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見えない光

 こんな事になっちゃったけど、仕方ないよね……。


 私は今、牢屋の中で正座をして瞑想しながら自分自身を納得させる様に努力をしています。


 なぜこんな事になったか?

 

 大暴れに関しては何も表沙汰になることなく、翌日の準備も滞りなく完了。お妃様の嫌味、12時の謎の男の来訪と特に変わりはありませんでした。


 私が大暴れをした翌々日の結婚式の日にとんでもない事件が起こったのです。


 結婚式のクライマックス、大勢の来賓が見守る誓いの儀でそれは起こりました。


 「汝はこの先、ヤヌスを妻と認め永遠の愛と情を持ちづつける事を誓いますか?」

 神父様の問いに対して、皇太子様は無言30秒。周囲がざわつき始めたその時――結婚はしない。僕には別の意中の方がいる――などと言い放ちました。

 ざわつきから、驚愕の声々に変わり、お妃様は茫然自失。

 国王様は慌てて皇太子様に激昂。

 神父様は慌てふためくだけ。

 そして皇太子様の絶叫。

 

 「僕はミミン嬢をお妃として迎えいれたい!」


 私は会場の一番隅で見守っていました。

 「ミミン! 僕の前に来てくれ!」


 どこまでも自分勝手な方だ――


 私は逃げる様に会場から立ち去ろうとしましたが、出口付近で12時の謎の男に捕縛され皇太子様の前に無理矢理引き渡されました。


 「僕はやはり君が忘れられない。お願いだ。僕のお妃になってくれないか」


 ハイなんて言える訳ない。

 例の事件の時には私の言葉に耳を傾けてくれなかった……信じてくれなかった。そしてその事に対して謝罪もない。私にはお妃様の性根が嫌だから、一番手近な私に逃げただけ――そう思ってしまいました。

 それにこんな大事な場で、こんな事を言われたヤヌスお妃様に対してなんの配慮もない……いくら私に対して嫌味ばかりでも、同じ女性として逆の立場だったら、どんなに辛いだろう……そう思ったのです。

 もちろん私自身、皇太子様に気持ちがない事はすでに気付いていたので、嫌悪感、不信感でしかなかったのも否めません。

 そうなると、怒りのみが込み上げました。

 もうどうなってもいい……

 「最低っ!」

 私は皇太子様に、再び金蹴りと新たに平手を放ちました。


 もちろん周囲の警護に当たっていた衛兵に取り押さえられ、とりあえず王室に対しての侮辱罪でそのまま牢屋へ連行。

 現在に至ると言う訳なのです。


 ほんとにどうなってもいい。

 もう全てが訳がわからない。

 

 ほんの一ヶ月前までは普通に暮らしていた。

 それが婚約をし、破棄され、働き口がなく使用人になり、お婆さんが亡くなり、謎の男に犯人扱いされ……挙句の果てに再びふざけたプロポーズ。


 なんでこんな事になったのだろう。

 私が何をしたって言うの?


 悪い事をしたなら謝るよ。

 

 私は自問自答しながら、この先の自分の人生に光がない事も同時に感じていました。


 もういいや。

 

 ガチャン


 牢屋が開いた。

 目の前には謎の男。


 「ミミン……」


 思えばこの男が私を皇太子の前に差し出さなければこんな事にならなかった。でもどうでもいいや。

 いつもの決まり文句がなく、牢屋に入って来た謎の男。


 「ミミン。済まなかった」

 「え?」


 男はそう言いながら静かにひざまずきました。



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