表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吸血探偵  作者: 一年卯月
2/7

トライアングル 1

 そんな吸血鬼のことを昨日のことのように思い出したのには理由がある。僕は、最近、何者かに付きまとわれているメルディと一緒に近くの警察署に被害届を出しに行った帰り。まだ、()()は出ていない為、近所を巡回すると言う結論に至った。実害が出ていなければ何をしたっていいという意味合いに憤りを感じたが、いざとなったら僕が守るという気持ちがあってその日は家に帰った。

 幼い頃から髪の長さを除いて違いのなかった僕らは、ウィッグを被ってふざけてお互いが入れ替わっていた。この日も、僕はメルディの格好をして家路に帰ろうとしていた。

 携帯音楽プレイヤーを聴いているとノイズとかじゃなくて、曲とは別の音が聴こえる。足音だ。耳に差し込まれたイヤホンを取り、自然と足が止まり耳を澄ませる。規則的な音は確実に自分の方へと近づいてくる。心の中でゆっくり数をかぞえる。

『1、2、3』

3で勢いよく振り返る。……誰もいない。安堵からか思わず息が漏れた。

 回れ右をして家路に帰ろうとしたときに目の前に大きな影が出来たことに気がついた。何事かと見上げると大きな男がいた。僕が数歩後ずさりをすると男も数歩進む。これは尋常じゃない。心臓が警告を告げるかのように早鐘を打つ。

僕は、来た道を戻るように走り出そうとしたとき男に肩を掴まれた。

 なにかが刺さる感触。飲み物をストローで飲み干したときのようなズズッという音を耳のすぐそばで聞いた。え?なにこれ。僕もしかして血を吸われている?誰に??左手を振り上げ、首に噛みついているものを振り払おうとする。僕が暴れたので自然と離れた。右手で傷口を押さえ、来た道を戻る形になるがどこか曲がり角を曲がれば遠回りになるけど家に着ける。右手で噛みつかれたところを、触ると指先にぬるりとした感触があった。血が止まる気配が全くない。メルディのときはすぐ止まっていたと思っていたけど。それともメルディも血が止まるまで時間が掛かったのか?首の止血ってどうやるんだっけ?首を絞める?いやいやそんなことをしちゃったら別の意味で全部止まっちゃうから。

 とりあえず家に着くまで傷口にハンカチを当てて手で押さえる。片手が塞がるって不便だ。

 完全に血が止まったのはそれから1時間経ってからのこと。変え続けたガーゼの山を見ると軽い惨劇状態だ。ガーゼをゴミ箱に捨てようとしたとき、鼻唄を歌いながらメルディがノックもしないで部屋に入ってきた。視線は明らかにガーゼに向いている。

「……フォン。おめでとう……」

おめでとうってなんだよ。なんか誤解してないか?僕は、メルディにさっきあったことを話した。

「ふーん。フォも吸血鬼に会ったんだ。昔、私の血を吸った人かな?」

血の止まった傷口を軽く消毒をして絆創膏を貼りながらメルディが言った。

「さぁ?顔までは見れなかったから」

「そっか。私のときはすぐ止まったと思うんだけどなぁ。どうせビビって逃げたんじゃない?」

「そ、そんなことないよ」

真っ赤になって否定したからたぶん逃げたことがバレていると思う。

「あ、そうだ。明日ちょっと付き合ってくれない?」

「どこか行くの?」

絆創膏も貼り終わり、メルディがガーゼの残骸をゴミ箱に投げ入れた。

「探偵事務所。噂では夕方から夜中にかけてしか相談を受け付けていないから吸血探偵って言われているみたい」

メルディはあれからいっそう吸血鬼に憧れを抱いている節があり、映画や本を好んでよく見ていた。

「うん。わかった」

「私、もう寝るねー」

「ありがと。おやすみ」

絆創膏が貼られたあたりをさすりながら僕は言った。

「おやすみ」

メルディの背中を見送りながら僕は考えていた。メルディのストーカーのこととか吸血鬼のこと。

そして、明日行く探偵事務所のこと。

「信用できる人だといいんだけど」

誰にいうでもなく呟いてベッドの中に潜り込んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ