セフレ以上の関係
十二月二四日と二五日。世間はクリスマスで冬休みに入ったけど、私とシオは三十日まで仕事だった。
三十日はシオの誕生日だったけど、彼は合コン。私は部屋の大掃除をして過ごした。
「このまま一人で年越しだろうなあ」と思っていた大晦日の夕方、何気にシオに電話を掛けてみた。
「合コンで疲れてんじゃない?」
『朝までクラブにいたけど、昼間寝たから大丈夫』
「そう。でさあ、今日は合コン、ある?」
『ないけど何?』
「うちに来ない?」
『え!? っていうか、正月帰らないの?』
「良いのよ。やる事ないし」
『そっか。ワカが良いって言うんなら、お言葉に甘えて』
シオは世田谷の自宅から約二十分で、私の自宅アパートの最寄駅に着いた。近くのスーパーですき焼きの材料と蕎麦、チューハイなどのアルコールを買い、杉並のアパートへ帰る。
私がすき焼きの用意をしている間、シオは民放のバラエティ番組を観ている。大晦日は必ず『紅白』を観る……って世代でもないか。
すき焼きを食べ終えた後、割り下を利用して年越し蕎麦を作り、二人で啜った。
「やる事ない」といいながらも、大晦日にすき焼きを食べ、割り下で年越し蕎麦……これ、地元にいる頃の我が家の風習。疎んじていても、頭には習慣が残ってんじゃん! 自分にツッコミを入れる。
やがて午前零時を迎え、新年の挨拶を交わした。民放で朝までやっている音楽ライブ番組もそこそこに、二人で風呂に入り、ベッドに横たわった。
すき焼きと蕎麦でお腹が膨れて苦しかったけど、SEXをして眠りに就く。
午前十一時過ぎに目が覚め、一服して目覚めのSEXをする。正月から、こんな感じ……。
服を着て簡単なお昼を済ませ、正月特番を観ていた時、携帯が着信音を鳴らした。亮子からの電話。
「ちょっとごめん」
と言ってユニットバスに入った。
「新年おめでとうございます」
『おめでとう・・・・・・』
何となく声が深刻そうだ。
『唐突だけど、武弥が病気かもしれないの・・・・・・』
亮子は涙声になった。でも、急に泣き出すのは私が子供の頃からで、もう慣れっこだ。
二つ下で、岐阜県内の大学に通う妹の武弥は、勤と同じく獣医師を目指し六年制の学科へ進んだ。
「武弥は帰ってるの?」
『替わろうか?』
「そうして」
泣いている亮子では話にならない。
『もしもし? おめでとう』
「おめでとう。あんた声は元気そうだけど、大丈夫なの?」
『何か、肺に水が溜まっちゃったみたいなの』
肺胞に水が溜まる。病名は肺水腫。
「症状はどうなの?」
『ちょっと息苦しいなってのはあるけど、お母さんオーバーなんだよね。入院して手術すれば大丈夫ですって言われてるのにさっ』
「入院するんだ?」
『私は軽いから三月になると思う』
「そう。声聞いて安心した。あんまり無理しないで」
私が部屋へ戻っても、シオは私生活には深入りしない決まりを守り、何も訊いて来なかった。
午後四時を回り、明治神宮に初詣に行く事にした。五時過ぎに着いたけど、予想通り境内は人でごった返している。
「去年一年間、無事に送る事ができ、ありがとうございました。今年も、至らぬ私と家族を見守っていてください」。
隣のシオを見ると、結構長く手を合わせている。多分、本の事をお願いしてるんだろうなあ。
ここでシオとはお別れ。各々の自宅に帰った。




