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吸血探偵  作者: 一年卯月
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トライアングル 6

 結局のところ、メルディが殺されたのが遅い時間ということもあり目撃者はいなかった。このままじゃ犯人が見つかるのかも怪しくなってくる。

 メルディが殺された公園は相変わらず規制されていていて刑事たちが忙しなく動いていた。その中にメルディと一緒にストーカーの相談に行った時に対応した刑事がいた。怒りが込み上げてきて僕は、その刑事に近づいていった。

「あんたが、あの時ちゃんと対応してくれていればメルディは殺されることもなかった!メルディを返してくれ!!」

「フォン」

僕が、その刑事に掴み掛かろうとしたときにラバーズに止められ、そのまま公園の外まで連れられた。

「犯人は俺たちが今、探している。必ず見つけるから信じて待っていてほしい」

「信じることをさせてくれなかったのは大人(そっち)じゃないか!相談しに行ったときだって、実害が出てないからって追い帰されて結局、メルディは殺された。僕がもっとちゃんと真剣に相談していれば、殺されなかったかもしれない」

段々と声が小さくなっていく。なにもしてくれなかった刑事のことも許せないが僕は僕自身を許せない。

 僕は、家に帰ることにした。その途中、アリアに会った。

「フォン。一人で全部抱えないで私に、みんなを頼ってほしい。ずっと、前から…………好きでした」

アリアの顔が段々と赤く染まっていく。それから、

「こんなときにごめんね」

と呟いた。

「ううん。僕の方こそ気が付かなくて……。ただ今は、誰かと付き合うとか考えられなくて。ごめん」

涙目で真っ赤な顔のアリアに頭を提げ、僕は家に帰った。

 

 数日後、僕は手土産を持って探偵事務所に来ていた。時間帯は、やはり陽も沈んだ頃。僕が、事務所の扉をノックするとあくびをしながら気だるそうに探偵が扉を開けた。

「やあ、君か。あれ?君はこの間……」

探偵が驚き、なにか考えている様子だったがまぁ、いいかと中に入るように促された。探偵が驚いたのも当然だろう。あの時、ここに来たときと同じように僕はメルディの格好をしてこの場にいるのだから。

「あの、お土産持ってきたんです」

僕は袋から真っ赤なリンゴを取りだし探偵に見せた。

「あぁ。ありがとう。折角だから頂こうかな」

「じゃあ、キッチン借りますね」

キッチンの場所を聞いて僕はリンゴの皮を剥いた。リンゴの皮を剥いているとうっかり指を切ってしまった。さほど深くないようだが血がにじんでいる。

 ふっと僕の上に影ができ、いつの間にか探偵が隣に立っていた。僕の指を見たかと思えば、その口に含んだ。

「私はこの味を知っている」

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