2.First time
2話です。
二時間くらいかな、寝てしまった。
入院って、暇すぎる。一度してみたかったとか思ってた自分を殴りたい。絶対にしない方がいい。
昔のことを思い出すことくらいしか、することがない。
いよいよマーチングバンドに入って、練習に参加し始めた。
最初は、コーチも先輩も、みんなすごく褒めてくれて、やりがいがあった。とても楽しかった。そんな私が、辛さを感じ始めたのは、その後だった。
まず初めに、宇藤すみれが変わり始めた。
すみれの母が言うに、
「すみれが、佳菜ちゃんは、自分ができなかったことができてすごいーって言ってたよ。」
だそうだ。でも、そんな生ぬるい感じじゃなかった。
「佳菜、ほんとに毎日練習しとる!?」
から始まり、片付けの場面で何すれば良いか分からず、何しますか、と聞くと、
「自分で考えて。」
と塩対応。そう言われたから、自分で考えて動いてみたら、
「分からないなら聞いてって言っとるじゃん!」
って言われる。もうどうしたらいいか分かんなくて、挫けそうだった。
でも、翔洋くんが、ずっと、ずっと優しく接してくれた。
変わらなかったのは、翔洋くんだけだった。
そして、お母さんがすごく背中を押してくれた。だから、続けれた。
でも、まだ他にも嫌味を言われて、泣いてしまったことだってある。
普通じゃないのって思う人もいるかもしれない。
でもこの時は、まだ小学四年生だったから、辛かった。
そんなこんなで、なんとか一年、やり過ごした。
翔洋くんは諸事情があり、辞めてしまった。でも、すみれが卒団するわけではなく、嫌なことは続いた。
そして、被せて辛いことがあった。
兄のことだ。
私が小学五年生、兄が中学二年生の時のことだった。
兄が、学校で何かあったのか、それを溜め込んだのか、詳しいことはよく知らない。一年生の頃から前兆があったそうだ。
あんなに優しかった兄は、変わってしまった。
壊れてしまった。
だんだん学校に行く日数も、マーチングに行く日数も、減っていった。
そして遂に、学校には行けなくなった。
家族も、心の病気になり、暴力的になった兄を止めることができず、家庭がグチャグチャになった。
でも、それに負けてしまって私も壊れてしまっては、家族が混乱して、家族もまた壊れてしまう。
そう思った私は、自分を偽り始めた。
元々元気じゃなかった訳では無い。
しかし、さらに元気で、賑やかで、笑顔の耐えない子になった。
元々悪い人だった訳では無い。
しかし、良い子になろうと努めた。
元々泣かない子だった訳では無い。
しかし、さらに泣かないようにした。
そうやって自分を偽って、傷ついたお母さんの背中をさすり、学校も、マーチングも、休まず行き続けた。
頑張った。
兄とまた、一緒にマーチングの大会に出たかったから、頑張った。頑張ったけど、
「佳菜、ごめんね。お兄ちゃん、マーチング辞めることにした。」
お母さんから告げられた言葉だった。
もう、兄と演奏はできない。兄と一緒に、大会に行くことはできない。
ショックだった。
それでも、しょうがないと思うようにした。
だって、荒れてたもん。
だって、大変そうだったもん。
だって、だってしょうがないもん。
それから、演奏中、コーチに言われたアドバイスも、先輩から言われたアドバイスも、全部が心に突き刺さってきた。
全然、兄がマーチングを辞めたことと関係があった訳じゃない。
でも、「何も知らないくせに。」と思ってしまっていた。
兄とやってたからマーチングが楽しかった。
でも、もうそんな子供みたいなこと言わない。
一人で頑張っていく。
兄が行けなくなってしまった学校も、辞めてしまったマーチングも、私が仇を討ってやる。
最後までやり遂げてやる。どんなに辛くても、飲み込んでやる。
絶対に負けない。
絶対に。
これが、私が味わった一回目の挫折だったな。
今となっては懐かしい。
あの時決意したのは、間違いじゃなかったと思う。
むしろ、正解だった。
だって、そのおかげで私は強くなった。
強くなれたから。
2話目も読んでいただき、ありがとうございます。
この話は、前から考えていた話なのですが、このように公開することが出来て、とても嬉しいです。
今回も、良かった点、改善点、アドバイスなど、よろしくお願いします!




