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Episode19 「未来からの使者」

お待たせしました!

今回は少しだけ長いです。

ユウスケが城内に突入したと同時刻──。

「フウカ、悪いが俺はここを離れる。」

ソウジの突然の宣言にフウカは目を見開いた。

「……どうかした?」

しかしフウカは一瞬にして冷静さを取り戻し、端的に質問を始めた。

「ここを占領した奴ら、ディユと繋がっている可能性があると考えたまでだ。ならば俺が一足先にディユの本拠地に出向き、情報を集めてくるのも悪い手ではないだろう。」

「でもあなたは偵察向きじゃないでしょ?できるの?」

「この状況下で動けるのは俺だけだ。今は厄介な敵対勢力を潰すのが最優先事項だからな。それと、手に入れた情報はコンダクターを通じてお前に送ることにする。」

ソウジはアンパクトの残弾数を確認し、フウカに背を向けた。

「戻らない気でいる?」

「さあな……。俺には願いがない。だからこのバトルで勝ち残る理由もない。……だが、ひとつ心残りがあるとすれば、ヤツの成長を最後まで見られなかったことだ。」

「ユウスケのこと?」

「わかっているとは思うが、ヤツは強い。お前がバトルを放り出して同盟を組むワケも頷ける。」

真面目な顔をして言うソウジに思わずフウカは吹き出した。

「なぜ笑う?」

「だって珍しいんだもの。あなたが誰かを認めるなんて。」

薄らと笑みを浮かべたソウジは歩を進めた。

「とにかくこれで最後だ。……世話になったな。フウカ。」

フウカは去りゆくソウジの背中を見えなくなるまで見つめ続け、地平線に溶け込んだと同時に地獄と化しているアンジュの街へと目を移した。


(次の角を右か……。)

シュウはコンダクターにインストールされているマップ機能を使いながら、ティアラのいる部屋を目指して走り回っていた。

しかし突然シュウは足を止め、フォンスを向けながら何の変哲のない廊下の先に向かって声を発した。

「そこにいるの誰?」

「ぼ、僕だよ!まったく相変わらず君は恐ろしいなぁ。」

角から出てきたのはヨウだった。怯えて手を上げながら出てくるヨウに、シュウはため息をついてフォンスを下ろした。

「アンタか……。生きてたんだ。」

「なんとかね。それより聞いてくれ!グロウは壊滅だ。隊員もほとんどやられて、ついにはエレン隊長も……。」

「あの男が……?」

シュウは少し動揺し、ヨウから目を離す。

そしてその隙を狙ってヨウは背中に手を伸ばした。

「あのお姫様は?ティアラはどこに?」

「ティアラ様なら確保してある。こっちだ。」

ヨウは案内する素振りを見せて振り返り、シュウがフォンスをホルスターに収納したのを確認したのと同時に手に隠し持っていたクナイをシュウ目掛けて投擲した。

だが、シュウはまるで予知していたかのように表情を変えずにクナイを指2本で軽く受け止め、そのまま床に投げ捨てた。

「へぇ?やるじゃん。」

「育ちのせいで人の悪意には敏感なんだよね。特に、殺意と混ざったドス黒い悪意なんかにさ。」

シュウはホルスターに手を伸ばすが、ヨウはシュウに何かのスイッチらしきものを見せつけた。

「おっと。それ以上ヘタなことをすればお前の大事なモンが吹き飛ぶぞ?」

「それ、C4の起爆装置……?」

プラスチック爆弾の一種であるC-4の起爆スイッチを手に持っているヨウを見て、シュウは動かしていた手を止めた。

「俺に攻撃的な態度を見せれば、ティアラの命はない。言っただろ?既に確保してるってな。」

「何が目的なの?」

「答える気はない。ただ、お前はここから引き下がってまたバトルに勤しんでくれればそれでいいのさ。」

「つまり、今俺がエイジと会うのは困るってわけだ。でもいいの?アンタがティアラを消したら、あいつの親が黙ってないんじゃない?」

核心をついたらしく、ヨウはUSP45に酷似したハンドガン 〝ルドゥー〟をシュウの足元に向けて発砲した。

「黙れナルシスト野郎!!あんま調子乗ってっとあの女消し炭にすんぞ!!」

ヨウの表情が変わってシュウに対して怒号を飛ばした。

「それに心配ねえよ。ハワード家は世界統一のために随分前から遠征に出ている。しばらくは帰ってこねえさ。」

ヘタに刺激してしたせいで装置を握る手が強くなり、いつ爆破されるかわからなくなってきてしまった。

しかしシュウは感情を昂らせることなく、冷静なままヨウと対峙し続けた。

「引き下がるか、それとも俺に突っ込んでくるかどっちか選べ。」

「そんなことしなくても、この状況を打開できる方法はあるよ。」

シュウはチラッと目を泳がせると、どこからか飛んできたスモークグレネードによって両者の視界が遮られた。

「何が起きたァ!?」

狼狽えるヨウの後頭部に〝アトリビュート〟のマズルブレーキが押し当てられ、ヨウは立ち止まった。

「起爆装置を離せ。」

アトリビュートの主はチェスターだった。

トリガーに指をかけ、ヨウに対して忠告を促すチェスターだがヨウは装置を手放さない。

「チェスターか……。クックックッ……。エレン隊長が死んでさぞかし悲しいだろうなぁ?」

「挑発し、油断を誘うその手はくわない。それに姫君はこちらで保護した。その爆弾は既に意味のない代物だぞ。」

「そうかな?」

ヨウは躊躇なく装置を起動させ、遠方にて爆発音が鳴り響いた。

その隙にヨウが逃走する可能性を視野に入れていたチェスターは、アトリビュートのトリガーを引いて銃弾を発射させた。

「なにッ!?」

まるで予知していたかのようにヨウは銃弾を避けた。

ゼロ距離だというのに傷ひとつつけず完璧に回避し、同時に手に仕込んでいたカランビットナイフをチェスターの首元目掛けて刺そうとする。

しかし反応したシュウがフォンスにてヨウの手を撃ち抜き、カランビットナイフを手中から落とした。

「凄まじい反射神経だなぁ?」

「アンタみたいな人間のやりそうなことはわかってるから。そんなことより、アンタの反射神経も人並みじゃないでしょ?」

シュウがそう言うと、不敵に笑うヨウの右眼が黒色から青色へと変色し、髪色も一部がメッシュが入ったように青色が装飾された。

「……俺たちは人工生命体〝アーク〟。いずれ世界を導くためマスター・エイジによって造られた究極にして完全なる存在だ。」

「へぇ……。つまり俺と似たようなもんか……。」

「お前のような旧世代の遺物と同格にするな。アークこそ人類が造り上げた生命の到達点だ。その証拠を今見せてやる……!!」

ヨウの体が一瞬にして消え、シュウの背後へと回った。

カランビットナイフが胴体へと切り込まれる寸前でシュウは反応し、フォンスをブレードモードに変形させてナイフを受け止めた。

「さすがだ……!やっぱ転移者なだけはある……!」

シュウはナイフを弾いてヨウと距離をとった。

「満更嘘でもないみたいだ。かといってこのまま戦ってもジリ貧だし、疲れるけど本気出して殺そうかな。」

シュウは二丁目のフォンスも刀状に変え、軽く息を吸った。

すると周囲が殺気と闘気が混じりあった異質な空気へと一変し、ヨウがたじろいだ瞬間を狙ってシュウは地を蹴った。

目に見えぬ速さでヨウの懐まで移動したシュウは、フォンスの刃でヨウの腹を切り裂こうとする。

「消えろ。」

後ろに下がって攻撃を避けたヨウだが、シュウは飛翔して上空からフォンスの切っ先を下に向けてヨウ目掛け突き刺す。

だが、ヨウは粒子となって分解され、何かを感じ取ったシュウはフォンスを右側の壁に向けて投擲した。

「がッ!?」

フォンスが壁に刺さると不可視状態となっていたヨウが姿を現し、肩から血を流していた。

「なぜわかった!?」

「アンタが生きてる限り、呼吸とかでいる位置わかるから。だからどんな方法使っても俺の目は欺けないよ。」

シュウはフォンスをブレードモードからガンモードに戻し、銃口をヨウに向けた。

「死ね。」

「悪いがさせない。」

白色のバリアがヨウの前に展開され、銃弾は吸収されてしまった。

「ヨウを失うわけにはいかないのでね。ここは退却させてもらうよ。」

エイジと見たのことない青髪の少女がヨウの横に現れた。

「マスター。この場にいるのは転移者 シュウさんとグロウ所属のチェスターさんの2人だけです。」

「ああ。」

少女は腕につけている時計のようなものでシュウとチェスターを把握すると、エイジは笑って周囲に旋風を巻き起こした。

「シュウ。ここで失礼させてもらうが、君もユウスケ君のように僕のために動いてくれたまえ。僕の理想のためにね。」

エイジはそう言い残すと旋風と共にヨウと少女を連れて消えた。

気配が消えたのを確認してからシュウはフォンスをホルスターに戻すと、アトリビュートを携えて物陰にいたチェスターが顔を出した。

「連中、ここを拠点にするのを諦めたらしいな。」

「まあ、もういる意味もないだろうし。……それにしても、アンタは気の毒だったね。」

「フッ、お前に心配されるほどの精神状態ではない。確かにエレン隊長やグロウの仲間は無念の死を遂げたが、俺のようにアンジュから離れていた者や休暇中の隊員もいたんでな。まだグロウは壊滅などしていないさ。」

気丈に振舞ってはいるが、シュウは彼の心の奥底にある悲しみを見逃してはいなかった。

シュウは胸につけていたグロウのバッジを取り外し、手の平に乗せてチェスターに差し出した。

「ああ、そうだったな。エレン隊長がいない今、もうお前がここにいる意味もないな。」

「……いや、俺は残るよ。」

思いがけない返事にチェスターは目を見開く。

そしてシュウがふと横を見ると、自分の名を呼びながら駆けてくるティアラの姿が見え、そのまま言葉を続けた。

「この世界で俺を理解してくれるのはティアラだけ。だから俺はティアラのためにグロウに残る。けど、俺を雇ったのはエレンであってアンタじゃない。もしまだ俺を雇う気があるなら、新たなボスとなったアンタが俺を雇ってよ。」

「傭兵にしては珍しく義理堅いんだな。……だがいいだろう。たとえお前が生意気でムカつく野郎だとしても、今は戦力が必要だ。」

チェスターはバッジに手を重ね、次の文言を唱えた。

「お前を新生グロウのメンバーとして迎え入れる。期限はこの世界から危険が去ったと確認できるまで。」

読んで下さり、ありがとうございました!!

今まで謎だったであろうティアラの家族について触れてみました。

次回はユウスケサイドです。いよいよ物語が中盤へと動き出します。

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