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Episode22 「ネガ」

続きです。

あと少しでシーズン1が終わる予定です。

フォンスの銃口から迸る銀色のレーザーブレードと、黒く光るグランディールの刃が交差し、眩いほどの閃光を放った。

「俺と同格か……?やるな。」

ユウスケとは違い、低音で重い声を出すネガはシュウの実力を見てニヤリと口を曲げた。

「当たり前でしょ。てか、それがその特典アイテムの本当の力なわけ?」

「そういうことだ。あのフウカという転移者を始末した時点でグランディールの成長は限界に達していたからな。」

ネガはシュウを突き飛ばし、すかさず斬撃を繰り出す。

そこまでの速度ではないと判断したシュウは回避を実行するも、なぜか命中していないのにも関わらず肩が切り裂かれた。

「たとえお前が現時点で最強の転移者だとしても、この程度の攻撃をくらうようならば話にならん。しかし参ったな。俺と同種でもあるデザインベイビーのお前がこの強さだとしたら、残りの転移者など雑魚同然か。」

「アンタ、俺が遺伝子操作された人間だってどうして……!?」

「俺には全ての転移者の情報が入っている。故にお前がどれほどの人生を送ってきたなど安易にわかるのだ。」

歯を食いしばって肩の痛みに耐えるシュウに、ネガは理解したように笑みを浮かべた。

「ああ、そうか。わかったぞ。お前と俺の決定的な違いのワケを。今までお前は戦いにしか生を見い出せなかったが、今は平穏な人生を心の奥底で求めているな?現実世界や異世界全てを含めて、もはや自身を受け入れてくれるのはあの女だけだと感じ、そいつとの日常が欲しいんじゃないのか?」

「なんだと……?」

「既にお前の中の戦いを求める渇望は消えつつある。そうだろう?」

シュウの心を見透かしたようにネガは言った。

否定はしたい。しかし、シュウの本能がそれを引き止めてしまい、口に出すことができない。

戦闘兵器として戦いや復讐のみを背負って生きるか、それとも全てを忘却して安寧で流血のない人生を生きるという選択肢によって、シュウは無意識の内に葛藤を強いられていたからだ。

「わかんないや。けど、今はそんなことどうでもいいでしょ。アンタを倒すことだけを考えたいからさ……!!」

「俺を倒すだと?それは依代となっているユウスケをも殺すということか?」

「違う。アンタ個人を殺すってことだ。」

シュウはフォンスの刀身でネガに切りかかるが、ユウスケの体を傷つけてしまうことを恐れて中々命中させることができない。

ネガもそのことに感づき、ブレードをグランディールで受け止めてシュウの首を狙って手刀を繰り出した。

「……なに?」

しかしどこからか放たれた銃弾がグランディールの刃に綻びを入れ、それに伴ってネガの動きが止まる。

シュウが弾道を遡って位置を探ると、茂みからスプリングフィールドM1903に酷似したリピーター 〝ヴィユー〟を構えているシスティが見えた。

(やはり……!侵食された特典アイテムの弊害はユウスケ様ではなく、乗り移った者に適用されている……!これならば……!!)

肝心のネガはまだシスティの存在に気づいておらず、更にはシスティの意図を勘づいたシュウはグランディールに片方のフォンスの照準を定めた。

だが、直視していたはずなのにネガが一瞬にしてシュウの前から姿を消し、完全に隠れていたシスティの背後へと回った。

「裏切り者め……!」

システィが反応したと同時にネガは背中を手刀によって貫く。

アークの治癒能力をもってしても再生不可能なほどの傷を作られたシスティは力なく倒れ、手から透明の宝石 リベルテが落ちた。

「まさかグランディールを狙うとはな。失敗作にしてはやるじゃないか……!!」

既に瀕死のシスティの頭を潰そうとするネガの頬に弾丸が掠めた。

「その体でそれ以上のことはさせない。それに、アンタの相手は俺だろ。早く来いよ。」

コンダクターでチェスターを呼んだシュウだが、あれほどの傷ならば処置は不可能だと断定してネガへと顔を向けた。

「かなり気丈になっているようだが、ひとつ教えておいてやろう。お前を始末したら全ての転移者を潰す前にハワードの王女の元へと向かい、そして殺す。」

その言葉にシュウは眉をひそめた。

「お前は知らないだろうが、あの女は世界で唯一〝魔力〟を保有している人間だ。かつてこの世界にも魔力という概念はあったが、やがて衰退し、今では誰もが伝説上の存在だと認識している。」

「それがどうして?」

「ハワード家は代々、魔力を持って生まれてくる家系なのだ。しかもティアラ・ハワードは歴代のハワード一族において群を抜いた魔力を体に秘めている。それを俺が奪い、転移者を1人残らず殺してやる。」

ネガがそう言い終えた瞬間、シュウの持つフォンスのレーザーブレードが肥大化して切っ先を向けた。

「ねえ!悪いけど、アンタを助けることはできそうにないや。だってこのままこいつを生かしておいたら、俺が最後に見つけた居場所さえも消えそうだからさ。だから、すまないけどアンタ諸共倒すよ。」

意識が残っているかどうかすらわからないユウスケに問いかけたシュウは、特攻し、レーザーブレードでネガの腹を突き刺した。

「ほう。満更嘘でもないようだ。」

霧のように消えて粒子化したネガは、シュウの背後に移動するも、それを読んでいたシュウは茂みの中に飛び込む。スモークグレネードを周囲に撒いて視界を遮断させたシュウは、あらかじめ設置していたシヴァで左胸目掛けて銃弾を放った。

発砲音により気づいたネガは驚異の反射神経で体の向きを変えて、左肩へと命中させた。

「さすがに対物ライフルでは痛いな。いや、これは特典アイテムだからか……。」

50口径でさえ確かなダメージを与えられないネガは出力を上げたシヴァの弾丸をいとも簡単に避け続けた。

至近距離まで近づかれたシュウは、すぐさまフォンスのブレードで斬るが、左手で掴まれてその直後に右手で掌底による一撃がシュウに見舞われる。

「がっ……!!」

シュウはミサイルのように吹き飛び、岩壁に衝突する。

肋骨や手根骨といった身体を動かすための機能を粉砕され、微小の意識のみで目を開けているシュウをネガは腕を掴んで拾い上げた。

「生きるために必要な臓器や骨は残してやった。お前には王女の元で魔力の質を上げる糧となってもらわねばならないからな。」

シュウは不敵にも笑った。

ネガという人間を超越した異次元の存在の他愛もない攻撃でやられた自身への皮肉か、それとも敗北を認めないシュウの最後の抵抗のどちらかだろう。

「最後までとても不快な転移者だったな。その神経を逆撫でする口調と表情を2度とさせぬよう、顔でも潰しておくか……!!」

ネガは右手に力を込め、黒いオーラを纏わせる。

呆気ない幕切れだと悟ったシュウは目を閉じると、聞こえたのは自分の顔の肉が砕ける音ではなく、銃弾による掃射音だった。

開眼すると目の前のネガの背中は幾つもの銃痕が刻まれ、口から血を出して膝を着いていた。

「貴様を追っているのがそいつだけだと思うな。9人目の転移者よ。」

高台から声が聞こえ、目を向けるとそこには黒髪で黒のロングコートを着ている長身の男 ブラストが手をガトリング型武装 〝ペルマナント〟に変えて立っていた。

ここまで読んで下さり、ありがとうございます!!

ネガを強くしすぎてしまったため、試行錯誤しながら書いてます……。しかし、あと3話ほどでシーズン1を終わらせる予定ではいます。

今後とも「異世界に居続けたい最強戦士と帰りたい凡人」をよろしくお願いします!!

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