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Episode 17「全てが変わる」

このエピソードから話の流れが急加速します。

世界の中心部 アンジュの北東門からグロウの馬車が入り、アジトの裏口前に停車した。

「随分と遅かったですね。モルガンさん。」

裏口の扉に寄りかかりながら待機していたヨウは、馬車を運転していた角刈りの男 モルガンから手綱を渡されて運転を変わる。

「途中で旅の方をウォードの屋敷に送っていてな。囚人の護送は部下に任せている。」

「それで……。では、グロウの隊員を全員、広場へと集めてください。そこでエレン隊長から話があるそうです。」

「わかった。……それにしても、またあの旅の方とは会いたいものだ。」

モルガンは扉を開け、ヨウはコンダクターを取り出して馬車を運転しながら通信を開始する。

「……こちらヨウ。予定通り、No.8はNo.7の元へと向かった模様。作戦は順調です。……あとは、あなたが決行すれば全てが変わります。マスター。」


黄金の閃光が木々を薙ぎ倒し、シュウは枝から枝へと飛び乗ってハルトの追撃から逃げる。

「その程度かァ?」

ハルトは掌から黄金のエネルギー弾を放つも、シュウはその身軽さから直撃する寸前に回避していく。

「どうかな?」

攻撃に気を取られていたハルトの背後に、特典アイテム〝紅葉〟を右手に構えたツバキが、ハルトの左肩目掛けて振り下ろす。

(もらった……!)

しかし、ハルトは左手の甲で紅葉の刀身を受け止めて、左脇から右手を見せてエネルギー弾を放ち、ツバキを軽く吹き飛ばした。

「ツバキ!!」

受け身をとって体勢を立て直したツバキだが、左胸に先程のエネルギー弾がモロに直撃していたため、その苦痛から左膝をつく。

「鉄甲か……!?」

「お前ら程度なら複数相手をしてでも勝てる。なぜだかわかるか?……それは、私が本物の戦士だからさ。殺人を躊躇わない人間と、迷いのある人間とでは、実力に決定的な差がでるのだァ!!」

ハルトは掌に収束させるエネルギーを通常よりも多く集め、シュウが掴まっていた木に向けて、掌を向ける。すると、まるでレールガンのような威力を誇る強大なエネルギー弾が地面を削り、シュウ目掛けて飛んでいく。

「まだだ!!」

特典アイテム〝シヴァ〟の銃口をエネルギー弾に向け、トリガーを引き、特大のレーザービームを放つ。エネルギー弾とレーザービームは衝突し、強大な力のぶつかり合いのせいで互いの攻撃は消滅してしまった。

「姑息なッ!!」

砂煙が巻き起こり、互いの姿が視界から消えた。シュウは銀色のSIG SAUER P226に酷似した〝フォンス〟の銃身を曲げて銃口からレーザービームを射出させ、剣状に変えて右手で構える。

神経を研ぎ澄まし、耳に意識を集中させるシュウの左後ろからコンバットナイフのような大きさの小型エネルギー弾が飛来し、シュウは咄嗟に反応してフォンスのブレードで叩き割る。

更に追い打ちをかけるかのように小型のエネルギー弾が様々な方向から飛来し、シュウは全てを撃ち落とすことに意識を集中させていく。

(だが、待てよ……。この攻撃が全て俺へのダメージを与えるためじゃなく、全て囮だとしたら……。)

シュウは上空を見上げると、飛翔していたハルトが掌に黄金の閃光をチャージしているのが視界に映り、ガンベルトに装着している左のホルスターから、もう一丁の黒いフォンスを抜き取って、ハルトに銃弾を発射した。

ハルトは上空にいながらも、体を回転させて体勢を変え、銃弾による攻撃を躱した。シュウの前に降り立ったハルトは、収束していた閃光を収める。

「あの攻撃、全て遠隔操作でコントロールしてたんでしょ?だから空にいながらも俺に攻撃が行えた。」

「素晴らしい分析力だ。さすが〝AIB〟の隊長だっただけのことはある。」

砂煙は晴れていき、シュウは左目を微かに動かすと遠方にまだ回復していないツバキが見えた。

「ひとつ聞かせてほしいんだけど、なんで俺のチームを襲ったの?」

「複雑な理由なんてないさ。ただ私の逃走経路に、お前らがいたから殺しただけ。だが、残念だよ。噂に聞いていた〝AIB〟もあの程度の実力だったとはな。」

嘲笑するような笑みを浮かべたハルトに、シュウは怒りを覚えてブレード型のフォンスを右手で握りしめて特攻した。振り下ろされたブレードを後退して避けたハルトは、突き出た右腕を左手で掴んで、右手の拳による強烈な一撃をシュウのみぞおちに炸裂させた。

「がはッ!!」

吹き飛んだシュウは、胸を抱えて咳き込み、右手を地面について息を荒立てる。

「しかし、あのまま私に殺されずに生きていたとしても、明るい未来などお前達にはなかったはずだ。なにせお前達は……。」

話を続けようとしていたハルトの足元でピンを抜かれた緑色のグレネードが爆発し、ハルトは爆発に巻き込まれて地面に倒れた。

「危なかった……。」

ツバキもハルトが爆破するのが見え、苦痛に耐えながらもシュウの近くまで駆けつけた。

「倒したのか……?」

「わからないけど、これで平気なはずはない。それと、手を出すなって言ったんだから素直に従ってよね。」

「それも、また仲間を失わないようにするためかい?どうやら君にも仲間だと認めてもらえたようだ。」

安心した顔でシュウの横に座るツバキに、シュウは目線を合わせずに顔を背ける。すると、シュウのジャケットのポケットからコンダクターによるコール音が鳴り、シュウは通信を開始した。

「どうしたの?」

《シュウ!ハワードの城が炎上している!確認してくれ!!》

チェスターからの通信にシュウは立ち上がり、アンジュの街がある方向に目を向け、その中心に存在するハワードの屋敷の一角から煙が上がっているのが見えた。

「見えたよ。一体なにが起こってるの?」

《俺にもわからない。さっきからエレン隊長に連絡を取ろうとしてるんだが、応答がないんだ。俺は今からアンジュへと帰還する。シュウも早く戻ってこい!!》

通信は切れ、シュウはフォンスをホルスターに収納してシヴァを背負い、帰る準備をする。

「どうしたんだ?」

「どうやら、問題発生みたいだね。俺はアンジュに戻るけど、アンタは……。」

突然、ツバキはシュウを横に突き飛ばした。ツバキの体の半分は黄金の閃光で焼かれて、声を上げることなくその場に倒れる。

「しくじったかァ……。」

全身に火傷の後を負いながらも、辛うじて生きていたハルトは目を血走らせながら笑みを浮かべる。

「だが、これで一人減ったなァ。」

起きる気配のないツバキを見て、シュウは動くことができずにその場に硬直する。そんなシュウに狙いを定めるハルトは、収束した閃光をエネルギー弾としてシュウに放つも、飛び込んできた何者かがシュウを抱えて回避した。

「何者だ!?」

「それは俺が言いたいセリフだな。」

西部劇のガンマンのような服装をして茶色のウエスタンハットを被っているソウジと、銀色のロングヘアーで白衣に身を包んでいるフウカが、ハルトの前に立ち塞がる。

「アナタ、転移者のようね。それに……。」

フウカは体の半分が焼かれて消滅しているツバキを見て、歯を食いしばってハルトを睨みつける。

「あなたがツバキを殺したの……?」

「他愛もないヤツだった。まさか他の転移者を庇って死ぬとはなァ。転移者にあるまじき行為だ。」

ソウジはS&W M500に酷似した特典アイテム〝アンパクト〟を、フウカは白衣の内側から銀色の二丁ダガー〝ヴァン〟を取り出して構える。

「この程度の人数なら……!!」

「甘いな。」

ハルトは後頭部にガトリングの銃口を突きつけられ、瞳を微かに動かしてその正体を見た。

「カイトか……。」

漆黒のロングコートに青色のバンダナで口元を隠している黒髪の転移者 カイトは右腕のみを特典アイテム〝ホロコースト〟で武装して、M134に酷似したガトリング〝ペルマナント〟でハルトを威圧する。

「さすがにこうなると分が悪いか。」

ハルトは掌の閃光を広範囲に広げて放ち、カイト達は目を逸らし、ハルトはその隙に閃光に紛れて退散した。

「逃げたか……。そっちはどうだ?」

シュウを抱えて回避した転移者 ユウスケにカイトは尋ねる。

「特に異常はなさそうだ。」

立ち上がったシュウは、目の前に広がるフウカ、ソウジ、カイトをそれぞれ見てから、横にいるユウスケを見た。

「どうしてアンタがここに……?」

「このカイトのおかげだよ。」

カイトはシュウを見て、外傷が特にないことを確認する。

「ハルトがお前のことを気にかけていたからな。近いうちに対峙することになると思っていたが、まさかこんなに早く戦うことになっていたとは……。」

ユウスケを見て頷くカイトは、既に死んでいるツバキに対して怪訝そうな表情で目を細める。

「どちらかが死ぬとは思っていたが、ツバキの方だったか。」

「なんで助けたの……?」

「まだお前には生きてもらわなければならない。このバトルと、この世界の未来のために……。」

状況が理解できないシュウの前に特典アイテム〝紅葉〟を携帯したフウカが現れ、皆に紅葉を見せる。

「どうやら、あのハルトっていう転移者は特典アイテムは奪って行かなかったみたいね。」

シュウがもう一度、ツバキを見るために遺体を確認しようとするも、ツバキの遺体は既になく、代わりに遺体があった場所から赤色の粉のようなものが紅葉に吸収されていく。

「転移者は死ぬと、特典アイテムに使用者の生命エネルギーが全て吸収される。……ツバキの死を止められなかったのは悲しいが、早くアンジュへと向かわなければな。」

「今、アンジュでどんなことが起こってるわけ……?」

「エイジが動いた。早くしなければアンジュは奴の手に落ちる。」

ここまで読んで下さり、ありがとうございました。

ツバキの最期があっけなくてつまらないという意見もありそうですが、私はバトルのリアル感を出したくて敢えてあっけなく退場させました。

次回からしばらくの間、シュウとユウスケの両サイドで展開していきます。

今後ともよろしくお願いします。

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