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兄、試験を受ける ②

お待たせしまして申し訳ありませんでした。


更新頻度が上がるかどうかは、今のところ未定です。


ですので、気長にお待ちいただければ幸いです。


 そんな訳で現在に至り、森の中を歩くカリルとアリナ。


 相変わらずアリナはカリルにベッタリくっついている。


「アリナ、そろそろ離れてくれ。獲物が近くにいる」

「やだ。お兄ちゃん成分が足りない。もっとくっつきたい」


 そこでやっとカリルはアリナが付いてくるにあたっての約束事をを思い出した。


「俺、王都に来る前なんて言った?」

「うぐっ……じ、じゃあお兄ちゃんは、私と離れ離れになっても平気なの?」

「独り立ちしてくれるんだったら大歓迎だな」

「~~~~~ッ!?」


 カリルの返答に声にならないほどショックを受けたアリナは、カリルから離れ、ヨロヨロと数歩後退り、その場で四つん這いになった。


 相当ショックを受けたらしく、世界の終焉を目の当たりにしたように顔が真っ青である。


 しかし、カリルはこれ幸いにと絶望するアリナをスルーし、自前の弓矢を木々が生い茂る方に向かって構える。


 矢をつがえ、弓を引き絞る。



 ――ヒュンッ。

「プギャァァァ!!?」



 放った矢が、獲物に当たり悲鳴が上がる。


 すると、木々を薙ぎ倒しながら、なにかがカリルに向かってきた。


 そして、カリルの前に出てきたのは、カリルの背よりも大きな猪であった。


 見れば、尻の当たりにカリルが放ったであろう矢が刺さっている。


「プギャァァァ!!」

「おいでなすったな……!」


 カリルは弓をしまい、猪を迎え撃つ体勢をとった。


 突進してくる猪に生えている立派な牙を掴み、自身共々横に倒れる。


 猪も思わず倒れ、動けなくなる。


 猪と違い、倒れた拍子に転がって立ち上がったカリルは短剣を抜き猪の腹をかっさばく。


「プギャァァァ!!?」


 悲鳴を上げた猪は、しばらくすると出血多量により息絶えた。


「よし、まずは一体だな」

「相変わらず、お兄ちゃんの戦い方は斬新だよね。猪の突進をあんな方法でいなすのなんて、お兄ちゃんくらいだよ」


 いつの間にか復活したアリナがカリルに声を掛ける。


 カリルは気にせず答える。


「あれくらい、誰にでもできるだろ?」

「まず普通の人は猪の突進に耐えられないんだよ? 勇者の私ならできなくはないけどね!」


 胸を張って自慢気なアリナ。


「さ~て、解体するか」

「ちょっ、お兄ちゃんっ? お兄ちゃんってば! 無視しないでよぉ~」


 涙目になりながら訴えるも、カリルは短剣で猪の解体を始めてしまったため、アリナは渋々黙る。


 解体中に話し掛けるとカリルが邪魔するなと激怒するからである。


 嫌われたくないアリナは、カリルが解体している間、なるべくカリルの近くに腰を下ろし、カリルの解体作業を眺める。


(はぁ、それにしても、お兄ちゃんの解体作業はいつ見ても速いなぁ。もうハラワタ取り出し終えてる)


 惚れ惚れしたように眺めながら、アリナがそんなことを思う。


 そう思っているうちに、カリルは猪の皮を剥ぎ終え、その他諸々の剥ぎ取れるものをすべて取ってしまい、すっかり骨だけになった。


 骨は何かの材料になるわけではないため、牙以外の骨は土を掘ってそこに埋める。


 そして、ギルドから貸し与えられた収納袋(マジックポーチ)に剥ぎ取ったものを入れていく。


「よし、これで一段落かな」

「お疲れ様、お兄ちゃん! 私が疲れを癒してあげるよ!」


 そう言って抱きつこうとするアリナの頭を鷲掴んで阻むカリル。

 俗に言うアイアンクローだ。


「お、お兄ちゃんっ、痛い、痛いよ! 抱きつかせてよ!」


 痛がっているのは嘘である。


 勇者であるアリナに、一般人のカリルの攻撃など痛くも痒くもない。


 前提として、相手がカリルだからそのまま受けているのであって、違う人がすれば確実に頭を掴んでいる腕をへし折られるか、それ以前に掴ませない。


 そして、カリルから顔は見えないが、構ってもらえているため、駄々を捏ねているように見えて実は表情だけは嬉しそうにしていたりする。


「あのなぁ、アリナ。俺もお前も、もう18と16なんだぞ? 年頃の女の子が年頃の男の子に抱きつくのはよくないんだ。わかるよな?」

「年頃のって言っても、私とお兄ちゃんは兄妹なんだから……あっ、もしかして、私のこと、そういう風に見てたの? も、もぉ~、お兄ちゃんってばぁ。それならそうと言ってくれればいつでも応えてあげたのにぃ」


 アイアンクローから解放されたアリナが、恥じらいつつカリルの胸板をつんつんしながらそんなことを宣った。


 それを聞いたカリルは、


(こりゃダメだ……)


 一瞬にしてそう悟ったのだった。



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