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デイリーメイカーズ  作者: 加島神楽
1/9

1-1 五人との出会い

 この作品はあくまでフィンクションです。

 実際に存在する人物、団体、国家、事件、その他固有名称で特定される全てのものとは、名称が同一であっても何の関係もありません。


それはまだ、奇跡が起こる前の話。彼女が生まれる前の話だ。




目が覚めると、丁度4時間目の終わりのチャイムがなっていた。どうやら授業は終わったらしい。

周りのクラスメイトが、それぞれ友人と昼食を食べようと動き出す。

僕はその姿を見ながら一人、いつもの場所へと向かう準備をしていた。


紅昨夜(くれないさくや)。それが僕の名前だ。

中学三年生の春、この学校の3年2組に転校してきた。

はじめは転校生ということもあり、たくさんの人に話しかけられたのだが、人付き合いの苦手な僕の性格がわかると、だんだんと話しかけてくる人も少なくなり、なんとなくクラスになじめない状態になっていた。

けれど元々、誰かと一緒にいるということが少なかった僕はあまり気にせず、転校時からずっと一人の生活を送っているのだ。


屋上へつながる扉の前にたどり着く。

僕が向かっていたいつもの場所というのは屋上だ。

この学校の屋上は封鎖されていて、誰も入ることができない絶好のスポットなのだ。

僕はその扉のすぐ隣にある窓をふさいでいる鉄格子をはずし、窓から屋上へと出る。

封鎖されていないじゃないかと思ったかもしれないが、確かに僕が来るまではこの窓も封鎖されていたのだ。

僕がここの鉄格子のねじをドライバーで外したから、ここだけは通れるのだ。


降り注ぐ太陽の光、吹き抜ける心地の良い風、時より聞こえる小鳥の鳴き声。ここはいつ来ても素晴らしい場所だ。

窓から屋上へと出た僕は、いつもの貯水槽のところに腰を掛け、昼食を食べ始めた。


昼食を食べ終えた僕は、腰掛けていた貯水槽の下に手を伸ばし、中からギターとパイプ椅子を取り出した。

ギターはアコースティックギター。小さいころから続けている僕の趣味の一つだ。

静かな屋上で木々のざわめきを聞きながら弾くギター。心休まる時間だった。


一曲目を引き終える。調子はまずまずだ。

そろそろまた、新しい曲にでも挑戦しようかな。そんなことを考えていた時だった。



「ねっ、すごいでしょ。咲夜くん」

「ああ……これは想像以上だ」

「屋上への行き方を知っているあたり、只者ではないと思っていたが」

「くちゃくちゃすごいな」

「みんな……あんまり大きな声を出すと、ばれちゃうよ」



……人の……声?

そのことを理解すると同時に、自分が屋上にいることがばれていたことにも気づく。

いつからいたのだろうか。いや、いつから個の屋上に通っていたことを知っていたのだろうか。

……まあ考えても仕方がない。そう思った僕は、どこかに隠れている誰かに声をかけた。


「……誰かいるの?」


少々警戒の念を含めてみる。

すると、貯水槽の裏から、物音や話し声(というより叫び声)が聞こえたと思ったら、その集団の一人から返事が来た。


「ばれたもんは仕方ねえ。……おまえら、いくぞ!!」

「もうみんないってるよ」

「ってなんでだよ!?」


…………。

非常にぐだぐだな集団だった。

意味不明なやり取りの後、貯水槽から大きな物音がしたと思ったら、今度は真上から声がした。


「上を見なさい!!」


言われた通り、貯水槽の上を見てみる。

すると上には、五人の男女が立っていた。そのうち、一人の少女には見覚えがあった。クラスで、アイドルのように呼ばれていた覚えがあるからだ。

その五人が、いきなり変なことを言い出した。



「俺の心が真っ赤に燃える!! レッド!!」

「自然を大切に!! グリーン!!」

「いつも心に静寂を……。 ブルー!!」

「ネコと遊んでくれないか? イエロー?」

「みんなのヒロイン♪ ピンク……って僕男だよ!?」

「五人合わせて――」



「シンケンジャー!!」「ボウケンジャー!!」「ゴーカイジャー!!」「ネコレンジャー!!」「デカレンジャー!!」



…………。



「ここは侍戦隊だろ」「轟轟戦隊よ!」「いや、海賊戦隊だろ」「なにいってる。爆猫戦隊だろ!」「爆猫戦隊なんてないよね」



…………。

唖然としていた。正直、馬鹿なんじゃないかと思った。

目の前であーだこーだいってる人たちは、本当に何がしたいんだろう。


「ああ……咲夜くん、もうあきれかえってるよ……」

「まずいな……登場にインパクトを持たせ、そのままのりで勧誘してしまえ作戦が失敗だ……」

「元々この作戦、無理があったと思うのだけど」

「アホだな」


いや、あるいみその作戦は成功だ。インパクトはハンパなかった。

……というか、今勧誘って言わなかった?


「やあ、お前が紅咲夜か?」

「まあ、そうだけど……」

「俺の名前は風上一也(かざかみかずや。隣のクラス、三組の者だ」


レッドが自己紹介をする。


「同じく、宮沢慶助(みやざわけいすけだ」


ブルーが言う。なんか某有名作家に似た名前だな。


「えーと。同じく直枝陸(なおえりくです。よろしく」


なぜか男なのにピンクの人が言う。ピンクだが、一番まともそうだ。


「イエローの茜美紗(あかねみさだ」


先に宣言してくれたのは、唯一謎の爆猫戦隊を作り上げた女の子だ。ちなみに美少女。そして……


「私の名前は……わかるか。ま、でも一応。同じクラスの夢桜沙耶(ゆめざくらさや。よろしくね」


グリーンであり、クラスでアイドルと名高い彼女が最後に言う。アイドルと言われるだけあるかわいさだ。

けれど、今はそんなことすらどうでもよくなる事態が起こっていた。頭の中は疑問でいっぱいで、聞きたいことは山ほどあった。

だから僕はとりあえず、今世紀最大の疑問をぶつけてみることにした。


「ここで何してるんですか」

「勧誘さ!」


すごいさわやかに返された。


「誰をですか」

「お前のことをだ!」

「…………何故に?」

「それはお前もわかってるはずだぜ!」


なぜさわやかに返し続ける。

しかし、僕もわかっている? どういうことだろう。

僕がした事かな。でも僕は屋上に入ったことくらいしか……あ!


「すいません。ここの先着で僕を口止めに殺しに来たんですね」

「いやいやいや」

「そうだ」

「なに美紗も嘘言ってるのさ!?」


どうやら違ったらしい。けれど他に心当たりなんてないぞ。


「他には何かないか」

「すいません。正直あなたたちのような変な人との関わりなんて、あった気がまるでしないんです」


とりあえず、正直に言ってみた。

とたんに夢桜さんから反論がくる。


「私たちのどこが変なのよ!?」

「主に言動が」

「まあ的確だね……」


五人の中で、一番常識的そうな直枝くんが賛同してくれる。ちゃんとわかってる人もいるんだ。


「まあ、あなたにもいずれわかる日が来るわ」


一生わかりたくないです。


「俺たちがお前を誘う目的……それはそのギターの上手さと、屋上に入る手段を知っているからだ!!」

「ぶっちゃけ、後者の占めるウエイトがほとんどですよね」

「まあな!!」


さわやかに正直な人だ。そういえば、


「ならあなたはどうやって入ったんですか」

「……来てみろ」


そういって、僕を貯水槽の裏へと誘導する。僕は黙ってついていき、裏側を見た瞬間驚愕した。

なんとそこだけフェンスが破れており、下の階の空き教室のベランダまでロープがついていたのだ。


「俺たちはこれを上って、ここに来ているんだ」

「危ないでしょ!?」

「だからこそ、お前に入ってもらいたいのさ」


……確かにこれは危ない。いくら屋上がいい場所であるからといって、ここまで危険を冒して来ようと思う人がいるだろうか。いや、まあ目の前にいるのだが。

ここまでする人なんだ。それだけ屋上が好きって事なのだろう。教えてあげてもいいかな。

そう結論づけたところで、一つ疑問が浮かぶ。


「屋上への入り方を教えるのはかまわない。けど一つ、質問があるんだ」

「ん?なんだ?」

「どうしてそんなに勧誘にこだわるの?別に、僕に尋ねるだけでもいいと思うのに」


そう尋ねると、風上くんはすこしまじめな顔をしていった。



「お前、転校生だったよな」


 その瞬間、僕は少し気分が悪くなった。こいつらも一緒なのかと。


「別に俺たちは、お前の性格にどうこう言うつもりはない。けどな……強がりはよした方がいいと思うぞ」

「…………あんた等も一緒。そうやって友達を作れとか、そんなありきたりなことを説教するのか」

「いや、ちがう。俺が言いたいのは、ただもっと素直になっても良いとおもうんだよ」

「僕のどこが素直じゃないって言うんだ」


 みんなそういうんだ。僕の事など何も知らず、ただただそういうんだ。


「じゃあどうして……お前のギターから出る音は、そんなにも悲しそう(・・・・)なんだよ」


 …………僕のギターの……音が悲しそう?


「たった一回盗み聞きしたくらいで、僕のギターに口出ししないで」

「たった一回じゃない。初めてお前が屋上に来ていたとき……始業式の日から、毎日聞いてる奴が言ってるんだよ」

「毎日……聞いてる……?」


「あたしよ」


 夢桜さんの声が響く。夢桜さんは……毎日聞いていた……?


「あの日、私はたまたま一人、屋上へと登っていたの。誰かいるなんて、思ってもいなかった。私はこれを、自分だけの楽しみにしようと思った。それだけ、あなたの曲はすばらしかったわ」


 ……驚きだった。あの日からずっといたなんて。気づきもしなかった。


「それから毎日、私は昼休みに、ここではじめの曲だけを聞いていたわ。それ以外の時間は、みんなと遊ぶ時間だったから。そうして聞いているうちに、私は疑問に思ったの。どうしてこの人の曲は、こんなにも悲しいんだろうって。」

「さっき咲夜くんの弾いていた曲って、おそらくだけど自作だよね」


 直枝君が尋ねてくる。僕は肯定の意を示す。


「やっぱりだ。だからこそ、よりいっそう自分の心が曲に出ていたんだ。自分で作った曲ほど、気持ちのでやすいものはないからね」

「だから……僕は別に」

「そんなこと思っていないというのか?本当にそうなのか?お前はそうやって、自分の中で何かを怖がってるんじゃないのか?」


 怖がっている……何かに……?


「俺はお前が、心から孤独を望んでいるようには見えない。お前は何かをおそれ、自分すら騙せない嘘で自分を守っているようにしか見えないんだ」

「そんなもの……!!」

「ないわけない!!お前は、本当はみんなといたいんだろう!?みんなと笑って、みんなとはしゃいで、今を楽しみたいんだろう!?じゃあ何で我慢する!?何をおそれている!?何におびえているんだ!?」

「そんなこと、君たちには関係ないだろ!?」


 僕はそういって、屋上から逃げるようにして校舎内に入る。

 けれど、その行動自体が一つの答えにもなっていた。



「彼らに……僕のことなんて、わかってたまるか」



 ~side-five people~


「さすがに、いきなりすぎたか……」

「一也はそうやって、いつも急ぐ癖があるからね」

「もう少し、ゆっくりやっていくべきだっただろう」

「まあ過ぎてしまったことは仕方ないわよ。それより、これからどうするのよ?あの調子じゃ、かなりきついものがあると思うわよ」

「あいつ、そーとー警戒してくるはずだ」

「大丈夫だ。作戦は練ってある」

「どんな作戦よ?」

「それはだな……」


この度は本作品をお開きになってくださり、まことにありがとうございます。

私自身が書く初めての作品『デイリーメイカーズ』。

更新は不定期ではありますが、是非読み続けていただけたら幸いです。



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