確かにそういえば、翔洋くんお姉ちゃんいたな。姉弟で同じ職場なんて、珍しい。
「あと、その…、会いたかったよ、俺も。久しぶりだな。」
あぁ、変わってないな。声は低くなってるけど、長いまつげと、綺麗な目、黒いメガネ。私が知ってる翔洋くんだ。
「あのね、翔洋くん。こんなとこで言うことじゃないかもしれないけど。私、ずっと翔洋くんのことが…」
ずっと会いたかったのは、これを言いたかったからかもしれない。
「翔洋くんが、好き!」
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました!初めてだったので、変な部分があるかもしれません。感想、よろしくお願いします。




