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50.感謝と出立

「あ!昨日のお兄ちゃんだ!」


「ホントだ!影の薄いお兄ちゃん!」


「ちょっとあんたたち!授業中よ!」


突然檻を壊しにきた怖い人、

というスタートではあったものの、

自分たちと遊んでくれる日々和の知り合いで

しかも暗い場所から自分たちを

連れ出してくれた勇者のような存在。

昨日直接関わりを持った彼らには

凛太郎がしっかりと認識されていた。

そして、日々和の制止を振り切って

子どもたちが凛太郎に群がると、

次第に凛太郎の存在感も増していく。


「わぁっ!あなた、いつからそこに!?」


この反応も実に懐かしく感じる。

何度味わったところで、

決していいものではないが。


「俺は木瀬だ。冒険者をやっている。」


それから凛太郎は親たちに話す。

昨日この街で何が起きて、

そしてどうなったのかを。

彼らは黒幕の正体がラルイーゼと聞いて

最初の方は信じられないでいたようだが、

凛太郎が証拠として抑えた書類を

これ見よがしに見せつけると、

色々と思案顔を浮かべていた。


「まさか、あのラルイーゼさんがねぇ……。」


「当主様がそんなことを許すはずがないし、

仮に独断でやっていたんなら

下手すると絶縁されるんじゃないか?」


今この街で一番偉いとされているのは、

ラルイーゼの父でありアリオネット家の当主。

その後継ぎである人間が

家の品格を貶めるようなことをすれば、

当然その罰は大きい。

縁を切られるか、あるいは処刑されるか。

どちらにしろ、ラルイーゼがどうなろうと

凛太郎には関係のない話であるが。

そして一連の話を終えると、

親の一人が凛太郎の手を取った。


「木瀬君と言ったね。

この度は子どもたちを助けてくれてありがとう。

保護者一同、心より君に感謝している。」


彼に倣うようにして、

他の親たちも凛太郎に頭を下げた。

街の平和の裏で起こっていたこと、

過程や理由はどうあっても

凛太郎は彼らの子どもたちを助けたのだ。

感謝されて当然、と言えば

少し傲慢な気もするが、

事実として凛太郎の功績は大きい。

ありがたく感謝の言葉を受け取った。


「この街での用事は済んだ。

俺たちはこれからガートムに向かう。」


凛太郎たちがこの街に来たのは

エルフに頼まれたのが発端だが、

冒険に必要な物資の調達もできた。

もう少しこの街に滞在してもいいが、

新たに発生したガートムへの疑念を

払拭しないことには

この先の冒険なんて続けられない。


「あの、木瀬さん。

約束していたこれを受け取ってください。

私の手書きで急いで作ったものですけど…。」


先生が渡してきたのは一冊の本だった。

はて、何の約束だったかと思いながら

受け取って中を捲ってみると、

この世界の文字である色文字の

解説が細かに書かれていた。

そういえば、地下で子どもたちを助ける際に

先生に文字を教えてくれと

凛太郎は頼んでいた。

こんなにも早く用意してくれるとは、

随分と仕事のできる先生のようだ。


「ありがたく受け取っておく。」


本屋で買った本も合わせれば、

文字の勉強はこれで足りるだろう。

収納に本を放り込んで、

凛太郎は彼らに背中を向けた。


「気が向いたら立ち寄ることもあるだろう。

もし見かけたら声をかけるといい。

…俺を見つけられたら、の話だがな。」


ここは平和でいい街だ。

少しばかり名残惜しいが、

留まり続ける訳にはいかない。

ユニークスキルのこともあるので、

凛太郎は最後に少しだけキザな台詞を吐いた。

日々和は子どもたちに手を振ると

凛太郎の隣りに並び、

雛戸は彼らに頭を一つ下げてから

二人の後ろについて歩く。


「行くか。」


「えぇ。行きましょう。」


「どこまでもお供致します。」


この街に思い残すことは何もない。

今の凛太郎の頭にあるのは、

ガートム王国とアイズのことだけだ。

彼らが凛太郎たちを雛戸と同じように

戦争の道具のために召喚したのか、

その真意を確かめる必要がある。

希望というには少々歪な思いを胸に

凛太郎は歩き出した。




            ~完~

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