送り込まれた初日1
1話で1日を書こうと思っていましたが、長くなりそうなんで半日ずつで切ります。
平成〇〇年10月18日 長崎県某無人島
AM9:05
興奮気味の相方が鼻息も荒く迫って来る。
「パイセン!これって黄〇伝説? 電波〇年?」
ん? 良く考えてみろよ……
「タカ、もうちょい良く考えろ、深夜帯だから電〇少年じゃね? ちょ!マジパネェ!」
待てよ…… 電波〇年って復活したんだっけ?
それに新番組のレギュラーのオーデションじゃ無かったかな? 一応確認しとくか……
「ディレクターさん、新番組っすよね?」
カメラマンさんと音声さんは聞こえて無いかのように無反応だ……
そう言えば居ないと思えか……
「でもこんなのって、よゐ〇の濱〇さんみたくチョー人気コーナーになるんじゃ?」
無名の新人がいきなりそんな成れる……
「タカ! だよな! 猿〇石も無名だった所からヒッチハイクで有名になったんだもんな! 俺達の時代到来か?www」
「でも50日っすよね? パイセン大丈夫っすか?」
うっ……
大丈夫な気がしない……
「とりあえず食い物と寝る場所確保しないとな……」
「うっす! 俺は飯の材料取って来るっす! パイセン寝る場所作っててください!」
「タカ?」
ヤバイ! 寝る場所なんてどうやって作ればいいんだろ……
タカの奴、居なくなっちまった……
AM9:30
「うわっ! でっけームカデ! キモい! キモいぞ!」
島に上陸した時のゴツゴツした岩場から、森? 林? の方に移動して数分虫と格闘する。
AM10:15
「九州って秋なのに暑いんだな……」
着ていたジャケットを脱いでジーンズとワイシャツ姿になる、少ないバイト代から頑張って貯めた金で購入した衣装だから大切にしないと……
「うわ! また刺されてる、痒いぞおい!」
既に5ヶ所ほど蚊に食われている、痒くてイライラする。
AM10:30
寝る場所の確保って何をすれば良いんだろう?
全く分からないので、岩場に戻ってタカを待とうと思い林を後にする。無駄に蚊に食われただけだった。
「カメラマンさんと音声さんは、タカの方に行ってるのか……」
食い物取って来るって、何を買って来るんだろ?
店あるのかな……
AM10:50
相方と合流、後ろからカメラマンさんと音声さんが来ている。
タカの手に持っている物を見ると鍋……
「食い物って、何持ってきたんだ?」
「あ〜、上陸した時に亀の手があったの見てたんで、とりあえず亀の手たくさん取ってきたっす!」
亀の手? なんだそれ?
「亀の手? そんなの食えんのか? てか何処にあるんだよ?」
「そりゃ食えますよ、塩ゆでしたらチョー美味いっすよ!」
タカが鍋の中を見せてくる……
「うわ! キモっ! なんだよそれ!」
「だから、亀の手ですって。」
緑のウロコみたいなのが付いてる、気持ち悪いウニョウニョしてる奴が鍋の中に入ってる。
「気持ち悪い物持ってくんじゃねえよ、俺は食わねえぞ!」
どう見ても食い物じゃ無い、断固拒否する。
「味噌汁とかに入れても美味いんすよ、騙されたと思って食べて見てくださいよ。」
「いやだ! 俺は、おにぎりがあるからいらない!」
「1個だけじゃないっすか。とりあえず茹でるんで、茹で上がってから食うか決めて下さいよ。」
そこまで言うなら、茹で上がってから決めよう、でもキモい……
AM11:00
タカに言われて薪になる流木を拾っている、俺の方が先輩なのに、なんでこんな事しなきゃならないんだ。
「あ〜あ、シャツ汚れてるよ……」
ワイシャツの袖をまくるのを忘れてしまったせいで砂が付いている。砂を払って袖をまくって流木を数本持ってタカの居る場所に向かう。
AM11:15
流木に蟻が付いていて、服の中に入ってきてムズ痒くて服を脱いで体を払う。
「くっそ! ふざけんな! 蟻のくせに! 蟻のくせに!」
格闘する事数分、蚊に食われた場所と蟻に噛まれた場所が痒い。
タカが居る場所に戻って来たが、どうやって火を付けるんだろう?
AM11:20
「パイセンあざーす! こんだけあれば大丈夫っす。出来上がったら呼ぶんで寝る場所作っててくださいよ。」
「なあタカ、寝る場所って、どうやって作るんだよ?」
「えっ? パイセンそれマジで言ってます?」
本気と書いてマジと読むってくらいマジだ。
「わかんないから聞いてるんだろ。」
「パイセンって、秘密基地とか作った事無いんすか?」
「東京生まれ東京育ちが、秘密基地なんて作れると思うか?」
一瞬カメラマンさんが吹き出したように思えて、見てみるも。無表情だった……
「何を、東京生まれヒップホップ育ちみたく言ってんすか。」
わかってくれたようだ、さすが相方。
「んじゃとりあえずパイセン、火付けといてくださいよ。」
「わかった、んじゃライターくれよ。」
鳩が豆鉄砲食らった顔って、こういうのを言うんだろうなって顔をタカがしている。
「ライターなんてあるわけ無いっすよ!」
「んじゃどうやって着けるんだよ?」
タカが大きなため息をついてこっちを向く。
「付けますから、茹でといてくださいよ。」
「おう! それくらいなら出来るぞ。」
AM11:30
タカが着ていたパーカーのフードの部分の紐を抜いて、俺が拾ってきた流木と合わせて、弓みたいなのを作っている。何するんだろ?
「木と木を擦って火を付けるんすよ、それを楽にする道具作ってるんす。」
そんな事をタカが出来るなんて知らなかった、田舎者恐るべし。
AM11:40
タカがあっという間に火を着けてくれた。寝る場所を探すのは2人で行こうと言い、亀の手とやらが茹で上がるのを待つ。
「水なんてどこにあったんだ?」
「海水すよ、めっちゃ海が綺麗っすから大丈夫っすよ。」
海水……
「それ絶対ヤバイって、腹下したらどうすんだよ?」
「パイセン見てきてくださいって、めっちゃ綺麗っすから、東京と違いますって。」
東京を馬鹿にされた気がして少しイラッとした。
PM0:00
茹で上がった亀の手とやらをタカが美味そうに食っている。ウロコみたいな部分と爪みたいな部分の境目を指でちぎって、中に入っているピンク色の部分を……
「うええ、キモい……」
「何いってんすか、これ貝っすよ。貝なんて見た目キモイのが普通っしょ?」
貝なのか? 貝なら食えるかな……
「ホントに食えるのかよ? お前だけじゃねえの?」
「そんな言うならスマホで調べたらいいじゃないっすか、せっかくスマホ渡されたんだし。」
おっ! そうだった、スマホあるんじゃん……
「これand〇oidだよ…… 俺使った事無いや……」
「あー、そうっすねパイセンいつもiPh〇neすもんね、でも殆ど変わらないっすよ?」
PM0:05
焚き火の近くの高さがちょうど良さげな石の上に座り込み、タカに教えて貰いながらグー〇ル検索で亀の手を調べてみた。
「ホント食えるんだな、しかも美味いって書いてある……」
「だから言ってるじゃないっすか、美味いから食ってみてくださいよ。」
タカに渡された剥かれた亀の手を凝視する。ピンク色でふにゃふにゃしている。
「キモい、でも匂いは貝だな……」
不味かったら、おにぎりで誤魔化そうと思い口に入れてみる……
「モゴモゴ……」
…………
「美味い……」
「でしょ?(笑)」
見た目はキモいのに、塩味が効いてて美味い……
「キモいのに美味いとか……」
「美味いのは見た目じゃ無いっすよ。見た目で美味い不味いを決めるんなら、蟹とか絶対不味いじゃないっすか。」
言われてみればそうかと思いながら、鍋から亀の手を取って剥いてみる……
「でも、やっぱりキモい。」
AM0:30
鍋に八分目くらいあった亀の手も、2人で食うとすぐ無くなった。茹で汁で焚き火を消して食後の休憩をする。
「全然足りん! 中途半端に食ったら余計腹減った……」
「パイセンって、いつも満腹超えるまで食うっすもんね、食いすぎると昼からキツイっすよ?」
何がキツイのか? 寝る場所作って、その後は夜飯食って寝るだけだろ?
「でも電波来てんだな……」
「あ〜、あっちに見えてる島があるじゃないっすか、来る時に近くを通ったんすけど携帯の電波塔あったすよ、だからじゃないすか?」
タカに言われた方を見てみる……
「なんだよこれ、すっげー。」
周りを気にしてなかったから全く気付いて無かった。目の前の海の先に沢山の大小様々な島があって、めちゃくちゃすごい風景だった。
「長崎県って日本一島が多い県っすからね、船から見た時に俺も感動したっすよ。」
「へー、そうなんだ。」
普段アホなタカが豆知識を披露している、なんかイラッとした。
パイセンは太っています、タカは中肉中背です
読んで頂いてありがとうございます