表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

冒険者ギルドにて


 【王都カルラン】


 街並みは中世ヨーロッパのような街並み。


 人間、エルフ、ドワーフ、獣人の四種族それぞれに国がある。


 しかしここカルランは、人間が住むアレスパン王国の首都だが、他の三種族も住んでいる都市だ。


 理由は、各国の中でもアレスパン王国の冒険者ギルドが一番優秀な冒険者を出しているからだ。


 中でも、最高ランクであるダイヤモンド冒険者を3人排出していることが一番大きい。


 さて、カルランへとやってきたカリルと結局付いてくることになったアリナは、冒険者ギルドに向かい、登録を行うことにした。


 ただ、冒険者になるには魔法やスキルに適性がなければなることはできない。


 カリルはそこが不安だった。


「大丈夫! お兄ちゃんなら絶対すごい冒険者になれるよ! 私が保証する!」


 カリルの手を両手で包み、満面の笑みを浮かべるアリナ。


 その自信はどこから来るのかと思うカリルだが、勇者であるアリナが言うのだからそうなのだろうと思う。


 しかしイマイチ信じることができないため、期待はしないことにするカリルだった。


 ◆


 冒険者ギルドに到着し、扉を開けて中へ入る。


 ギルドに来ていたすべての冒険者たちが一斉にカリルに視線を送る。


 しかし次の瞬間、冒険者たちが騒ぎ出す。


「おい、あれ見ろよ」

「げっ、まさか勇者様!?」

「一緒にいるのは彼氏か?」

「なんで勇者がここに!?」


 カリルは彼氏と思われたことに不安を覚えた。


 ふとアリナを見ると、アリナは何やら頬に手を当て体をクネクネさせていた。


 そしてアリナの妄想癖が発動する。


「お、お兄ちゃんが私の彼氏!? ということは私がお兄ちゃんの彼女ってことで、つまり夫婦!? えへへ、お帰りなさい。お風呂にする? ご飯にする? それとも、わ・た・し? えっ? わたし? きゃ~! もうっ、お兄ちゃんったら、欲しがりさんなんだからっ♪」

「アリナ!? 公衆の面前でそんなこと大声で言うな!?」


 そう、アリナは結構大きな声で妄想していることを口にしてしまっていたのだ。


 それによる周りの反応は、推して知るべし……。


 気を取り直し、カリルは受付に向かう。


「ようこそ、冒険者ギルドへ。本日はどのようなご用件でお越しでしょうか?」


 受付の女性が訊ねてきた。


「登録をしようと思いまして」

「登録ですね。では、こちらに名前と年齢をお書きください」


 カリルは受付の女性から用紙とペンを受け取り名前と年齢を書いた。


「はい、結構です。では、まず魔法の適性を見ますので、こちらの水晶に触れていただけますでしょうか?」


 取り出され目の前に置かれた透き通った水晶にカリルが触れる。


 すると、水晶が目を開けられないほど強く濃く緑色に光りだした。


 その光は一瞬にしてギルド内を覆った。それくらいに強い光だった。


 カリルは慌てて水晶から手を離す。


 それにより光はすぐに収まった。


 しばし沈黙が流れる。


「あの、今のは……」

「おめでとうございます。あれほどの強い光を放ったのは、かのダイヤモンド冒険者の方々でもおりません」

「は、はぁ……?」

「適性は治癒魔法ですね。この光の強さと濃さですと、恐らくですが、聖者様にも使えなかった、どんな傷も状態異常も回復させられる【完全回復パーフェクト・リカバリー】や、死者を蘇らせることができる【死者蘇生(レイズデッド)】、といった高位魔法が使えるのではないかと思われます」

「俺が、そんな魔法を……?」


 イマイチピンと来ていないのか、カリルは首を傾げている。


「ほらね、私の言った通りでしょ? ネネよりもすごいんだよ? もっと喜んでよ!」


 ネネとは、アリナと魔王討伐や邪神討伐の時にパーティーを組んだ聖教会に所属する大神官であり、聖者と呼ばれているエルフの女性のことだ。


 彼女は、治癒魔法に長けており、通常治癒魔法に適性があっても【回復(ヒール)】までしか使えないが、ネネは【中位回復(ミディアム・ヒール)】や【上位回復(ハイ・ヒール)】まで使える。


 治癒魔法においてネネの右に出る者はいないのだ。


 勇者であるアリナでさえ【回復(ヒール)】しか使えないのだから。


 そんな人よりすごいと言われてもピンと来ないカリルは、さらに首を傾げる。


 これは会ったことがないから仕方がない。


 会って実力を自分の目で見ていたなら少しは驚いたり喜べるのだろうが……


「うーん、イマイチピンと来ないけど、すごいんですね」


 本人はあっけらかんとしていた。


「……では、スキルの適性を見ますのでこちらの水晶に触れてください」


 カリルの反応を辛うじてスルーした受付の女性が、先程とまったく同じにしか見えない水晶を取り出した。


 そして、目の前に置かれた水晶に、カリルが触れる。


 すると、水晶の中に文字が浮き上がった。


 《絶対鑑定(アブソリュート・アプライザル)》、《身体強化(フィジカル・インプルーブ)》、《絶対察知(アブソリュート・パーセプション)》となっている。


 《絶対鑑定(アブソリュート・アプライザル)》は、あらゆるものを鑑定できるスキルで、人に使えばその人がどんなスキルを持っているかがわかり、食べ物などに使えばその食べ物の品質やどんな料理に使えるかなどがわかる。


 《身体強化(フィジカル・インプルーブ)》は、使えば使用者の身体能力をその人の限界まで引き上げるスキル。


 《絶対察知(アブソリュート・パーセプション)》は、危険や気配などを察知することができるスキル。


 という説明を受ける。


 そして――


「やったよ、お兄ちゃん! 私も持ってるやつだから、お揃いだよ!」

「あ、そう……」


 アリナは平常運転だった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ