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吸血探偵  作者: 一年卯月
5/7

トライアングル 4

 真夜中、僕は眠りにつくことができず少し散歩をすることにした。家の近くには広い公園があり子供の頃の、よくメルディと抜け出し星を見に行った。最近では警戒してか夜、滅多に出かけることはしなくなったけれどこの問題が解決したら誘ってみよう。

公園の真ん中には噴水があり夏場、子どもたちがよくあんな風に水浴びをしている。

「?」

いくらなんでも夜に水浴びをするのは聞いたことがない。気がつくと、僕は噴水の方に駆け出していた。水は真っ赤に染まり、噴水のに寄りかかったメルディがいた。

 公園の噴水の中で殺されていたメルディは身体中の血液が抜け、西洋人形(ビクスドール)みたいに白く美しいものだった。

僕はポケットから携帯電話を取り出すとある番号を押した。

「すぐ来て。妹が。メルディが殺された」

僕は簡潔に公園の場所を説明し相手が来るまでメルディの姿を見ていた。


「待たせたね」

顔を上げると探偵の姿があった。僕が呼んだのは親でも警察でもない。メルディが、僕の次に信用していた探偵。一週間後にまた会う約束をしていたがそれよりも早く会うなんて予想できただろうか。

「警察は呼んだのか?」

「呼んでいない。あんたのことはメルディも信用していたから」

「なら軽く調べるから終わったらちゃんと通報しろ」

そう言いながら濡れることも気にせずに噴水の中に入り、探偵はベタベタとメルディの体を触って調べている。

「首の脛脛動脈が致命傷だな。相手もかなりの返り血を浴びていると思うが……いや、違うな。切り口が上から下に向かっているようだな。相手を羽交い締めにして切りかかれば返り血を浴びることはないか」

なにやらブツブツと言っている。

「もう終わったのか?」

探偵を見ると手に付いたメルディの血を舐め取っていた。

『笑っている?』

探偵は確かにメルディの血を舐めて笑っていた。人の血を舐めて悦ぶなんてまるで()()()じゃないか。

「じゃあ、俺は帰る」

噴水から探偵が出るとスーツから水が滴り水たまりを作った。暗闇の方に歩き出した探偵はふと足を止め、

「ラバーズという刑事がいる。俺の知り合いだからそいつを頼るといい」

と言って暗闇へと消えていった。

 僕は探偵に言われた通り警察に通報した。すぐに警官数名が来て詳しいことを聞かれたが僕は未成年ということもあってかパトカーで家まで送ってもらうこととなり、車の中で色々聞かれた。僕を送ってくれた男はラバーズと名乗った。探偵の言っていた男だ。色々聞かれたが、ちっとも耳に入ってこない。また事務所に行くところだったのに。信頼できる人に会ったというのにという思いがグルグルと頭の中を巡る。

 窓の外に映った夜景が滲んで見えていた。車が止まってドアが開いた。

「着いたよ」

そう声をかけられ顔を上げると少し困った顔のラバーズが僕の方を見ている。

「ありがとうございます」

それだけ伝えると僕は車から降りたがなぜたがラバーズまで降りた。僕の不思議そうな視線に気がついたのかラバーズは、

「妹さんが死亡したことは俺から説明させてくれ」

「お願いします」

 無断で外出したことを咎められるかと思ったが両親は、ラバーズの話を聞くと崩れ落ちたように泣いていた。僕だって泣きたいのに不思議と涙が出てこないんだ。生まれたときから一緒の片割れがいなくなったのに、まるで身体中の水分が抜けてしまったかのようにカラカラに渇いているようだった。

 僕は、メルディを殺したやつを許さない。初めから警察が動いていてくれればこんなことにならなかったのに。いや、僕が泊まりに行くのを止めていればよかったんだ。何より許せないのは僕自身だ。

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