押花
雨の昼下がりたまたま彼女と重なった休みの一瞬をお送りします。
「そういえば、暇があるとすぐ本開くよね?」
最近同棲を始めた彼女が眉を整えながら聞いてきた。
「暇だから読んでるんじゃないよ、考え事があったりするときに読むようにしてるの」
「調べ物とか?」
「知識とかそんなんじゃなくて、心の中の言い表せない感情とか認識できないもやもやとかをスッキリさせるために読むの」
紙に目を落としたまま鏡に夢中な背中に向けて答える。
「ふーん難しいこと考えてるんだ。」
素っ気ない返事に僅かな寂しさを覚える。
「面白いよ。すぐにすぐスッキリするわけじゃないけど、昔し不思議に思ってたこととかが急に解決したり、今欲しい言葉が散りばめられてたり。」
少しの間があった。ページの角を弄ぶ指先が愛撫に似た感覚を覚える。
「あなたの読んでる本、私も読んだらあなたの事もっと知れる?」
「多分無理よ、国語の授業思い出して。同じ文章読んでも皆んなそれぞれに違う答え答えてたでしょ?人によって感じ取る描写も、言葉自体の守備範囲も違うから。」
「あなたの事知るためには何すればいい?」
彼女は読んでいた青い表紙に2つの太陽が浮かんだ本を閉じて私の手首に唇を押し付けた。
走り書き程度の稚拙な文章ではありますが、読んでいただけたら幸いです。