朝の日常
初投稿です!よろしくお願いします!
2月25日、3話まで少し修正を加えました。
ここは秘境ユグドラの森。この森ではユグドラの神樹と呼ばれる雲を貫く大樹を中心に、摩訶不思議な力を操る獣や悪戯好きな妖精などが棲んでいる。
この非日常の森の中、ぽつんと蔦に覆われた家がある。まるでそこだけ空間が止まっているかのようだ。耳を澄ましてみると家の中から何やら騒がしい声が聞こえてくる。少し覗いてみよう。
「チュウ! チュチュウ! チュウーー!」
「う~んあと少しだけ寝かせてよ」
微睡みの中、頭の霏を投げつけるようにそう返事をしている灰色の髪をもつ、まだあどけない顔の少年が一人と、チュウチュウと何やら騒いでいる光針鼠が一匹。
少年はまるで、この騒いでいる光針鼠の言葉が分かっているようだ。それも親友か何かと感じさせるような雰囲気さえ醸し出している。
おっと光針鼠が動き出した。覗きみるのはここまでにしておこう。
「おいクラウディ! はっは~んお前がそのつもりなら俺にも考えがあるぜ!」
ぼふん…
何かが顔の上にのっている。顔の上に手を置くと少し硬い毛の手触りがする。匂いは柔らかくて安心する太陽のような匂いだ。そんなことを考えていると、こいつまだ起きないのかと聞こえてくる。息苦しくて目が覚めた。
「起きたよマック。だから顔からおりてよ」
「チッしゃあねーな。 この寛大な心をもつ俺に感謝しろよな」
凝り固まった身体を伸ばすように起きると窓から差し込む朝日が目に滲んだ。
目が慣れて来ると円らな青い瞳で不機嫌そうにこっちをみている握りこぶしくらいの光針鼠が一匹。その愛らしい見た目からは先ほどまで人の上で乱暴な言葉使いで騒いでいたとは思えない。
「やっと起きやがったか、お前昨日俺の日光浴に付き合うっていってただろ! 夜光らなくて、女の子からの人気が下がったらどうしてくれるんだ? そん時にゃあお前の棚の奥にとってあるクッキーばらばらにしてやんぜ! おおん? なんだその目は? ちょっ待ってろすぐにばらばらクッキー持ってきてやんぜ! 」
この、口汚く騒いでいる光針鼠のマックは太陽の光を身体に溜め込む性質がある。そして光針鼠にとって身体の光具合いはある種のステータスらしい。
そんなことを思いながら、ベッドからおりて、窓を開け放った。そして聞こえてくる森のざわつきを聞かながら冷たい空気をお腹いっぱい吸いこむ。
さっきまでの眠気が嘘みたいだ。
「おはようマック。 すぐ行くからクッキーは、ばらばらにしないでよ?」
そういうと、マックはまるで花畑が咲いたような顔をしながら短い尻尾をゆらゆらと動かしている。これがツンデレと言うやつなのかな?
やれやれと、また忙しい一日が始まりそうな予感を感じながら、こうして今日も僕の一日は始まっていく。
「さあ!さあ!クラウディ早く行こうぜ!太陽が俺のことを呼んでるぜ!あっでも、飯が先だな」
マックがまた何か騒いでいるな。というか、いつの間に僕の肩の上に乗ったんだろう。まぁいいかとりあえず外に出ればマックも少しは大人しくなるだろう。
部屋を出てギシギシと軋む階段を降りると。ここに僕とたった一人で住んでいる祖父が目に入った。居間で暖炉を背にして、これまたギシギシと軋む椅子に腰を掛けながらなにやら絵を描いている。
「おはよう、オズ爺」
いつものように挨拶をしていると耳のすぐとなりで、何やらマックが喚いている。
「ん?なっない…おい、クソ爺お前俺が今日のために残していたサンレの木の実、どこにやりやがった!もう誰が犯人がわかっているぞ!白状しやがれ!」
どうやらマックの残していた木の実がどこかに消えたらしい。サンレの木の実は、味は甘酸っぱくてちょっとピリッとする小指の爪くらいの木の実だ。この森のどこにでも生えているから体の小さなマックのような獣たちのおやつにはうってつけの木の実だ。
オズ爺が筆置いてこっちをみている。オズ爺は僕と同じ灰色の髪をしていたらしいが、今では髭も髪も薄い透明のような白で、まるで色を抜き取られたみたいな髪色をしている。でもそんな髪色と違って、その薄い皺だらけの顔にある鋭い瞳は深くて濃い翠色をしている。その瞳を見ているといつも全て見通されている気分になる。そんなことを考えているとオズ爺が髭を撫でながら何やら考え込んでいるのが目に入った。
「ああ、おはようクラウディ。マックが儂を見ながら何やら騒いでいるが何か儂したかのう?」
少し抜の悪そう顔をしながらオズ爺は聞いてきた。どうやらマックが文句を言っていることに気がついたみたいだ。オズ爺はやっぱり凄い。傍から見るとチュウチュウ鳴いているようにしか見えない、見た目だけは愛らしいマックが不機嫌と見抜くとはさすがだ。
「えーと、何だかマックが残していたサンレの木の実がここにあったらしくて、オズ爺がそれをどこにやったか気になるみたい」
ちなみにオズ爺はマックが口が悪いことを知らない。
「おお、それは悪いことをしたな。 残りの木の実はインテに上げてしもうたわ」
頭を掻きながらポツリとそういった。
「何だってぇ!?あの透かし鳥野郎にか! マック今すぐに俺のサンレの木の実を取り返しに行くぞ!インテー!今日がお前の命日だ!フッフハハハハー」
完全にとばっちりである。
「えーマック先にご飯食べてていいかな」
多分無理だと思いながらそんなことを言ってみる。
「クラウディ。 お前はいつからそんな薄情な奴になってしまったんだ…俺は悲しいぜ。 悲しさのあまりお前のクッキーをばらば…」
「もうわかったよ! いけばいいんだろ、いけば」
クッキー一つでなんだと思うかもしれないが、このユグドラの森は秘境だ。一か月に一度、外からオズ爺の知り合いの魔女がやってくる。その時にしか外のお菓子クッキーは手に入らない。僕にとって外のお菓子は数少ない楽しみの一つなのだ!中でもクッキーは外では大変値段がするらしくて中々手に入らないお菓子なのだ!
はあ、どうやら朝食をとるにはまだまだ時間がかかりそうだ。
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