表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/38

悲願達成

「嘘だろ!?」

 シオは雑誌を見たまま凝固した。

「どうしたの」

 私が訊いても何も答えず、何度も読み返しているようだ。


 七月中旬の金曜日。渋谷区恵比寿の居酒屋に入って乾杯した後、シオは事前に買った月刊文芸雑誌『アインシュタイン』を開いた。八日発売の表紙には、『第八回アインシュタイン文学賞発表!』とある。

「嬉しい記事なの? それとも・・・・・・」

 駄目だったの?……と言い掛けて止めた。


 シオはやっと私と目を合わせ、

「やったよ。オレの作品が大賞だってよ!!」

 顔は喜色に満ち、輝きを増していた。

「え! マジ!? おめでとう! それで作品はどんな内容なの?」

「心を閉ざした高二の男子が、ある日風俗嬢に拉致されるんだ。当然少年はキレてパニクるけど、風俗嬢の開き直りっぷりに呆れ返っちゃう。そうこうしている内に行き着いたのが、風俗嬢の地元の町だったんだ。少年は風俗嬢の過去に触れて行く内に心境が変化して行って、最後は心を開く。簡単に言えばこんな話」

 シオは興奮を抑えつつ、早口で解説してくれた。


「へー。面白そうだね」

「最初に書いたやつを何度も手直ししてやっとだぜ・・・・・・」

「凄い。諦めないって大事だねえ」

 その日はそのまま祝賀会となり、シオの美酒に、私は明け方まで付き合った。


 数日後、シオには出版社から連絡が入り、彼は賞金百万円を手にした。作品は雑誌に連載された後、単行本として出版される事が約束されたらしい。

 シオは賞金の半分を、「今まで迷惑ばかり掛けたから」と両親に贈呈すると言った。以外に律儀な面あるんだ。と驚いたんだけど……。


 ある日の昼休み、ベランダの喫煙所で、

「頼む! 一回だけで良いから。友達として」

 シオは深々と頭を下げ、私に手を合わせた。

 八月上旬に、受賞を祝って合コンが開かれるそうで、それに出てほしいと頼まれた。何でお祝いが合コンになるかなあ?


「私、合コン苦手なんだよね」

「だからいてくれるだけで良いんだよ」

「SEX以外のデートとかはしないって約束だけど?」

「だから・・・・・・自分で言うのは変だけど、友達の一人として祝ってほしいんだ」

 溜息を吐いて思案に暮れた。

「・・・・・・今回だけは特別よ」

「分かった! ありがとう」

 シオは満面の笑みを湛えた。


 その当日。渋谷区内のレストランの個室を貸し切り、シオの受賞を祝う合コンが開かれた。

 私が着いた時、男性は全員揃っている様子で、シオの前の席に座ると、彼はにっこりして頷いた。「来てくれてありがとう」という意味なのだろう。


 男女揃って五対五。男性はシオの他にうちの事務所のマネージャーが一人、後の三人は初対面だ。女性は私を含めてマイナーアイドル四人と、なんと、

「どーも、宜しくでーす!」

 松本めぐみ……。こういうとこでガス抜きしてるんだ。


 男性の服装をチェックする。基本皆カジュアルなんだけど、それに蝶ネクタイを付けた人もいる。最近テレビでもよく見るけど、カジュアルに蝶ネクタイって、カッコ良いんだろうか?

「シオ、文学賞受賞おめでとう!!」

 シャンパンで乾杯して合コンが始まった。始めは受賞作品についてや、これからの作家活動についての話題だったけど、しばらくすると……。


「女にキシリトールのガム噛ませてキスすると、結構良いんだよ」

 シオが得意げな顔をした。大した蘊蓄じゃないのに。

「シオくーん。そーゆーの何か嫌!」

 松本が声高にツッコんだ。彼女はのっけから弾けまくっている。

「あの二人、結構一緒になるらしいよ」

 隣に座っている藤森理奈がそっと耳打ちした。

「合コンクイーンなんだ・・・・・・」


 やがて席替えタイムとなり、同時に、なぜかロールパンの投げ合い合戦も始まった。目の前を飛び交う卵やレタスとハム、トマトをサンドしたロールパンたち……。食べ物を粗末にする罰当たりども! 生産者がどんな想いで作っているのか、全く分かっちゃいない。私は当然参加しなかった。


 一次会が終わり、皆は二次会でクラブに行ったけど、私は帰る事にした。

 帰宅後、シオにメールを送信。

「今日はおめでとう! めぐみちゃんの違った一面も見れて楽しかったよ」


 翌朝の七時頃、シオから返信が来ていた。

『こっちこそ無理言っちゃってごめん。ほんとサンキューでーす!!』

 クラブ上がりでテンションが高かったのだろう。やっぱりあいつはチャラい。


 年が明け、シオは文学賞を受賞した雑誌とは別の出版社が発行する雑誌で、三月号からの連載が決まった。これを期に事務所を辞め、本格的に作家活動をスタートさせる。


 私は、未だマイナーアイドルと事務の掛け持ち……。けれど二人のセフレ関係は、月に二、三度と減っては行くが続いていた。


 シオはコスプレは好まず、行ってもTバックや裸にエプロンくらいで、割とノーマルなSEXを好んだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ