1-4 「秘密」
毎度の事ながら、生みの苦しみを味わいました。
前回と同じくらい間が空いておりますが、今回は前回とは違います。
話中でもう一つの未来として語られる話を書いてはみたものの、あまりの鬱展開に、これはこの作品の趣旨に反すると思い、削除して書き直した上に文字数が前回の約二倍。
つまりコピペもあるとはいえ、今までの二話分に相当する内容になっております。つまり二話分を二ヵ月かけて書き上げた訳で、一ヵ月に一話投稿するのと変わりないという点で、二ヵ月かけて一話投稿したの前回とは違うのです。……やっぱり苦しいでしょうか? 内容的にクリスマスに間に合ってよかったです。
エルダーヴィードという家について調べ、自らを取り巻く環境を理解したヨシュアであったが、これだけではまだ不充分だと感じていた。
何しろ、まだいくつかの疑問が解消されていない。
何故自分は別荘の離れに、世話係のエレミアと二人だけで生活しているのか?
先刻聞いた話では、祖父母が自分の誕生日を祝いに駆けつけるらしいが、父や母、兄弟はこないのか?
それとも居ないのか?
といった、家族構成や家庭環境についてであった。
どうしてエレミアに問い質さないのかといえば、何やら複雑な家庭環境だったりしたら、彼女も話し辛いかもしれない、という似合わぬ気遣いの結果である。
どうせ後で【ネット】のスキルで調べるつもりだったので、調べてわからなかったら聞けば良いだろうくらいの気持ちでいた。
しかし調べようとしたところで、ヨシュアは自分がそれを調べる方法を知らない事に気づく。
他人の家庭環境など、普通はネットで調べられるような事ではない。
全知全能に近い女神様は知っているのかもしれないが、彼にはわかる筈もなかった。
暫く頭を悩ませた結果、ヨシュアは思いつく。
(そうだ! こんな時には某巨大掲示板だ!)
斜め上の発想であった。
某巨大掲示板万能説でも提唱するつもりだろうか?
困った時の神頼みならぬ某巨大掲示板頼みか?
さすがに某巨大掲示板であっても、他人様の家庭内の事情まではわかる筈もないだろう。
しかし一見的外れに見えたこの試みが、有能な女神様のおかげで、新たな可能性を生み出す一助になろうとは、ヨシュア本人にも全くの想定外であった。
結論から言えば、某巨大掲示板のパク――もといリスペクト的なものは存在した。
その名も『女神ちゃん寝る』である。
(おっ、おう……。誤字なのか本気なのか、怖くて突っ込めない)
ごくりと唾を飲み込み、戦慄するヨシュア。
結局今回も華麗にスルーした。
早速閲覧してみると、立っていたスレッドは一つだけだったのだが――。
『女神だけど何か質問ある?』
何時でも女神様に問い合わせが可能な板であった。
即座に飛びつくに決まっていた。
◇
女神だけど何か質問ある? [無断転載禁止] MEGAMI・ch.〇〇〇
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
答えられる範囲で。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
キター! たて乙です。良いですか?
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
いらっしゃい。勿論よ? どうぞ?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
エルダーヴィード家の家族構成と、家庭環境について教えてください。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
……ねえヨシュア?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
はい?
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
知恵ある存在全てが患っている、不治の病って何かわかる?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
えっ? 不治の病? いえ、わかりませんけど……?
◇
エルダーヴィード家の事を聞いた筈が、何故か話がすり替わっている。
女神様の強引な話題転換に、ヨシュアは困惑した。
しかしその間にも書き込みは続いている。
◇
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
答えは『好奇心』よ。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
好奇心が不治の病?
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
ええ。隠された秘密や自分が知らない事があると、知りたいと思うのが、どうしようもない人の性でしょう? 噂好きなご近所の主婦だけかしら? あなたは気にならない?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
いやまあ、気にならないと言えば嘘になりますけど……。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
そうよね? 誰もが多かれ少なかれ思うものでしょう? 自分が知らない事があるなんて不安だ。訳のわからないものを信じる事なんてできない。理由がわからないと納得できない。だから『知りたい』って。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
はい。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
だけど、そうやって欲求のままに秘密を暴いて、知った情報が全て喜びや幸福に繋がるとは限らないのよ? 『好奇心は猫を殺す』ということわざは知っているかしら?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
はい。何度も聞いた事があります。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
有名過ぎて使い古されたことわざだものね。でも手垢にまみれるくらい使い古されるという事は、それだけ真実を突いているからだと思わない? 誰も共感も納得もできないことわざが、使い古されるなんて事があるかしら?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
まあ、そうですよね。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
知っている? 秘密にも種類があるのよ? 知ってしまったら最後、誰にも打ち明ける事ができない秘密もある。自分一人で抱えて、お墓まで持っていかなければならない秘密なんて、知っても辛くて苦しいだけで、何の得にもならないと思わない?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
え? あの?
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
事前に内容がわからないからこそ秘密なのであって、知った瞬間に秘密じゃなくなるのよ? 自分に益のあるものばかり選んで暴くなんてできない以上、知りたくなかった秘密や、知られてしまったからには相手に生きていられると都合が悪い秘密。苦しみや危険を伴う秘密もある事を、弁えておかなければいけないんじゃないかしら?
九つも命があると言われる、猫さえ殺す好奇心だもの。覚悟もなく手を出せば、一つしかない人間の命なんて、ひとたまりもないと思わない?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
ううっ……。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
……あら? ごめんなさい。話が脱線しちゃったわね? えっと? 確か質問はエルダーヴィード家の家族構成と家庭環境について、で良かったかしら? ……ねえ、本当に聞きたいの?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
ひぃっ。
◇
突然の強引な話題転換と見せかけて、どう考えても遠回しな警告であった。
わざわざこのようなまわりくどい真似をするのは、女神様が打たれ弱いヨシュアの精神を気遣っての事だろう。
ヨシュア本人は、転生前のインターネットと同じように、あれも知りたいこれも知りたい、と気軽に扱っているが、比較にならない程強力な力であり、それだけに使い方を誤れば危険も大きい。
剥き出しの精神に対して、耐え切れない程大きな情報を与えればどうなるだろうか?
当然壊れるであろう事は言を俟たない。
所謂精神崩壊である。
女神様の言葉ではないが、動物には好奇心という厄介な習性があり、知能が高ければ高い程強くなる傾向にある。
ヨシュアの場合も、依存症だからというだけでなく、これがスキルの使用頻度の高さに拍車をかけているのは間違いない。
危険な行為を行う回数が多ければ多い程、痛い目に合う確率が上がるのは自明の理であり、覚悟もなく力を揮えば、待っているのは身の破滅である。
先程女神様は、ヨシュアの質問がその危険性を孕んでいる事を暗に示し、その上で覚悟の有無を問うたが、その危惧は的中し、何の覚悟も持っていなかったヨシュアは怯んだ。
スキルの使用に危険が伴うなんて話が違う、と思うかもしれないが、良く思い出して欲しい。
女神様は、インターネットのような事ができるスキルを与える事は可能、とは言ったが、全く同じとは言っていないし、危険が伴わないとも言っていない。
そもそも、インターネットも使い方を誤れば危険である事に変わりはないのだ。
法律で禁じられた犯罪行為に利用すれば、逮捕されて刑事罰を受けたり、社会的な信用を失ってしまうのである。
それもある種の身の破滅には違いないのだ。
◇
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
怖いの? だったらやめておきましょう? ね?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
ううー……。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
それでもやっぱり気になるのよね? 怖いもの見たさというそれも、好奇心の一種よ? 怖いのならやめておけば良いのに、女神の警告の信憑性がどれ程高いかを理解した上で、それでも気になって仕方がない。ね? 度し難いでしょう? 実感できた?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
……はい。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
それならもう少しだけ情報を与えましょうか? これを聞いてもまだ知りたいと思うのなら、私はもう止めないわ。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
どんな情報ですか?
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
私が見た可能性の世界で、質問の答えを知ったあなたが、どんな反応をしたのか。それを見たからこそ、私はあなたの質問に答えるのを、こんなにも躊躇しているのよ?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
……お願いします。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
……わかったわ。自分の出生に関わる秘密と、現在の家庭環境を知ったあなたは、暫くの間真っ青になって震えていた。
せめて気分を落ち着けようとでも思ったのか、テーブルの上のマグに入った水を、震える手で口元に持っていって……そこであなたは、水面に映る現在の自分の顔に気がついた。
その瞬間だったわ。あなたは悲鳴を上げてマグを放り出して、裸足のまま地面に飛び降りて近くの花壇に駆け寄ると、そこに植えられた花の根元に向かって、激しく嘔吐した。その後大声で泣き喚いたと思ったら、突然糸が切れたように気を失って、地面に倒れ込んだのよ。
あれはおそらく防衛本能が働いた結果、精神崩壊寸前で、脳が無理矢理意識を落としたのね。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
う……嘘でしょう? そんなの嘘ですよね?
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
本当の事よ。嘘だけど。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
どっちですか!?
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
どちらも本当よ。ちゃんと説明するから落ち着いて?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
うっ……すみません。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
……どう説明したものかしらね。あなたがスキルを使う時にアクセスしている場所には、いくつかの呼び名があって、その一つが『アカシックレコード』なのだけれど……。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
アカシックレコード!? 初めてスキルを使った時も書いてありましたけど、それってオカルトで良く聞く、あの?
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
まあ厳密には違うけれど、限りなく近い概念ではあるわね。もっとわかり易くたとえるなら、過去のどんな出来事も調べられる上に、未来さえもあり得ない精度で予測可能な、神の叡智そのものと言っても良い量子コンピュータ、かしら?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
え? じゃあ、女神様に未来の事がわかるのは、その量子コンピュータの力なんですか?
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
正確にはそうして予測した、限りなく予知に近い複数の未来予測から一つを選択して、それを神の権能で、現実に起きる未来として決定しているのよ。
あなたを転生させる時に、どのような方法を選ぶか、という選択肢は二つあったのだけれど、そのどちらの可能性も観測した結果、先程教えた反応を見たという訳。
それは予測とはいえ、私がその転生方法を選んでいれば、間違いなく現実に起こり得た未来。だから本当。けれどあなたの姿が、あまりにも痛々しくて見ていられなかったから、それよりはましと判断した、もう片方の未来を私は選択した。
今のあなたは、先程教えた反応をしたあなたとは違う未来に居るので、全く同じ反応をする可能性は低い。そういう意味では嘘とも言える。どちらも本当とはそういう意味ね。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
お話はわかりました。先程の話とは転生方法が違うので、受けるショックは軽減されているとは思うが、かといって若干の誤差に過ぎないので、女神様にもどの程度ましになったのかは読み切れない、という事ですか?
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
その認識であっているわ。最悪の状況が精神崩壊寸前として、少しましになった程度なら、そう大差ないとも言える。私の見た限りでは大丈夫そうだったけれど、それでもそれなりにショックは受けていた様子だったから、それが後でどんな影響を及ぼすのかわからないところが心配ね。
◇
質問に答えないどころか話を逸らし、あまつさえ脅すかのような書き込みまでして、サド疑惑さえ浮上しかかった女神様だったが、実はヨシュアに甘々な、いつも通りの女神様である事が判明した。
ようはアカシックレコーディング的な事をした際に、エルダーヴィード家の家庭環境を調べるためには、避けては通れない自分の出生の秘密を知り、ヨシュアが自我崩壊しかける可能性の世界を垣間見た女神様は、受けるショックが少ないであろう転生方法を選んだだけではまだ心配で堪らず、あわよくば知る事を諦めさせ、それが叶わないならせめて心構えだけでも身につけさせたい、と必死だったのである。
どれだけ過保護なのだろうか?
母親か?
いや、きっと女神様がここまで心配するくらい、そのヨシュアは酷い状態だったのだ。
ヨシュアは女神様の書き込みを見て、逆に教えて貰う事を決意した。
ここまで心配してくれる女神様だからこそ、危険があるという警告と同じように、見た限り大丈夫そうだった、という判断もまた信じられると思ったからである。
◇
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
……聞かせてください。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
そう。覚悟ができているのなら続けるけど、心を強く持つのよ? 良い?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
はい。心配していただいてありがとうございます。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
まず祖父母のファーゴとモルガン。そして二人の一粒種であるミシェル。そのミシェルとファーゴの腹心の部下であり、魔術師でもあるバークレイを婚姻させて、生まれた子供が長男のスタンレーと次男のマーヴィン。そしてあなたを含めた七人が、エルダーヴィード家の家族構成。ここまでは良いわね?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
はい。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
そして問題の家庭環境だけど、ミシェルとバークレイの夫婦仲は冷え切っているわ。原因は、あなたの出生の秘密に由来する。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
え?
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
選ばなかった未来でもそうだったのだけれど……
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
待ってください。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
え? 何? どうしたの?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
その選ばなかった未来の話も、聞かせて貰えませんか?
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
何を言っているの? ヨシュア。選ばなかった未来の事なんて、無理に知る必要はないでしょう?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
俺はそうは思いません。ましな方の未来を選んだという事ですが、比較対象がなければどうましなのかがわからないので、女神様に感謝のしようもありませんので。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
そんな理由なら、ますます知る必要はないわね。だって、私は別にあなたからの感謝なんて望んでいないもの。そんな事でわざわざ危険を冒す必要は全くないわ。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
いえ、必要はあると思います。何しろ今日、三年も記憶が戻らなかった事を知った時には、女神様に騙されたんじゃないかと疑いかけましたから。
後で女神様が俺のために八方手を尽くしてくれた事を知って、かなり反省しましたけど、未だにそのありがたみを、充分に理解できているとは言い難いです。また女神様を疑って後悔するのは嫌なので、如何に普段から世話になっているのかを知る事は、決して無駄ではないと思います。
それに女神様の言葉通りに、現在がその転生方法を選んだ未来ではないのなら、聞いても所詮は他人事ですし、実際に我が身の事であるその未来と、同じショックを受ける事はない筈です。それなら、女神様が見た限りでは大丈夫そうだった、という現在の俺の出生の秘密と、危険度でいえばそう大差はないんじゃないですか?
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
むっ……。なんだか言いくるめられている気がしないでもないけれど、確かに一理はあるかしら? さっきもう止めないと約束したのだし、これ以上は止めるべきではないわね。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
重ね重ね、ご厚意を無駄にしてすみません。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
そう思うのなら……いえ、これ以上は不毛ね。それでは、もう一人のあなたの出生の秘密を教えましょうか。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
お願いします。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
三年前の今日。エルダーヴィード家に悲劇が起きた。待望の三男の死産、という悲劇が。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
……え? えっ? 待ってください。死産? 死産って……。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
生まれてきた赤ん坊が、既に死亡していて息をしていない事。または生まれた瞬間には生きていても、その直後に死亡する事よ。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
……死? 死んだ? 俺、一度死んでいるんですか?
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
いいえ? 死んでないわよ? あ、ごめんなさい。一度は死んでいたわね? 転生前にだけど。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
死んでない? でも今死産だったって……。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
ええ、死産だったわよ? エルダーヴィード家の三男はね?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
どういう事ですか?
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
どういう事も何も、あなたを転生させる方法の一つは、アカシックレコードに記された、予め死産である事がわかっている赤ん坊の死亡を待って、そのまま輪廻の輪に戻る魂と、条件に合致する転生者の魂を入れ替える事だもの。何の不思議もないでしょう?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
――なっ!?
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
そんなに驚く程おかしな方法? だったらどんな方法での転生なら納得するの? この世界にも、あなたの生まれた地球と同じく、新たな生命の誕生が決まった瞬間には、その器を得る魂が、輪廻の輪の中から選ばれるシステムがあるのよ? 元々この世界に存在しない、転生者の魂が割り込む余地なんて、一体何処にあるって言うの?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
それは……そうですね。転生者なんて、世界からすればイレギュラー極まりない存在でしかない。最初から想定していないものを割り込ませるんだから、それは普通の方法では無理なのは当たり前の事ですよね? 話の腰を折ってしまってすみません。続きをお願いします。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
ええ。結論から言えば、先に述べた通りの方法で三男は蘇った――事になった。死亡するからには、それなりの理由がある。けれどそれは、私が癒せば良いだけの事。そうして、死産という悲劇に嘆き悲しんでいた彼らは、突然息を吹き返して産声を上げ始めた赤ん坊に驚愕して、それでも起きた筈の悲劇が、なかった事になった奇跡を素直に喜び合った。ただ一人、バークレイを除いては……。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
バークレイ? ……確かミシェルの夫の?
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
ええ。バークレイはエルダーヴィード家お抱えの魔術師で、朧気ながらも、自分以外の人間の魔力保有量を感知できる能力があった。だから不幸にも気づいてしまったのね。妻の胎内に居た時の我が子と、蘇生後の我が子の魔力保有量が桁違いな事に。
生物の魔力保有量は魂と密接な関係があって、基本的には生涯変わる事がないの。その事を踏まえた上で、ヨシュアがバークレイの立場ならどう思うかしら? 我が子の死産を悲しんでいたら、突然息を吹き返した上に、その子供が自分よりも圧倒的に魔力量が上だったら。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
……えっと、生まれてきた自分の子供は、本当は死産だった筈なのに、その体を自分以上に圧倒的な魔力を持った、正体不明の存在が乗っ取ったと思う? しかも周囲には、子供の蘇生を喜んでいる人間しかいない以上、自分以外の誰一人としてその事実に気づいていない? え? なにそれこわい。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
そういう事ね。無理もない事情で恐怖に表情を強張らせるバークレイを、更に間の悪い事にミシェルが目撃してしまった。彼女にしてみれば、失ったと思って嘆き悲しんでいた愛しい我が子が、奇跡的に蘇った事を心の底から喜んでいた訳よね。周囲では両親が同じように喜んでくれていて、取り上げてくれた産婆でさえ、初めて体験する奇跡に驚きながらも、笑顔で祝福してくれている。夫ともこの気持ちを分かち合いたいと思ったとして、一体誰に彼女を責められるかしら?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
……まあ、そうですよね。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
だというのに、視界に飛び込んできたのは、恐怖に表情を強張らせた夫の姿。しかも、何やら恐ろしいものでも見るような目で、愛しい我が子を凝視している。喜びに水を差されて失望したミシェルは、元々親に言われてしただけの、望んだ結婚ではなかった事もあり、バークレイへの気持ちが完全に冷めてしまった。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
ああ……これはきつい。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
生まれつき体が弱かったミシェルは、案の定と言うべきか産後の肥立ちが悪く、これを理由に、王都の本宅からアロドクトゥスの別荘に移り住んだ。まあ、事実上の別居よね。
バークレイはヨシュアを恐れて会おうともしない。二人の兄達も両親の不仲に心を痛めていて、家庭内の空気は息苦しさを伴った。このままでは幼子の成長に差し障りがあるだろう、というファーゴの決定で、あなたは世話係のエレミアをつけられて、母親の居る別荘の離れに居を移す事になったという訳。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
…………。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
さて、これが大まかな説明だけれど……大丈夫よね? 自分とは違う立場の話だって、きちんと理解できている?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
……はい。大丈夫です。女神様に、事前に心の準備をさせて貰えたおかげで、なんとか受け止める事ができました。自分の中で整理するのに、もう少し時間はかかりそうですけど、何とかもう一人の自分の心境も、理解できたと思います。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
そうなの? ……ねえ、もし辛くなかったらで良いのだけれど、どうしてあんなにショックを受けたのか、教えて貰えないかしら? 何故あんな……精神崩壊しかける程のショックを受けたのか、いくら考えても理解できなくて。やっぱり私は人間ではないから、本当の意味であなたの気持ちを理解してあげる事はできないのかしら?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
いえ。それは単に俺が人一倍精神的に脆かったという、ただそれだけの話ですから。他の人間であれば、気にも留めないのかもしれません。
本当に……もう少し精神的に強いものだとばかり自分では思っていたんですが、まさかここまで弱いとは……。エルダーヴィード家の成り立ちを知った時に、祖父の非道な行いを知ってもなんとも思わなかったのは、自分とは関わりのないところで起きた、飽く迄も他人事だったからなんだと、つくづく実感しましたよ。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
ああ、それは仕方のない部分もあると思うわよ? 体が若返ると、精神も引きずられて幼くなる傾向にあるから。まあ、あなたの場合は、自分でも自覚があるでしょうけど、実年齢の割には幼いところがあったから、転生して幼児になった結果、更にそれが顕著になったという事よね。
◇
ずばりと指摘されてしまった。
まあ、反論の余地はない。
社会人として生活していたものの、根が暗い上に性格も内向的であり、オタクと言われても否定できない趣味もあった。
そんな人間だったので、数少ない友人も同種の人間ばかりであり、学校や職場でも授業や業務を終えると、寄り道一つせず真っ直ぐに帰宅し、趣味に没頭する毎日を送っていたのだ。
上司や同僚と飲みに行って色々な話をし、旅行に行ったり様々な経験をしたり、などといった人生経験には乏しく、同年代の人間に比べると、精神的に幼いという自覚はあった。
その上、極度のストレスがかかったとはいえ、あの幼児退行である。
これでそんな事はないなどと否定したところで、説得力など皆無であろう。
◇
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
……うっ。成程、そういう事ですか。それなら納得が行きます。……あっと、そうだった。もう一人の自分が、今の秘密を知ってどう感じていたのか、という話でしたよね? 客観的な立場からの推察ですが、それでも良ければ。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
ええ、それで充分よ。お願いするわ。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
まず転生方法についてですが……女神様の説明で、そういうものだと納得はしましたが、抵抗がないかと言えばそれはまた別の話でしょう。厳密には死体ではないのかもしれませんが、他人のために用意された器であり、本来の持ち主は既に死亡している訳です。
後は葬られるだけの体ですし、女神様が死亡原因を癒してくれた訳ですから、有効活用と言えなくもないのでしょうが、まるで自分が悪しき存在にでもなって、死んだ赤ん坊の体を乗っ取ったような……もしくは赤ん坊の生皮を剥いでその中に潜り込み、赤ん坊に擬態してでもいるかような、そんな悍ましさとでもいうようなものを感じた事は確かです。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
……読んでいて気分が悪くなってきたわ。良くそんな事を思いつくわね?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
オタクの妄想力ですので。ご苦労をおかけしておいて、大変失礼な事だというのは自覚しています。ご不快なようでしたらやめますが?
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
いえ、どう感じるかは相手次第だもの。あなたはそう感じたという事なのでしょう? 気持ちを理解したいと書いたのは私なのだから、どうぞ続けて?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
はい。正直なところ、俺は驕っていたのだと思います。女神様の話を聞いて、自分がこの世界を滅亡の危機から救うのに、一役買った救世主にでもなった気分で。
俺のお陰で救われた世界なんだから、理不尽に誰かを虐げるつもりはないけれど、誰にも邪魔される事なく、好きに生きても許される筈だ、って。実際には、マナの運び屋くらいしかしていないんですけどね?
その気持ちは今も大して変わらないけど、誰に恥じる事なく、大手を振って生きられる気分ではなくなった事は確かです。何しろ自分の転生が原因で、幾人かが不幸になる可能性がある事を自覚しましたから。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
それはヨシュアが悪い訳ではないでしょう? あなたのおかげで世界が救われたというのも事実だし、あなたが罪悪感を感じる必要は全くないのよ。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
いえ、転生を受け入れた時点で、俺にも僅かながら責任が生じています。
自分の転生が原因で、自らの死をなかった事にされて、悲しんでも弔っても貰えなかった実子。
その事に気づいていながら、誰にも信じて貰えない事を理解して恐怖で口を噤み、実子もミシェルからの愛情も失ったバークレイ。
誤解して夫に失望してしまった、病弱なのに自分の体を生んで、長い間産褥病に苦しむミシェル。
両親の不仲に心を痛め、重苦しい空気の中で生活しているという、スタンレーとマーヴィン。
ファーゴとモルガンも、その事を気に病まない筈がありません。自分の転生で不幸になった者が七人もいる。もう一人の自分には、かなりショックで、罪悪感を感じる秘密だったのではないでしょうか?
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
…………。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
それでもまだ、自分が本当にその家の子供なら良かったのですが、実際にはカッコウの托卵のように、実子の魂を蹴落としてなりすました偽者であり、祖父母や母親からの愛情を実感すればする程、欺いているという後ろめたさから罪悪感に苦しむでしょう。
それで青褪めて震えていたのだと思います。マグを放り出したというのは、おそらく水鏡に映った自分の顔を見て、肉体を奪った相手である実子が、自分を恨めしそうに見ているかのような妄想にでも憑りつかれたのではないでしょうか? その恐怖とあまりの悍ましさに、吐き気を催して嘔吐。そんな現実に絶望して泣き喚いたあたりで、女神様の推測通り、体が無理矢理意識を落としたのではないかと推察しました。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
……そう。あの子はそんな気持ちに苦しんで、それであんなにも泣いていたのね。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
まあ、俺の内心の事はわからないまでも、その苦しみようを見て、女神様が違う転生方法を選んだ時点で、その未来はなかった事になったんですよね? 飽く迄も起こりえた可能性の未来であって、現在とは違うからこそ、俺もなんとか他人事のように消化できている訳です。だったら、女神様が気に病む必要はないんじゃないですか?
それよりも、まだ話は終わっていませんよね? 今とは違う未来の話を知りたかったのは、それと比較して、現在がどうましになったのかを知るためなんですから。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
ああ、そうだったわね? それではその未来とどう違うのか、比較してみると良いわ。もう一つの転生方法……それは半分人間ではなくなる、というものよ。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
……は? えっ!? 俺、人間じゃないんですか!?
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
ええ。厳密にいえば人間でもあるけど、ただの人間じゃないわ。そして更に、今度は父親がバークレイではないの。ね? 前とは違うでしょう?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
……わけがわからないよ。どういうことだってばよ!?
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
つまりね? バークレイとミシェルの間にできる子供が死産なのは、もはや私にさえ変える事のできない運命なのよ。それでもヨシュアにその体を与えたいのなら、胎内で死ぬ前にその体を癒して、魂を入れ替えるしかないのだけれど、そうすると今度は、私の手であなたのために、その胎児を殺めた事になるでしょう?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
うっ、それはちょっと……。今度こそ耐えられないかも。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
そうね。私も死ぬ運命にある胎児を、あえて見殺しにする事には辛うじて耐えられても、自分の我欲のために、何の罪もない命を奪う事には耐えられそうもないわ。そんな訳でそれがまずいのなら、二人の間に子供ができないようにしてしまえば良い、という事ね。具体的には忙しくてそんな暇もなくしたり、タイミングが合っても、どうしてもそんな気分ではなくなってしまったり。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
成程。逆転の発想という訳ですか。でもそれだと、結局は俺も生まれないのでは?
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
ヨシュアは考えた事ない? 誕生した命に既に魂があって、転生者が割り込めないのなら、神が体を作れば良いんじゃないか? って。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
ああ、それは考えましたね。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
それでは駄目なのよ。だってそれもう完全に人間じゃないもの。神の作った、人間ではない別の何かでしかないわ。人間は人間の親から生まれてきて、初めて人間であると周囲に認められるんじゃないかしら? 地球には、果実から生まれた人間が居たらしいけれど、周りはその子を本当に人間扱いしていたの?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
モモタロサンェ……。まあ、確かにそうですよね。あれは御伽噺だから許されるんであって、現実に居たら気味が悪いですからね。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
それでね? 色々考えたんだけど、実は地球に前例ともいうべき話があったのを思い出したのよ。確か、イエス・キリストの生誕?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
世界一有名な聖人の生誕と一緒にするなんて! そんなキリスト教を敵に回しかねない発言は、やめてくださいしんでしまいます。俺は決してそんな偉大な存在ではありません。だからキリスト教徒の皆さん、許してくださいお願いします。……しかし、そうきましたか。確かにあの方は人間でもありますからね。つまり、母はバークレイとの性交渉なしで俺を身ごもったと?
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
ええ。まず受胎告知を行って、ミシェルに私の力で、ヨシュアを身ごもる事を告げたの。そしてミシェルがそれを受け入れて、処女懐胎……ではないけど、男女の交わりなしに、あなたを身ごもったという訳。
あなたの魂を、私の力でミシェルに受胎させたから、あなたは紛のない、ミシェルの血の繋がった息子であり、ファーゴとモルガンの孫。そして兄達二人にとっても、同じ母親から生まれた弟という訳ね。
これであなたが気に病んでいたであろう、実子の体を乗っ取った、という負い目を感じずに済むでしょう? ただ、本来夫が補うべき部分を私の力で補ったので、既にただの人間とは呼べない、半神とでもいうべき存在になってしまっているの。これが欠点の一つ。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
半神って……。えっ? 一つ? という事は他にもまだ何か?
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
ええ。選ばなかった未来でもそうだったのだけれど……の辺りで、あなたがその未来の話も聞かせて欲しいと望んだから、先にその話をしたのよね? つまりどちらの未来でも夫婦仲は悪くて、その原因があなたの出生の秘密にある、という点には変わりないのよ。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
ああ、確かにそのような内容を読んだ記憶はありますね。……しかし、そうですか。結局どちらの未来でも、俺が生まれた所為で夫婦仲が悪くなり、ひいては家の中の空気が悪くなるのは変えられないんですね。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
……ごめんなさい。私の書き方が悪かったわ。どちらの場合も、あなたの出生の秘密が原因で不仲になってはいるけれど、別段あなたが生まれた所為で、関係が冷え込んだという訳ではないわ。
元々恋愛結婚ではないがために、お互いの結びつきが弱く、些細な事で関係が拗れる夫婦だったという、ただそれだけの事ではないかしら? 夫婦間の問題にまで、あなたが責任を感じる必要はないのよ?
……まあバークレイにしてみれば、自分には全く身に覚えがないのに、ある日突然妻の妊娠が発覚して、妻を問い質してみれば、この子は女神様から授かった子供だ、などと妄言を吐く始末。挙句性質の悪い事に義父までもが、自分も女神様に啓示を受けて、生まれてくる子供の面倒をよろしく頼まれた、などと言って浮かれている。あなたがバークレイならどう思う?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
女神様何してんすか!? バークレイいじめか!? じゃなくて、えっとバークレイの気持ち……まあ、面白くはないでしょうね。浮気を疑うかもしれませんけど、証拠はどこにも存在しないんですよね? そんな事実はない訳だから。少なくとも生まれた子供に、妻の子供だから、と愛情を注ぐ事は難しいんじゃないでしょうか?
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
まあ、そうなるわよね? 無理もない事だけれど。結局バークレイは、あなたを不義の子の如く扱い、夫に信じて貰えずに傷ついたミシェルは、静養を理由に別荘に移り住み……とまあ、後はもう一つの未来と変わりないわ。どうかしら? 半分人間をやめてしまっているけれど、こちらの方が少しはましでしょう?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
確かに。話を聞いただけでも、もう片方は大分衝撃的でしたからね。それに半神と言っても、会った事すらない神が父親だというんじゃなくて、女神様が父親の代わりを果たしてくれたという事なんでしょう? つまり俺は、女神様と母の間にできた子供、という訳ですよね? それなら特に抵抗は感じませんし、こちらの方で良かったと思います。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
そう? それは良かったけれど……私父親代わり? あなたが自分の子供になるのは良いけれど、私女神なのに、男扱いって納得がいかないんだけど?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
すみません。でも実際に俺を産んだのは母じゃないですか? そうなると残る父親役は、女神様しか居ませんよね? まあ、飽く迄父親の役割を果たしたというだけであって、実際には母親が二人居るようなものだと理解していますから。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
……まあ、そういう事であれば納得しておくけれども……。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
そうしてください。ああ、すみません。後もう一つだけ。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
何です? 刑事さん。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
いや、刑事コ〇ンボの真似じゃありませんからね!? つか古いな? 何で女神様が知ってるんです? そうじゃなくて、母は今もここの別荘で療養しているという話ですが、普通産褥病って、そんなにも快癒するまでに時間がかかるものなんですか?
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
ああ、その事? まああなた達男性や、同じ女でも出産経験のない私には、いまいちわからないけれど、産褥というものは個人差はあるにしても、かなり大変なものらしいわね。
出産時に母体が受けるダメージを、自動車事故の衝撃にたとえるくらいだもの。無事に出産を終えたとしても、暫くは立ち上がる事さえできない場合もあるらしいわよ? 健康なスポーツ選手でさえ、完全に出産前と同じコンディションに戻るまでには、二年くらいはかかったという人も居るし。
ましてや元々体の弱いミシェルの事だもの、感染症や合併症も考慮に入れれば、三年くらい臥せっていたとしても、何らおかしくはないんじゃないかしら?
無理を言っているのは私だから、神の力で特別に何の痛みもなく出産を終えられて、次の日には動けるようにする事も可能だって言ったのだけれど、「苦労して命懸けで産むからこそ、母親は我が子を愛おしむ事ができる。なんの苦労もなく簡単に済んでしまったら、自分の子供を、大切に思えないかもしれない事が何より恐ろしい。だから他の母親と同じように、自分の子供として産ませて欲しい」って断られてしまったのよ。
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
そうですか。母はそんな事を……。わかりました。どうもありがとうございます。長い時間おつき合いいただいてすみません。お陰で知りたかった事を知る事ができました。
名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~
どういたしまして。また何か聞きたい事があれば、何時でもどうぞ?
名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~
ありがとうございます。その時はよろしくお願いします。それでは……。
◇
予想よりも大分時間がかかったが、目を閉じて使うスキルのおかげか、地球のネットと違って眼球を酷使しないので、眼疲労はない事がヨシュアにはありがたかった。
ゆっくりと瞼を持ち上げると、庭に植えられた木々の間にロープのような物がかけられ、そこにたくさんの洗濯物が、風にはためいているのが見える。
どうやらこちらが【ネット】に集中している間に、働き者のエレミアが、洗濯した衣類などを既に干し終えていたらしい。
しかし当の本人の姿は庭にはない。ヨシュアがきょろきょろと辺りを見回していると、タイミング良く屋内からエレミアが現れた。
向こうも椅子の上で身を起こしているヨシュアに気づいたのか、ゆっくりと歩み寄ってくる。
そして目の前で立ち止まり、一礼した。
「長い時間お一人にしてしまって、申し訳ございません。坊ちゃまが良い子にしていてくださったお陰で、どうにか明日の分の洗濯も、早めに終える事ができました。ありがとうございます」
「あ、うん。それは良いけど……大丈夫? 今まで休憩もなしで洗濯していたんでしょう? 疲れてない?」
「まあ……! お気遣いありがとうございます。坊ちゃまのそのお優しいお言葉だけで、疲れなど吹き飛んでしまいました」
「いや、それは気の所為だよ? 普通言葉をかけられたくらいで、疲労は回復したりしないからね? 休憩も仕事のうちなんだし、空いている椅子に座って暫く休んだら?」
大事な世話係の体を気遣い、休憩を取るように勧めるヨシュア。
その心配そうな表情に折れたのか、エレミアは空いている椅子に腰かけた。
「ありがとうございます。それではお言葉に甘えて、少しだけ休ませていただきますね? ですがそろそろ太陽が真上に来ますので、何時大旦那様や大奥様がお見えになられてもおかしくありません。その場合はすぐに席を立たせていただく事になりますが、どうかご理解ください。使用人が主人と席を同じくするのは、決して外聞の良い事ではありませんので……」
「えっ? もうそんな時間?」
慌てて目を閉じてスキルを発動し、新しいタブを開いて時刻を確認すると、確かに午前十一時をまわっていた。
初めて時刻を確認したのが七時四十二分。
その後朝食と入浴、歯磨きを済ませて庭に出てから、随分時間が経っていたようだ。
しかしエレミアが二日分の洗濯を既に終えているのだから、時間的にはそれくらい経っていても何らおかしくはない。
ヨシュアはエレミアの言葉に頷き、二人はほんの束の間だけ、平穏な時間を過ごすのであった。
今回一番の被害担当:バークレイ。 他の人間も酷い目に遭っているが、どちらの展開でも最も救われないこの男が一番酷い。というかむごい。
バークレイ「雑っ! 扱い雑っ!」
仕事が年末年始スケジュールのためシフト等が大分タイトになっており、中々執筆の時間が取り辛くなっております。もしかすると一月は投稿できない可能性もありますが、合間を縫って執筆は続けますので、見捨てずにいていただけると喜びます。それではメリークリスマス&本年は大変お世話になりました。来年もまた宜しくお願い致します。良いお年を!
※5/23 加筆修正。