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絶望は氷結とともに沈黙

ある日世界に突如混沌が訪れた。


「みんな早く避難するんだ!」


突如村のなかで叫び声が広がる。

叫び声がした方向見渡と、遠くを見渡せば視界を被い尽くすほどのモンスターの大群。



それを見た者は何を感じるか--それは絶望。



迫ってくる死と言う事実を受け入れる時、しかし人間と言うのは抗う生物でもある。


「冒険者を集めろ!」


その声と共に次々と冒険者と呼ばれる者たちが行動を始める。

村人の避難誘導、馬車の手配、防衛戦の形成、そして--。


「この事を早く王都へ伝えるのだ!」


この大惨事を伝えるべく、すぐに一番足の早いものが王都と走る、後ろには防衛戦で戦っているであろ戦闘の音が響いていた。



送り出した冒険者は時間の問題だろうと思っていた。

1万は軽く越えているだろうモンスターの大群、一体一体が強力な個体ばかりで今いる少人数の冒険者だけでは防ぎきることはまず不可能。

この状況で生き残ることは不可能に近い。

村人が乗った馬車を急かす、すでに防衛戦には綻びが出だし少しずつだが確実に戦線が後退し始めている。

急がなければこの村人達が逃げ遅れてしまう。

再度急かすために声をかけようそう決めたーーのだが。


「キャー!!!」


「ギャギャギャギャ」


声がした方向へと振り向く、するとそこで数体のゴブリンに襲われていた。

すぐに女の子の元に走り出す。

しかし、ゴブリン達はすでに手に持った手入れがされていない錆びたショートソードを女の子目掛けて振り下ろしている。

間に合わない。

直感的にそう感じたが救いたかった、今消えようとしている命を救いたかった。

しかし現実は残酷である。

ゴブリンが振り下ろしたショートソードは女の子の首筋から胸へかけて赤い血液を撒き散らしながら女の子の体へと吸い込まれていった。

女の子の体は糸が切れた化のように動きを止める、回りの地面には水溜まりのように貯まった血液。

それをゴブリン達は笑っているのだろう。


「ギャギャギャギャギャ!」


何が楽しいのか少女の腹部に何度も何度も刺しては抜いてを繰り返している。

撒き散らされる肉片と血液、その光景に吐き気が込み上げてくるがそれに構っている暇はない。

少女が殺されたと言うことは次のターゲットは私だ。

さすがにゴブリンと言えど数で攻められたら負けるのは目に見えていること、直ぐに走りだそうと振り向くがそこで目にしてしまう。

先程まで守っていた馬車が見るも無惨な瓦礫へと変貌していた。


「あ・・・あ・・・」


そして眼があってしまう、残骸の向こう側で村人達を補食しているオーガと呼ばれる化け物と。

同時に理解してしまうこれが絶望だと、前も後ろも一人では叶わない凶悪なモンスターが近付いてくる。

恐怖と絶望が身を包み抗うことを放棄してしまう、腰は抜け失禁をお越したが気づけない。

オーガが腕を掴み持ち上げる。

死へは抗うことはできない、そう悟った冒険者は抵抗しない。

ゆっくりとその体が運ばれる。


「死ぬのは・・・怖いな・・・」


誰にも聴こえないほどの呟き・・・しかしそれを聞いていた者がいた。


「え!?」


突如浮遊感が体を襲う。

目を開けてみると捕まれていたはずのオーガの手が腕ごと両断されていた。

両断された腕を押さえ私を睨み付けている。

いや、違う。私の後ろに誰かいる?


「氷結城」


その声はすごく恐ろしいほど冷たい声だった。

心も凍るほどの冷たい氷が辺り一体を包み込み先程のオークやゴブリン達が飲み込まれていき、やがて氷の楽園を作り出す。


 理解が追い付かない、ここまでの大規模な氷魔法は今まで見たことがない。

ゆっくりと後ろを向く、するとそこにはーー


--魔王ーー 


魔力が肉眼でも確認できるほど溢れだし見るものを絶望させるかのような冷酷さが伺える姿。

その姿はまさに絶望の象徴である魔王そのものであった。


それからはわからない。気付いたときには村を襲った魔物達は消え私は生き残っていた。


何が起こったかはわからないがあの魔王のような人間が救ってくれたのかはわからない、しかしこれだけはわかる。


私は生きている。


絶望的な状況の中生き残った。




それを遠くで見ていた者。


「魔王って一応人間なんですけど・・・」


呆れながらその場を去っていった。

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