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素面の父
翌日の午前十時二十分。東京へ帰る日、政孝と亮子は午前中の仕事を休み、私と一緒に駅にいた。
「今を頑張れよ。若」
政孝はにっこりしていた。
「そして向上心を持て! お父さんも向上心を持って農業をやっている。会社の同僚が定年後に年金だけになった時には、農業収入だけで食べて行けるようになっている事が、お父さんの目標だ」
政孝の目をじっと見て、「はい」と頷いた。
両親は笑顔で見送り、私ははにかんで笑い、手を振って別れた。
十時四十分の電車に乗り、正午過ぎに新宿に着いた。
その瞬間、地元では感じなかった解放感に包まれる。やっぱり私には、東京の方が合っているんだ。そう実感していたのに……。




