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2-5 「商会」





 休憩きゅうけいを終えたエルダーヴィード家の一行が現在居るのは、第一区画でも特に立地りっちに恵まれた一等地いっとうちに大きな店舗てんぽかまえる、この都市随一(ずいいち)名高なだかい大商会、<エイベルクラフト商会>の前である。


 先程さきほどデパートにたとえた、エルダーヴィードの別宅べったくと同じくらい広い売り場には、ひっきりなしに買い物客達がい、従業員達がてんてこ舞いしながら対応に追われていた。


 ここまで盛況せいきょうな理由の説明は実に簡単かんたんである。


 この商会こそ、ヨシュアの作らせた王室おうしつ御用達ごようたしえいよく商品群しょうひんぐんを、唯一ゆいいつ販売する事を許された、エルダーヴィード家傘下(さんか)の商会だからであった。


 そんな商会の会頭かいとうつとめるエイベルは、ファーゴのおさな馴染なじみであると同時に、兄弟きょうだいさかずきわした弟分でもあるのだと言う。


 となればくだんの商品を任せるにる、もっとも信頼のおける商人として彼に白羽しらはの矢が立つのは、二人の関係を知る者にとってはまで予定よてい調和ちょうわのうちであり、この大ヒット商品を取り扱う商会が、一等地に広大な店舗を構えられる程の大成功をおさめる事もまた、当然とうぜん帰結きけつに過ぎなかったのである。


 それはエイベル個人の能力とは一切いっさい関係のない、人脈コネクションの力によるものだ、というのが競合きょうごうする大半たいはんの商会にとっての真実しんじつであった。


 まあ本人に言わせれば、運や人脈といった要因よういんもまた、その人間の持つ能力の一部いちぶにはちがいなく、それ以外に差などないと主張しゅちょうするのは、所詮しょせん持たざる者の負け犬の遠吠とおぼえに過ぎない、といったところだろうが。


 そのような経緯けいいもあり、この商会の人間にとってエルダーヴィードの一族とは、決して足を向けて寝られない相手の筆頭格ひっとうかくである事は言うまでもない。


 ゆえにこちらの来訪らいほうに気づいた従業員が、即座そくざみずからの業務ぎょうむ中断ちゅうだんし、慇懃いんぎん態度たいどで応接室へ案内すると共に、人数分の茶を用意した後、平身へいしん低頭ていとうしながら、


「ただいま別の者が会頭を呼びに行っておりますので、大変申し訳ございませんが、今しばらくお待ちください」


 と言い置いて部屋を出て行ったのも、無理からぬ反応はんのうというものであったのだろう。


 ともあれ、店の人間が去った後の応接室では、すすめられた長椅子ソファーに腰掛ける、多くの人間が手持ても無沙汰ぶさたになってしまった。


 来客のマナーとしては、待っている間(だん)(しょう)している事も好ましくないため、勧められた茶に口をつけるか、稀少きしょう価値かちの高そうな装飾品そうしょくひん数々(かずかず)を、ながめるくらいしか選べる選択肢せんたくしがなかったのである。


 ただ、ヨシュアはその気になれば【ネット】でいくらでも時間をつぶせたし、その息子の預言通りに、てもめても服飾ふくしょくデザインの事が頭からはなれなくなってしまったミシェルなどは、装飾品や絨毯じゅうたんがらからも、新たなデザインのインスピレーションを得られるかもしれない、と真剣しんけんきわまりない表情で周囲しゅうい観察かんさつしていたのだが。


「申し訳ございません! 大変たいへんお待たせいたしました!」


 だからだろうか?


 そう言いながら飛び込むような勢いで入室してきた、金髪緑眼の男が深々(ふかぶか)と頭を下げた時も、とがめるような視線を向ける者は誰一人として居なかったのは。


 ふかみのある色合いろあいのジャケットを着こなす初老しょろうの男は、充分な間を置いた後顔を上げる。


 そして室内にもかかわらず、白いローブのフードを目深まぶかかぶったままの、どうひいに見たところで、礼をしっした状態である事は否定できない、そんな少年の姿を発見して目をみはった。


 やがておどろきから立ち直ると、怖がらせないようにという気遣きづかいからか、ゆっくりとした足取あしどりで彼の元へとあゆり、視線を合わせて恐る恐るうかがうように問い掛ける。


「あの……間違っておりましたら謝罪をさせていただきますが、もしや末弟まってい様であらせられますでしょうか?」


 問われたヨシュアは渋々といった様子でフードを持ち上げると、少女と見紛みまごうばかりの容貌ようぼうあらわわにし、その金の双眸そうぼうで男を見つめ返した。


「名前はヨシュアだけど、呼び方はそれで良いよ」


 商売のイロハを教わったであろう師、マニにあまりにもうりふたつなその容姿にいきんだエイベルは、彼がそう告げた後もしばらくほうけていたが、はっと我に返るとその場に膝をつき、深々(ふかぶか)こうべれる。


「お初にお目にかかります。この商会で会頭をしております、エイベルと申します。末弟様におかれましては日頃ひごろより格別かくべつのご高配こうはいたまわりまして、感謝の念にえません。にもかかわらず、本来であればこちらから出向でむかねばならないところを、多忙たぼうを言い訳に努力をおこたったがために、こうしてご足労そくろういただいた今日こんにちまでご挨拶あいさつおくれました事、弁解べんかい余地よちなく私の不徳ふとくいたすところであり、まこと面目めんぼく次第しだいもございません。何卒なにとぞ寛恕かんじょいただけますよう、お願い申し上げる次第でございます」


 幾人いくにんもの部下をかかえる立場たちばの男が、自分の孫程も年齢の違う子供に対して、頭を下げて許しをう。


 そんなどちらがこの商会のおさかわからなくなりそうな光景こうけいを前に、女性陣はたまれなさそうに身動みじろぎしているが、当の本人はといえば、そうしたエイベルの姿を、特に何の感慨かんがいおぼえていなさそうな表情で見下みおろしていた。


「過ぎた事に対して、今更いまさらつらつらと言い訳や謝罪をする事に何の意味があるの? どう足掻あがいたところで、過去の失敗をなかった事になんてできないんだよ? そんな無駄むだ行為こうい労力ろうりょくひまがあるのなら、過去の失点は今後の働きで取り戻します、くらいの気概きがいは見せられないの?」


「は……ははっ! 恐れ入りましてございます。誠にごもっともなご意見で、返す言葉もございません。この上は言葉ではなく行動をもちまして、末弟様のお役に立てるよう、尽力じんりょくさせていただく所存しょぞんでございます」


「その言葉、信じるからね? 確かにこの耳で聞いたから、決して忘れないように。もしそのちかいにそむいたら、僕の怒りを買う事になるよ? その結果この商会がどうなろうと、僕はいっさい関知(かんち)しないから、そのつもりで居てね?」


「はっ。ご忠告ちゅうこく感謝いたします。誓いに背く事のないよう、きもめいじます」


 当初とうしょごこの悪そうだった女性陣も、しばらく時間を置いたお陰か、ようやくこの状況にもれたらしい。


 本人達はおお真面目まじめにやっているつもりでも、はたから見るごっこ遊びにしか見えない二人のやりとりを、口許くちもと苦笑くしょうたたえながらながめている。


「よろしい。だったら早速さっそく僕の役に立ってもらおうかな? 当たり前だけど、僕が今日この店にきた目的は、別にエイベルに挨拶するためじゃないんだよ。僕の誕生日プレゼントを、じいじに買って貰うためなんだ」


「なんと! 本日は末弟様のお誕生日でしたか!? 確かお生まれになったとうかがったのが神世しんせいれきの三年……という事は今年で十歳になられたので!? いや……ついこの間の事のような気がしておりましたが、もう十歳になられるとは……。月日が流れるのは誠にはようございますな? ですが、それは大慶たいけいに存じます。つまり本日のご用向ようむきは、この良き日に末弟様におくられるプレゼントの購入先として、当商会をお選びいただいた、という認識にんしきでよろしいでしょうか? ……ありがとうございます。そういったご事情じじょうでしたら、ますます気合いを入れ直して、お役に立てるよう尽力しないといけませんな」


 精一杯せいいっぱいえらぶって見せる少年にそう告げられたエイベルは、一頻(ひとしき)り驚きの声を上げた後で立ち上がり、汚名おめい返上へんじょうする好機こうき到来とうらいした、とやる気に鼻息はないきを荒くした。


 だがそこで何気なにげなく周囲を見回したさいみずからがおかした更なる失態しったいに気づいてしまう。


 これまで不義理ふぎりを働いてきた、ヨシュアに許しを請う事に必死ひっしになるあまり、他の同行者に対する挨拶あいさつが、いまだにんでいないという事実にようやく思いいたったのである。


 やる気に紅潮こうちょうしていたほほが、みるみるうちに蒼褪あおざめて行くその様子に、嘆息たんそくらすヨシュア。


 それは自分の用件ようけん後回あとまわしにされる事をさっしてしまったが故の、ぶんていねんふくんだ、そんなため息であった。





 子供でなくとも非常ひじょう退屈たいくつな挨拶の応酬おうしゅうが終わり、やっと本日の主役であるヨシュアへと、ふたた注目ちゅうもくが集まってくる。


「それで兄者あにじゃ? 末弟様へのプレゼントをお探しとの事ですが、具体的ぐたいてきにはどういった品をお探しなので?」


「うむ。それがな……私達も聞いてはみたのだが、買う時まで秘密だ、と言ってがんとして教えてはくれんのだ。だから正直なところ、ヨシュア君以外に、ヨシュア君の欲しい物を把握はあくしている者は誰もおらん。どうせ買う時には否応いやおうなくわかる事を、殊更ことさらこの子の機嫌きげんそこねてまで、しつこく追求ついきゅうするような人間が私達の中に居ると思うか?」


「……成程なるほど左様さようでございましたか。であれば直接ちょくせつたずねするよりほかありませんな。……それでは末弟様? お探しの物は何であるのか、この私めにお教えいただけますでしょうか?」


「良いよ? あのね? 僕が探しているのは、奴隷ペットなんだ」


 ――振り仮名(ルビ)がクズい!?


 と女神様であれば思わず突っ込んでいるところかもしれないが、生憎あいにくとここは現実世界であってネット掲示板けいじばんではないため、ツッコミ不在ふざいのまま話が迷走めいそうしかけた。


愛玩動物ペット、でございますか? 生憎当商会では、動物の取り扱いはしておりませんが……」


「……ああ。この言い方じゃ伝わらないのか。えっと……言い直すとこの商会に居る奴隷を見せて欲しいんだ。もし必要があれば、こちらから足を運んでもかまわないから」


「ど、奴隷? あ、ああ。ペットとはそういう……かしこまりました。当商会で扱っております奴隷をお見せすればよろしいのですね? でしたらまず、奴隷のくわしい情報をまとめたリストを持って参りますので、皆様はお掛けになったままでお待ちください」


 ようやく理解がおよんだのか、納得なっとくの声を上げたエイベルが、そう告げて中座(ちゅうざ)する。


 少年が奴隷を愛玩用ペットとして購入するつもりだと、この場で初めて知らされた保護者達の反応は、当然ながら様々(さまざま)であった。


 十歳とは思えないクズい思考しこうに引く者、あきれる者、不安ふあんな表情を見せる者、そして鷹揚おうように笑みを浮かべる者。


 それぞれ誰の反応なのかはご想像にお任せするが、そのほとんどが否定的ネガティヴなものである事だけは確かであった。


 だがある程度とはいえ保護者からの心証しんしょうを気にする彼であっても、これに関してはゆずれない部分にあたるらしく、妥協だきょうするつもりは一切ないようだ。


 たとえ誰に何を言われようと翻意ほんいしない、という確固かっこたる意思いしのぞかせるヨシュアに対して、保護者達は早々(そうそう)にこれは無理だ、と説得をあきらめるよりほかなかったのである。


 リストが届くまでの間、ヨシュアは今朝けさ掲示板に顔を出した時の事を思い返していた。


 いつもと変わらぬ挨拶をするヨシュアに対して、女神様は挨拶の返事もそこそこに、興味津々(きょうみしんしん)な様子を隠しもせずにたずねたものである。





名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~


 おはようございます。


名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~


 おはようヨシュア。十歳のお誕生日おめでとう。……それで? 今年の誕生日プレゼントは、一体いったい何をもらうつもりなのかしら?


名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~


 ああ、その事ですか? 奴隷どれいハーレムですね。


名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~


 ……えっ?


名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~


 ……えっ?


名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~


 ……ちょっと待って? ヨシュア。あなた前に、チートハーレムにはさして興味きょうみない、みたいな発言をしていなかった?


名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~


 ええ、しましたよ? 今もさしてないですし。


名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~


 そうよね? ……え? 興味がないのに手に入れるの? どういう事?


名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~


 ……あー。何やら誤解ごかいがあるようですが……あのですね、女神様? チートハーレムと、奴隷ハーレムはまったくの別物べつものですよ?


名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~


 ……そうなの?


名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~


 そうですよ? チートハーレムものはですね? 運良く恋人や好きな男の居ない、フリーの美女や美少女が、偶然ぐうぜんにも窮地ピンチおちいっているところに、たまたま居合いあわせたオリ主が颯爽さっそうと助けに入る事であっさり解決。


 その主人公に都合つごう良く起きる、ヒロインの誰かと二人きりで危険きけんな場所に転移てんいしてしまったりする困難こんなんを、協力し合い乗り越える事でなかふかめるイベントなどを消化しょうかしつつ、ハーレムを形成けいせい


 意図的わざとかとうたがわしいほど鈍感どんかんだったり、八方はっぽう美人びじん態度たいどをとっても主人公補正(ほせい)で許されて、クサい台詞せりふで愛をささやいて機嫌きげんをとりつつ、毎日のように自分をうばい合って起きる修羅場しゅらばを、「おいおい喧嘩けんかするなよ。ちゃんと順番じゅんばんに相手してやるからさ。な?」などとなだめながら過ごすじゃないですか?


名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~


 え? うん……う、ん? ま、まあ、ものすごい偏見へんけんが入っているような気がしなくもないけれど、だいたいあってる? ……のかしら?


名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~


 俺はそんな女運おんなうんなんて持ってませんし、たとえ持っていたとしても、板挟いたばさみのストレスで胃を悪くしそうなので、是非ぜひとも遠慮えんりょしたいところですね。


名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~


 そ、そう。……ま、まあ? ヨシュアがチートハーレムには全く興味がない、という事は良くわかったわ。ええ。……それで? ヨシュアの中ではチートハーレムと、奴隷ハーレムにはどんな違いがあるのかしら?


名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~


 どんな違いも何も、あいはんすると言ってもごんではないレベルで違いますよ?


 まずチートハーレムものはほとんどの場合、みりょくとチートスキルと、ご都合主義うんでヒロインが集結しゅうけつしてきますけど、奴隷ハーレムの場合、主人公はヒロイン達のピンチを助けるんじゃなくて、金でヒロインを買い集めるんですから。


名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~


 言い方! 奴隷ハーレムものの作者と、それを愛読する読者からの敵愾心ヘイトを集めかねない発言はおよしなさいな。


名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~


 えー? 女神様が俺の中ではどんな違いがあるのか、って質問するから正直しょうじきに答えたのにー。


名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~


 あ、ああ! そうね。そうだったわね? なら大丈夫かしら? きっと極一部ごくいちぶでしかない、少数派しょうすうはの意見として、広い心で許して貰えるわよね? ええ。


名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~


 勿論もちろんですよ。自分も同類どうるいだ、という自覚じかくがなければ、人は大抵の事なら他人ひとごととして笑って受け流す事ができるものです。


 逆に言うと反応してしまうのは、自分に対する批判ひはんとして受け止めている証拠しょうこなんですけどね?


 異性にモテない。しくは異性からの好意を得るために最低限必要な、まめにプレゼントを贈ったり、毎日愛をささやいたり、といった関心かんしんを引くための努力をし続けるのは面倒めんどう。だけどまわりにこのみの異性をはべらせてチヤホヤはされたい。


 そんな虫の良いがんぼうかなえるためには、自分にさからえない、自分好みの奴隷を複数ふくすう人、金で手に入れるのが一番いちばんばやい、という事ですね。


名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~


 ……何故なぜかしらね? その通りではあるのかもしれないけれど、あまりにふたもなさ過ぎる所為せいか、心情しんじょう的には素直すなお肯定こうていしづらいのは……。


名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~


 気の所為じゃないですか? ……話を続けますがこの時注意すべき点は、絶対に奴隷契約(けいやく)解除かいじょしてはならないという事です。


 相手が自分に従順じゅうじゅんなのは、奴隷契約があるからだ、という前提ぜんてい条件じょうけんを決して忘れてはいけません。


 本来ほんらい奴隷などという存在は、人間以下の扱いしかされないのだから、唯一ゆいいつやさしくしてやった自分に、きっと好意を持っているはず


 だったらここで更に奴隷からも解放してやれば、好感度はうなぎのぼりどころか天元てんげん突破とっぱして、「奴隷じゃなくなっても、あなた様のおそばに置いてください」とか言われちゃったりして? ドゥフフ……などとイタかんちがいいをして解放などしてしまおうものなら、せっかく高い金を払って手に入れた奴隷が、次の日あっさりくもがくれ、などという事態じたいおちいりかねません。


 万が一逃げられなかったとしても、それは主人公のもとに残り、生活の面倒めんどうを見て貰った方が楽な暮らしができる、という自己じこ保身ほしん的な打算ださんによるものであり、そこに好意は存在しません。あるのは下心だけです。


 奴隷契約は見方にもよりますが雇用こよう契約に近いらしいですからね。過酷かこくな世界で職を失うのは嫌だ、という意見があってもおかしくはありません。その場合は内心の吐き気をこらえながら、嫌々(いやいや)イチャラブごっこに付き合ってくれる事でしょう。


名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~


 ……成程? 金銭きんせんで女性を買うにしても、そのヒロインを劣悪れつあくな環境から救うため、などの大義たいぎ名分めいぶんがあるのならともかく、奴隷状態のヒロインを購入こうにゅうし、主人にはさからえないのを良い事に、散々(さんざん)好き放題ほうだい真似まねをしておいて、後日ごじつ解放したからといって、好意を向けられる筈がないだろ? と。


 そんな真似まね簡単かんたんにできるようなイケメンは、そもそも最初から奴隷ハーレムじゃなくて、チートハーレム作ってるわ、と?


名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~


 いぐざくとりー、であります。しかも購入後も紳士しんし的にせっし、奴隷扱いせずに即解放してやる事がだい前提ぜんていなのは言わずもがな。


 奴隷ハーレムを作ろうと思うような人間性の持ち主が、自分の好きにして良い、このみのぜんを前に、どれだけ生殺なまごろしの状況にえられるでしょうか?


名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~


 ……あー、大分だいぶきびしそうかしら?


名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~


 でしょうね。しかも欲望に負けて手を出した時点で、ヒロインの中で主人公という存在は、奴隷が主人には逆らえないのを良い事に、立場を利用して女をけがきょうもの下種げす、という評価になるであろう事は言うまでもありません。


 余程よほど都合つごう主義しゅぎ展開てんかいでも起きない限り、一度貼られたこのレッテルを払拭ふっしょくするには、相当そうとう困難こんなんきわめるでしょう。


名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~


 つまりあなたは、二兎にとを追う者は一兎いっとをもず。中途ちゅうと半端はんぱ真似まねをしないで、初志しょし貫徹かんてつするべきだ、と主張したいのね?


名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~


 いえす! ざっつらいと! でございます。チートハーレムを作れる人間はそうすれば良いし、できない人間は金で奴隷ハーレムを買えば良いのです。


 すでにチートハーレムを形成している主人公が、自分に逆らわず、わがままも言わない奴隷ハーレムも所有しょゆうしたい、などと欲をかき、美少女奴隷を購入なんてした日には、何のために買ったの? と、ヒロイン達から問い詰められる事は明白めいはくでしょう。


 ヒロイン全員を納得なっとくさせられるだけの上手うまい言い訳を思いつけなければ、それまでこつこつと積み上げてきたであろう主人公の株(こうかんど)が、大暴落だいぼうらくするであろう事は自明じめいです。


名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~


 それはまあ、そうよね? ただでさえ雨後うごたけのこごと次々(つぎつぎ)えてくる競争相手ライバルに気をんでいるところに、「俺、奴隷ハーレムも欲しい」とか言われて、白い目を向けるどころか「そんな下種なところも素敵!」とか言うヒロインが登場する創作物があったら、さすがにあまりのご都合つごう主義しゅぎに、多くの読者が目をうたがう事()いでしょうね。


名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~


 ええ。チートハーレムというのは、異世界にくる前はリアルの女子にモテた事すらなかった主人公が、チート能力を手に入れる事によって、可愛い彼女ができましたどころか、その世界の男達が放って置かないレベルの美(少)女達が、自分にれてダース単位で押し寄せてくるものでしょう? 当然そのヒロイン達は奴隷ではないので、誰にきょうようされた訳でもなく、みずからの意志で主人公を選んでいる、という点が重要なのだと思うのです。


名前: 女神様@神の座 投稿日時:!”#$%&’=~


 確かに。そして金銭で手に入れる、自らの意志に反しても主人に奉仕ほうしする義務のある奴隷ではない以上、独占欲どくせんよくというものを持つヒロインに、主人公を他のヒロインと共有シェアしてでもそばに居たい、と思わせる程の好意でつなぎ止めなくておかなくてはならないはず


 そんな少しでも下手へたを打てば、何時いつヒロインが離れて行ってしまってもおかしくはないような状況で、女性に軽蔑けいべつされて当然の、美少女奴隷の購入などという暴挙ぼうきょに出るのは、何か自分達に不満でもあるのか? と疑念ぎねん不審ふしんの念を抱かれて、ハーレム崩壊ほうかいの引き金にもなりかねないきょ、としか言いようがないという訳ね。


名前: ヨシュアさん@通りすがり 投稿日時:!”#$%&’=~


 その通りです。つまりはそれくらい、自我を持つ女性が奴隷ハーレムを持つ恋人を受け入れる、なんてあり得ない話なのだと言えるでしょう。


 奴隷ハーレムで純愛イチャラブ(笑)をしようとするおろかさは先にも()べたとおりですし、あっちもこっちも美味しいとこ取り、なんて上手い話、異世界チートを(もってしても困難こんなんだと俺は思うのです。


 そんな訳で、俺は金で奴隷ハーレムを作り、自分が死ぬまで奴隷を解放したりしません。以上が、俺のハーレムという概念がいねんに対する考え方です。





 そんな何処どこにもめるところなどなかった筈の結論けつろんはしかし、ヨシュアにだだ甘な女神様による、「88888(パチパチパチパチパチ)」という書き込みでくくられたのである。

 今回の被害担当:対応した商会の従業員。 仕事の邪魔をされる。


従業員(なんで俺に声かけてくんの? この忙しいのに)


ファーゴ「どうかされましたか?」


従業員「い、いえなんでもございません。それではご案内させていただきますので、こちらへどうぞ」


 お読みいただきありがとうございました。また明日更新します。

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