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34.地下水路

鉄製の扉を開けると、

中はそれなりに広く灯りもあった。

一応は水路であるようで、

道の真ん中を水が通っている。

しかし、凛太郎が下りた所は

後から増築した設計なのか、

ハシゴで道に下りなければならなかった。

大きな音をたてないように下りて、

泥棒のように静かに歩く。

凛太郎の職種は暗殺者だが、

動物などを手懐けるテイマーや

賑やかしを得意とする道化、

建築家、料理人など戦闘以外の

職種もこの世界には充実している。

そして、職種の欄にはもう一つ、

ステータスとして刻まれることがある。

それは盗人や奴隷、英雄などの称号で、

自分で設定することができず、

審判などのスキルを持っている者だけが

大きな罪を犯した者や行き場を失くした者に

対して力を行使することで設定される。

審判によって設定された称号は

審判でしか変えることができず、

罪人として一度人の道から外れた者が

元の道に戻るのはとても大変なことだ。

だからこそ、審判のスキルはこの世界でも

ホンの少しの人間しか持っていない。


「真っ当な人間であって欲しいが…。」


更に、審判によって称号を盗人や

殺人鬼などの罪人に書き換えられると、

その人間のステータス画面の一部が

他の者にも見えるようになる。

罪人としての汚名を背負いながら、

プライバシーそのものであるステータスを

晒し続けなければならない。

罪には罰を。これがこの世界の理だ。

もちろん、きちんとした手続きと

再度審判を受けることで、

称号を取ってもらうこともできる。


「……おい、いつまで待たせる気だ。」


しばらく地下水路を歩いていると、

凛太郎は人影の集まっていた場所に到着した。

壁に張り付いて体を隠し、

その拓けた場所を覗き込む。


「エルフの森はこの街の近くだ。

行かせたのが下っ端とは言え、

いくら何でも遅すぎる。」


その空間には、森でエルフたちが捕まっていた

檻のような荷車が二つあり、

その中にたくさんの者がいる。

エルフでもドワーフでもない彼らは、

長い耳や尻尾の生えた獣人であった。

そして、彼らを監視するように

周囲にたむろしているのが、

10人あまりの人間である。

檻に閉じ込められている彼らの

怯える表情から察するに、

やはり人攫いで間違いないようだ。


「人を出すか?」


「…そうだな。エルフは注文を受けてる種族だ。

捕まりませんでしたは通用しない。

アリロ、ルミーグ。様子を見てこい。」


「了解した。」


注文を受けているという言葉を

凛太郎は確かに聞いた。

それはつまり、誰かに頼まれて

エルフや獣人を掴まているということ。

彼らを縛りあげて尋問すれば、

その依頼主に辿り着くことができるはずだ。

たった10人あまりの人間では、

凛太郎の奇襲に対応できない。

名前を呼ばれた二人の男が

武器を持って凛太郎の方へ歩いてくる。

凛太郎はエーゼコルドを右手に構えた。


「…何の音だ?」


角を曲がって二人の姿が

彼らに視認できなくなった瞬間、

凛太郎の刃が二人の意識を落とす。

やはり気絶付与は優秀だ。

返り血で汚れる心配もなく、

しかし経験値はしっかりと入る。

左手で二人の男の体を掴み、

それを彼らの方へ高く放り投げる。


「うわっ!なんだ!?」


彼らの視線を上に集中させ、

その隙に凛太郎は中へ突入する。

目で追うことさえ許さない速さで、

凛太郎は次々に彼らの意識を狩った。


「敵襲だ!」


しかし、彼らの中には手馴れもいた。

いち早く侵入者の襲撃に気づき、

倒れてくる仲間を蹴飛ばして視界を確保すると

腰から下げた武器を手に取る。

彼らの間を縫うようにして

駆け回る人影を視認して剣を振るが、

目で見てから動いていては

凛太郎の速さには追いつけない。

武器を取った者も一人二人と倒れ、

やがてただ一人の男が残される。

彼は先程、二人の男に命令を送っていた。

つまり、彼らの中のリーダー役だろう。

話を聞くなら最も情報を持っている者だ。


「クソっ、なんて速さだ!」


他の仲間は全員倒された。

彼は壁際に寄って死角をなくし、

侵入者の攻撃に備える。

しかし、視界を確保できていても

彼に凛太郎の姿は視認できない。

気を張っている今の彼であれば

凛太郎のユニークスキルを

突破することも可能だろうが、

今は物理的に凛太郎の姿は消えているのだ。


「───速いだけではない。」


「……ぐはっ───!」


影に潜むことができる影移動。

倒れた彼らの影に紛れて

床から壁へと静かに迫り、

男の背後から刃を振った。

だが、先程までのエーゼコルドが持つ

気絶付与での制圧ではなく、

属性付与の魔法で雷属性を纏わせて

男の体を痺れさせた。

気絶させるまでもなく、

体の自由を奪うことはできる。


「か、体が…動かねぇ……。」


うつ伏せに倒れた男の背中を踏みつけ、

簡単に起き上がれないようにすると同時に

凛太郎の顔を見させない。

男がどんな者と繋がっているのか不明な以上、

余計な情報を与えたくない。

ここに囚えられた者がいるのなら、

正義は凛太郎にある。

わざわざ名乗る必要もないだろう。


「俺の質問に素直に答えてくれたら、

命を取るまではしない。

俺が聞いた以外のことは何も言わず、

俺のことも詮索するな。」


尋問をするのは初めてだが、

うまくできるだろうか。

凛太郎は少しだけ不安になりながらも、

男の背中を強く踏みつけた。

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