裏の顔
ファースト写真集とDVDの発売から四ヶ月経った、十二月二一日(金)。二作目となるDVDが発売された。
一作目の発売に合わせて幾つかの雑誌のグラビアを飾り、少しずつだけどファンも付いて来た。その影響で、前回の写真集とDVDの売上も若干上がったらしい。
今回のDVDは十月下旬に、事務所の自社スタジオと別荘を借り、前回と同様三日を掛けて撮影された。
勝ち気な思いは変わらずに、スケスケの下着を着けてシャワーを浴びたり、上はタオルで隠し、下は何も着けずに冷たいプールにも入った。
「そこまでやって見合ったギャラもらえるの」
シオが心配した面持ちで訊いた。
「いいや。事務の方が断然給料良いし」
因みに、シオは今年の文学賞も落選したらしい。でも、彼は諦めずに書き続けている。
年が明けた一月五日(土)。事務所の新年会が催され、振り袖姿の所属アイドルが一同に会した。
その後には撮影会も行なわれ、抽選五十人のファンとアイドルでスタジオはごった返した。
カメラを向けられにこやかにポーズを決める。最近になって、ようやく素人からカメラを向けられる事にも慣れ、ポーズをとる事も楽しくなって来た。
立ったままサイン&握手会を済ませ、大部屋で私服に着替える為、更衣室に荷物を取りに向かうと、数人の子達が入口で立ち往生していた。中からは『ダンッ! ダンッ!!』と凄い音がしている。
「どうかしたの?」
「今は入らない方が良いよ」
一人が答えた。皆何食わぬ表情をしている。構わずに中に入り、音がする方を見ると、着物姿の竹本と、仲の良い三人が寄って集って松本の私服やバッグを踏み付けていた。
THE 芸能界……。竹本が私に気付いてきっと睨んだ。
「何よ? あんたもやる?」
四人の挑発的な視線が突き刺さる。
「いいです。私は言葉攻めで潰しますから」
咄嗟に出任せを言ってロッカーから荷物を取り出し、私も何食わぬ顔をして更衣室から出た。
「めぐみちゃんに衣装を貸してあげてください」
男性スタッフにお願いし、事務所を後にした。
人気者を妬む者、かかわり合いたくなくて何食わぬ顔を決め込む者、先輩であるがゆえに盾突けない弱い自分……皆打算的。これも人間の面白味なのだろうか?
後で聞いたけど、松本はスタッフに用意された衣装を断わり、草履の跡が付いた服を着て帰ったらしい。 さすがは度胸が据わっているとも評判なだけはある。




