表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/51

41.舞台裏と限界突破

騒ぎに紛れて進行役の男を蹴り飛ばし、

統率を取る人間を排除する。

その後ステージ横から裏へ入り、

武装している人間は片っ端から蹴る。

この場所で武装が許されているのは

十中八九開催者側であり、

檻に閉じ込められていたり

手枷足枷をされている者は

捕えられた被害者たちだ。

一人ずつ助けるのは時間がかかるので、

武装していた者が持っていた鍵の束を

奪って放り投げておいた。

不気味な程に静かな舞台裏は

心霊スポットのように肌寒く、

檻に入れられている者の中には

震えている者がいる程であった。

こんな場所に閉じ込められていれば、

とてもまともではいられないだろう。


「かなり多いな。」


気配察知で事前に分かっていたが、

裏にいる者は非常に多い。

武装した警備や拉致被害者の他にも

落札の手続きをする者や

ステージに運ぶ順番を管理する者など、

とにかく人の数が多かった。

しかし、どいつもこいつも動きが悪い。

これも謎の寒さの影響なのか、

いくら凛太郎が素早いと言っても、

彼らの動きはまるでスライムのようだった。

更には侵入者が暴れているというのに

一向に警備が集まる雰囲気がない。

だがこの状況は、凛太郎の強さを知る者が

雑魚兵がいくら集まったところで

凛太郎に蹴散らされるだろうと

策を弄した結果でもあるのだろう。

凛太郎の気配察知はこの時すでに

覚えのある二つの気配を見つけていたのだから。

億にいる一つは日々和で、そしてもう一つは───。


「やはり、いらしたのですね。」


日々和の気配がある所へ向かう凛太郎に

数本の氷の刃が迫ってきた。

それらを全て避けると、

反撃代わりに一本の匕首を投げる。

しかし、それは氷の壁に簡単に防がれた。

陰の中から現れた彼女に、

凛太郎は焦りも含んだ視線を向ける。


「…返してもらいたい者がいる。

退いてくれないか。」


絶望の一つであるギルムルールに次いで、

この世界における凛太郎のトラウマと

言ってもいい程の存在。

どこの誰に仕えているのかも分からないが、

凛太郎を負かすことができるメイドは

彼女以外に知り得ない。

つい数時間前に地下水路で凛太郎と戦い、

そして危なげなく勝利した彼女。

そういえば、まだ彼女の名前を聞いていない。

人攫いのワギトからは

ムーンと呼ばれていたが、

果たしてそれは彼女の本当の名前なのか。

あれだけの強さがあるのなら、

メイドをしている裏の仕事として

コードネームを持つ暗殺者でも

やっているのではないだろうか。


「この場所の秩序を守るのが私の役目ですので、

簡単にはお譲りできません。」


彼女の全ての所作は洗練され、

技にも一切の無駄がない。

正面から立ち向かったところで、

凛太郎はまた返り討ちにされるだろう。

しかし、彼女を倒し進まないことには

日々和や他の者を助けられない。

クーハにみんなを助けると約束して、

意気揚々と乗り込んできたのに

こんなところで引き返す訳にはいかない。

だが、日々和を助けに行くには

彼女を倒す必要がある。

しかし彼女は簡単には倒せない。

選択肢は二つに一つ。

ならば、ここは男らしく覚悟を決めて

一か八かの勝負に出るしかない。


「神速…!」


神速によって更に高められた凛太郎の速さは

もはや目で追うのもやっとだ。

しかし、彼女は簡単に反応する。

凛太郎の動きを正確に見切り、

そればかりか氷の刃で狙い撃ってきた。

凛太郎も遠距離からの攻撃をしたいが、

魔法は威力が頼りなく、

匕首の投擲は氷の壁に阻まれる。

正面から突っ込もうと回り込もうと、

彼女は全てを見切って反撃してくる。

小細工なんてものはまるで通用しない。

ならばどうするか。

凛太郎すら反応できないような速さで

全てを置き去りにすればいい。


「これでダメなら、俺はお前に勝つ手段がない。

正真正銘、俺の全速力を見せてやる。

もっとも、目で見えるとは限らないが。」


凛太郎はまず最初に時間稼ぎをした。

赤い煙を放つアイテムを投げて、

それに火弾をぶつけて爆発させる。

周囲に赤い煙が一瞬で広がり、視界を塞ぐ。

こんなことをしたところで

彼女には意味がないだろうが、

彼女が気配を探るその一瞬が必要だった。

エーゼコルドの敏捷バフ×神速×自己強化グレードアップ

神速は敏捷を上げるだけの魔法だが、

自己強化は攻撃や防御など全ての

ステータスを上げてくれる魔法だ。

この全ての強化が加わった時、

凛太郎の敏捷は音速を超える。

本人である凛太郎が自分の速度に

意識が追いつかなくなってしまうので

今までは神速しか使わなかったが、

彼女に勝つためには

自らの限界を超える他ない。

当然刃を振る余裕などないので、

両手のエーゼコルドは逆手に持つ。

これが、今の凛太郎が出せる最速だ。


「影斬り。」


赤い煙が消えるのと

凛太郎の足が床に着くのは同時。

その瞬間に思い切り踏み込み、

闇を切り裂く死神の影のように迫る。

20メートルはあろうかという距離を

一秒にも満たない速さで詰め、

彼女の首に刃の狙いを定める。

エーゼコルドの気絶付与のおかげで、

相手を殺す勢いで迫っても

殺すことなく制圧できる。

そして、エーゼコルドの刃が

彼女の首に触れるその直前、

凛太郎の目には彼女が

笑みを浮かべながら目を閉じたように見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ