掘りごたつ
季節外れに思うのは、これからやってくる新ジャンルを意識するかのような事だと思う。
流行に乗って快感に思うのは、誰よりも先に行っているという優越感にあるのではないか?
「掘りごたつが欲しいなーって」
瀬戸博は勤務中に思う。そんな会話を聞いた工藤友こと、友ちゃんは頷きながら乗っかる。
「冷房がちょっと掛かりすぎよね。電車やバスの中でもそうだし」
「ううん、掘りごたつの中に隠れていれば、女の子のパンツを普通に見れると思うとね」
ここはとあるゲーム会社。
変人共が集う場所。
友ちゃんは主にツッコミを担当する。なんだそんなことか、なんて思いながら
「なにアホな事を考える!」
「いでっ!チョップしないでよ!!だいたい、友ちゃんはいつもズボンじゃないか、パンツなんかそもそも見れやしない。林崎ちゃんを見習って!」
「あたしがそうであるように、周りだってそうでしょ!なんでも変なことを考えるな!」
「スカートが似合わないのは、着慣れてないからだよ!友ちゃん!」
「余計なお世話だ!」
さらに失礼を言う瀬戸を殴りつける友ちゃん。しかし、こーいう話に食いつく先輩や同僚もいる。ツッコミの人数が少なく、苦労するの。
「瀬戸、気をつけておけ」
「松代さん」
「そうですよね。こんなアホな事をいつも考える瀬戸を、”先輩として”、叱ってください」
「掘りごたつの中では薄暗いし、どんな女の子のパンツか分からないだろ!!”変態として”、注意しておこう!」
「指摘するところが違う!!変態として叱るな!!」
瀬戸と同じ、グラフィッカーを務める松代宗司。友ちゃん達の先輩に位置する人物であるが、まだこの人でもまともな部類というのが、壊滅的にダメな会社。
「そ、そうか。ブスのパンツ見て興奮してたら、ショックが大きいですよね。股開きする女の子はあまり行儀が良くないと思います。あくまで僕の感想ですけど」
「そうだ。何事もパンツばかりに囚われちゃいかん。下着フェチを否定しないが、着飾って彩る存在が華だと俺達は思っているだろ?」
「なに気持ち悪い事を美談っぽく語るんですか。仕事してください!してるんでしょうけど、あたしの邪魔をしないで」
というか、瀬戸如きが女子の内面まで気にしているのが凄く腹立つんですけど?
「掘りごたつ変態プレイを先駆けて作ろうかなってー」
「それはきっと存在しているぞ。既存かもしれないが、美女達に掘りごたつの中で踏まれて、足フェチ男が興奮する感じなんてどうだ?」
「良いですねぇ、色んな足に踏まれて善がるM男をも属性にした主人公にしてー」
こいつ等の話についていけん。なにを想像している気持ち悪い。
ちょっと嫌悪染みた自分の表情に気付いてか、あたしの一番の友達が声を掛けてくれた。
「友ちゃん。そんなに怖い顔をしないでよ」
「弥生。男共の、あんな会話を4時間毎に聞いていたら嫌気が出るでしょ」
「でもでも、ロマンがあるじゃないですか。愛らしいシチュの一つです」
「どの辺が?」
今の話にそんなロマンがどこにある?そう思っていた。
「見えない足元でぶつかり合う、二人の足」
「!あー、あーいうのね」
テーブルの下でイチャイチャしている2人の足。外の世界に出す顔はちょっと照れているのに、隠れた世界の中ではデレデレになる。本当の気持ち……
「イケメン同士、最高です」
「男同士かーーい!?鼻血が出てるぞ!弥生!」
ティッシュを貸して安西の鼻血を止めてあげる友ちゃん。
「まったく。見たいのは分かったけど、中にいたら邪魔になるでしょ」
「あ!そっか、私。考えてなかった」
「……あたしもなに言ってんだ?つーか、弥生は顔を見る気ないの?」
「2人はイケメンだって、私の中で決まっている妄想ですから。イチャつくパターンを増やしていきたいです」
「そ」
ちょっと反省する友ちゃん。夢が難しいことに俯く弥生。話が終わりそうなところに畳み掛けて来たのが、
「待って、安西!友ちゃんも聞いて!諦めずに!」
「なによ、林崎」
「今、気付いたんだけど!男同士がこたつの中に入って、」
お互い隣合ったイケメンの○○○が、成長しているところを中からリアルタイムで見るシチュだったら、もっとヤバクない。
「下でとんでもなかったら、上はどうなっているか!気になるでしょ!」
「ぶふぅっ、鼻血吹き出る。妄想広がる展開……。イケメン同士ですから、ズボン着用時でも、よく見えるでしょう」
「お前等仕事しろーーー!もう、この話はダメェェ!広げるな!!」
男も、女も、人間全てに言えることだけど。
馬鹿ばっかり。