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マーガレットお婆さん

 「あら? ミミン? どうしたのこんな夜遅く? でも、使用人同士の夜間の会合等は禁止されているから帰りなさい。わかりましたか?」


 私はどうしても昨日の事が気になり、使用人のボス的存在のマーガレットお婆さんの小屋を訪ねました。


 「す、すみません……それはわかっていましたが、実は昨日夜にヤヌスお妃様が私の小屋に来訪したんです。でも別人みたいで……」


 「わかりました。ちょっとだけですよ。入りなさいミミン」


 マーガレットお婆さんの小屋内もまた、何もない殺風景でした。

 しかし、私の部屋にない物がありました。たくさんの日記帳らしき冊子が積み上がっていました。


 「とりあえず座りなさい」


 「は、はい」


 私はたくさんの冊子が気になりましたが、昨日起こった出来事を話しました。


 「……ミミン。これは答えになっていないかも知れませんが聞きなさい」


 「はい」


 「私は今でこそ、このお城の使用人として働いていますが、二歳くらいの時から50年間ヤヌス様の実家――アンドレアス家で働いていました」


 二歳の時から働いていた……。

 ヤヌスお妃様からは聞いていたが、本人から聞くとまた違った衝撃を受ける……。


 「はい。マーガレットお婆さんが二歳の時から働いているのは、お妃様から聞いて存じておりました」


 「だからもちろん、ヤヌス様が産まれた時からお世話をさせて頂いてました。そして、あの方は物心付く前から皇太子様のお妃様になる様に育てられたのです」


 「…………」


 「王室の家系に入る事はアンドレアス家にとって悲願であった。その為にヤヌス様は知的な淑女としての英才教育はもちろんの事、お作法、美の追求、人付き合い――全てにおいて完璧に管理され、今に至るのです」


 「…………」


 「私が話せるのはここまでです」


 「はい。わかりました。ですが、一つだけ聞かせて下さい。お妃様は幸せなんでしょうか?」


 「口を慎みなさいミミン。私は幸せかどうかで人生が充実しているか? なんて物差しで測るものじゃないとおもいます。運命と言う波にどれだけ逆らわないか……それだけです。私自身、幸せかどうかなんて考えた事はありません。逆にそれを考える事自体、相手に対して失礼ですよミミン。今の言葉取り消しなさい。わかりましたか?」


 「は、はい……わかりました。今の私の質問はなかった事にして下さい」


 「なら良いです。ミミン、あなたに起こった出来事は聞かされて、私も知っています。だから最初で最後、私からあなたに伝えたい事――とにかく目の前の運命を全力で生きなさい。しっかりやりなさい。ただそれだけです」


 「はい……」


 誕生日も知らないマーガレットお婆さん。

 自分が何歳かもわからないマーガレットお婆さん。

 二歳の時から日々運命だけを生き続けて来たマーガレットお婆さん。

 

 一見、自分の感情とは向き合う事は皆無なマーガレットお婆さんの人生。


 でもね、違うよね?

 だって、その日記帳にはお婆さんの日々の感情がたくさん……たくさん書かれてるんじゃないの?


 いつか見せてよ、マーガレットお婆さんのホントの気持ち。絶対だよ?


 ◇◆◇◆◇◆


 ガチャ


 「おい! 余りある欲望を抑えきれなくなり夜遊びか? 欲望まみれのシンデレラ!」


 部屋に待っていたのは、いつもの男……。

 そうか。これも運命だね。

 だったら、今日は向き合ってみようかな?


 

 


 



 

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