とうとう・・・
二月上旬の木曜日。私が予てより不安視していた事が現実となった。夜の九時過ぎに、亮子から電話が入った。
『あんた私達に隠してる事があるでしょ?』
正直、ある……。あの事しか考えられない。
「はっきり言ったら? もう分かってるんでしょ?」
『DVD出してるんだってね? 大胆な姿で・・・・・・』
予想通り……。他人の空似と言っても通用しないだろうなあ。
「誰から聞いたの?」
『近所の人が買ったんだって。直接見せてくれたわ』
「そう。去年の三月に事務所の社長からスカウトされたの。写真集一冊とDVDを二枚出した」
実物を見たのだからグズグズせず速やかに真実を話した。
『事務職じゃなかったの?』
亮子の声は困惑している。
『人様に裸を見てもらって何が嬉しいの!?』
亮子は涙ぐんでいる様子で、語気が強くなる。
「事務は今でもやってるよ。黙ってたのは悪いと思ってる。でももう子供じゃないんだし、自分で考えて決めたの」
『うちの家柄の事も考えてよ!』
「そんなの関係ないじゃない! 家柄って、どうせ落ちぶれてるじゃん。自分の人生を自分で決めて何が悪いの!?」
負けじと大声で応戦した。
結局、この日は物別れに終わり、それからしばらく母子は音信不通になった。
亮子に問い詰められた日から一週間後、私は母方の祖父、勤の家に電話を掛けていた。祖母のスマなら、私の話にじっくり耳を傾けてくれる気がしたから。
始めは勤とお話……というより、一方的にまくし立てられた。
『仕事はどうだ? 一生懸命やらなきゃいけないぞ』『朝はちゃんと食べてるか? 昼よりも朝確り食べなきゃ駄目だ』『お前日記書いてるか? 一日の締め括りに書け』……今更だけど、この人って本当に多言。
話を聞いていると、勤の方にはアイドルの話は回っていないようで、安心した。
三十分程経って、やっとスマに替わってもらう。
『もしもし。どうかしたの?』
スマの声を聞いただけで、安心感に包まれた。
「うん・・・・・・今私がやってる仕事を、お母さんに反対されたの」
『反対? いつ?』
「先週の木曜日。もうどうしたら良いのか分からなくて・・・・・・」
『あの子も感情的になると人の話を聞かないからね。でもれっきとした仕事なんでしょ?』
「まあ、一応はね・・・・・・」
『なら良いじゃない、親が反対しようと。自分で決めたんだろうし、楽しいばかりじゃないだろうけど、若、自分の仕事に誇りを持つ事が大事よ』
誇り……自分の可能性を試したいと決心し、最近やっと仕事も楽しくなっては来た。でも、誇りまでは正直持っていない。
『親はね、子供がどんな仕事に就いても心配する生き物なのよ。理想通りになる訳がないって分かっていても、反すると腹を立ててみたりね』
「うん。子供もそれは分かってるんだけど、現実はなかなか・・・・・・」
『亮子と話したくない時は、うちにいつでも電話したり帰って来なさい。実家が嫌だったら、お婆ちゃんちにいれば良いよ』
「ありがとう」
いつでも、どんな時でも、スマは私の味方をしてくれる。
電話を終え、溜飲が下がると共に反省が生じた。グラドルだけじゃない、今までの仕事で誇りを持ってやったものなど一つもなければ、そんな事考えもしなかった。




