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初のレギュラー

 二月下旬。キー局で春にスタートする、お笑いコンビがMCの帯番組のレギュラーが、キープ(仮決定)から正式に決まった。放送時間は深夜十一時五十分からの三十分。月曜から木曜までの放送だ。


 松下から話を聞いた刹那、まず頭に浮かんだのは、朝十時からの事務職に差し支えがある事だった。

「それは大丈夫。午後からの出勤で良いって社長が言ってるから」

「そうですか。なら良っか。それで、どんな番組なんですか?」

「基本的には雛壇に座って笑ってれば良いから。たまにロケに出る事もあるかもしれないけどね」

「ああ、その手の番組ですか」


 予想通り、トレンドやグルメを、半期に一度替えられる予定の二十人のマスコットガールが、現地リポートするのだという。

 ロケに出るのは、プロデューサーやディレクターに気に入られた若い子だけだろう。私はスタジオで笑っていれば良いと悟った。


 四月中旬の月曜日。第一回目の本番前、松下がディレクターに呼び出された。マスコットガールには台本も弁当もないので、私は自前のパンを齧りながら読み掛けの小説を読んでいた。

「さっき廊下で聞いちゃったんだけどさ」

 シオの受賞を祝う合コンで一緒だった藤森理奈が、愚痴っぽく声を掛けて来た。


「何か癪に障ったの?」

「ディレクターが『お宅んとこもっと若い娘いないの?』って松下さんに。こっちだって自分の年齢自覚してんだよ!」

 私は二十七歳、藤森は二十五歳……っま、ディレクターはそんなもんじゃね? とは思ったけど、

「どうせオバサンだよ!」

 調子を合わせた。


 番組が回を増すごとに、二十人の中では派閥ができ始めた。ロケに出ても、派閥が違えば口も利かないそうだ。私はどこにも属さず自由にやってたけど、まったく、人間の確執には凄まじいものがある。

 

 いざこざはまだある。

「あの子、最近ロケに出るの疲れたって言ってますよ!」

 笑顔でディレクターに告げる雛壇アイドル。彼女が言っている事は大嘘。ロケ出演が多い子を妬んでの言動だ。その子は「告げ口」によって見事ロケ出演をゲットした。


 他にも、雛壇の前列に座る子と険悪な関係になろうものなら、席がどんどん後ろに回されるか、途中降板させられる。それを何度となく見聞きした。

 

 裏じゃ足の引っ張り合いで、それでいて本番中は仲良さげ……。一見すれば着飾って華やかな世界でも、裏側はどす黒い。


 人間は裏を汚くしなければ、表を美しくできない動物なのか?


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