表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/32

25.疑う前によく見ること、証拠をもって疑うこと

「この後のリチャード3世の行動から推測する。

 アンソニー・ウッドヴィルから得られた情報は多分

『ウッドヴィル家の誰かが』

『聖職者と示し合わせて』

『戴冠式で騒動を起こし』

『傅役のアンソニー・ウッドヴィルと護国卿リチャードを討ち取り、新王を傀儡化』だ」


「なるほど、何で坊さんを逮捕したのかと思ったけど、それなら分かる」

「という事は、リチャード3世はまだ『ウッドヴィル家の一部が結婚の無効を騒ぎ立てて王子を庶子扱いする事で、偽王排除の暴動を誘発して動揺を突く計画』だっていうのを知らない可能性があるのか?」





 寄り合い同好会集団、合同同好研究部。

 暇に飽かせて、童謡『Who killed Cock Robin』の元ネタを検証していたところ、歌の由来がリチャード3世の鎮魂を祈るものだったのではないかという仮説が出た。


 リチャード3世と言えばシェイクスピアに描かれる悪役主人公であるが、その悪行の多くは後代に創作されたものとされる。


 イングランドとフランスが争った百年戦争の終わり頃、イングランドでは中央政治から遠ざけられた貴族の間で、枢密院への不信が募り爆発。薔薇戦争が勃発する。

 その争いの中心となったのが枢密院のランカスター家とその分家ボーフォート家。そしてリチャード3世の父親、ヨーク公リチャードである。


 ヨーク公リチャードは王位継承権を得るものの、戦死。代わってリチャード3世の兄がエドワード4世として王位に就く。

 エドワード4世と従兄弟のウォリック伯、リチャード・ネヴィルが協力し、敵対していたランカスター派を追い落とすことに成功。

 この治世の間、リチャード3世はグロスター公の地位を与えられ成長していく。


 しかしエドワード4世の秘密結婚の頃から徐々にエドワード4世とウォリック伯の仲が悪化。

 ウォリック伯はクラレンス公ジョージと結託して反乱を起こし、エドワード4世とグロスター公リチャード達は国外に脱出する。


 その翌年、エドワード4世とグロスター公リチャードは軍備を整え、反攻を開始。

 この戦いによりウォリック伯は討ち死に、国王だったヘンリー6世の直系は途絶え、ランカスター派は勢いを失い、エドワード4世は国を治めた。


 エドワード4世の治世中、兄弟であるクラレンス公ジョージの処刑や、周辺国との戦争などがあったものの、概ね穏やかに国は保たれていた。

 しかし、そのエドワード4世が急死する。


 エドワード4世は死の間際に、グロスター公リチャードを護国卿に任命した。

 しかし、グロスター公リチャードは突然、甥の戴冠式を延期。

 秘密結婚の以前に別の女性と交わされていた兄の婚約によって、義姉との結婚は成立していないと発表。甥であるエドワード4世の息子たちの嫡出を否定し、継承権を無効化。自身が王位に就いた。

 リチャード3世である。


 しかし簒奪の形になったためか、国内が不安定化。

 リチャード3世と同盟者のはずのバッキンガム公の反乱などが勃発。

 ボズワースの戦いではリチャード3世のほとんどの軍が動かず、ランカスター派の当主、ヘンリー7世に敗北した。



 この一連の史実を確認した上で、一番極端な事を仮定した。すなわち、リチャード3世が完全に無罪だった場合、何を思ってどんな行動をしていたのか。である。


 そして出てきたのが、エドワード5世戴冠式騒動の真犯人は、エドワード4世時代の恩恵が無くなる事を恐れたウッドヴィル家の一部が、リチャード3世を排除しようとしたのではないか。その背後にランカスター派が居たのではないか。という仮説である。


 新王の傅役だったアンソニー・ウッドヴィルとともに暗殺の陰謀に巻き込まれ、二人同時に殺害されるという事態を避けるために別行動を選択したのではないか、その結果、情報の行き違いか陰謀かでアンソニー・ウッドヴィルは処刑されたのではないか、という仮定で進めている。





「つまり、戴冠式までに関係者と坊さんの中に潜んでて、騒動を起こそうとする連中と計画内容を炙り出さないといけないわけだ」


「仮に計画が分かってても、誰が関係者か、または逮捕するだけの証拠がない可能性もある」

「誰も信用できない………」

「被害者になる甥っ子達ぐらいだな。信用できるの」


「例えばこの騒動で逮捕、釈放された司教のジョン・モートンだけどさ。

 この人、後に反乱に加わって、鎮圧された後はヘンリー7世に付いて、ボズワースの後も新政府の重鎮やってるのよ。

 もともとランカスター派? それともこの騒動でリチャード3世アンチになっただけ?」

「全然わからん」

「駄目だ、誰が敵で味方か分からん………」



「いややっぱおかしいって。いくら何でもヘイスティングスは味方だろ」

「誰だっけ?」


「ウィリアム・ヘイスティングスWilliam Hastings。

 エドワード兄さんの友達。従兄弟のウォリック伯に国を追い出された時もブルゴーニュについて来てくれて、その後の戦いでもずっと一緒」


「エリザベス義姉さんがエドワード兄さんに直訴するための繋ぎを作ったの、この人じゃなかったかな? エリザベス義姉さんの遠縁か何かで」

「ただエドワード兄さんの悪い遊びを助長してたのがヘイスティングスなんで、エリザベス義姉さんと仲が悪くなってたって話がある」



「エドワード兄さんが亡くなった時にはエリザベス義姉さんはリチャード3世を警戒してたから、リチャード3世抜きで戴冠式の準備してた。

 それを知らせてくれたのがこのウィリアム・ヘイスティングスと言われている。

 だけどリチャード3世はこのタイミングで処刑してる」


「ヘイスティングスの処刑が滅茶苦茶早いのは同世代人の間でも話題になってたみたいだ」

「……多分、ad hoc commissions………ad hoc Court of Chivalry?っていう……臨時騎士法廷? 今で言う…何だろ? 略式裁判所?

 要するにこういうテロみたいな状況……反逆罪とかの時………リチャード3世の役職、Lord High Constable of Englandっていう役職は簡易裁判所を開けるっぽい?

 それでスピード審査で有罪判決になったんじゃないかって事らしいんだ。執行の速さと、反逆罪なのにヘイスティングスの後継者の継承権の剥奪が無い事から、ここで判決を下されたとされてる」


「ごめん、ロード、何? 護国卿とは違うの?」


「リチャード3世、時々役職掛け持ちしてるっぽいんだよ。さっきの長い名前のは大司馬って訳されることもあるみたいだけど」

「その昔、中国には司馬、司徒、司空っていう官職があって、それぞれ司馬は軍人。司徒は行政官って感じ。司空は、まぁ刑務官とかかな? 囚人の監督とその労役のための土木工事が管轄らしい。

 それらの一番偉い人が古代中国で大司馬、大司徒、大司空の三公と呼ばれた役職なんだそうな。だから大司馬は軍事の一番偉い人。

 そしてConstableっていうのは語源がラテン語のComes stabuli、厩舎の伯爵Count of the Stableっていって、馬を管理する責任者だったらしい。だからConstable of Englandは、この15世紀は国防を担う役職。

 どの文化圏でも、馬は軍事行動に欠かせなかったからなのかな」

「へー…異文化で似た由来の名前になるパターンか。けど何の話だっけ?」

「な? 地位の話を真面目に日本語に直そうとすると歴代ヨーロッパ各国と歴代中華王朝とかに頭ぶつけて死ぬだろ?

 とにかくリチャード3世は当時のイングランドで国防とその司法関係のものすごく偉い人のはずだ」




「この辺ってどういう経緯だったか分かる?」

「えーと、ヘイスティングス、ジョン・モートン、あとトマス・ロザラムThomas Rotherhamって司教が6月13日、評議会の会合でリチャード3世に逮捕された。

 ヘイスティングスは即日処刑。トマス・ロザラムは拘留後7月に釈放。ジョン・モートンは……いつかは分からなかったけど、バッキンガム公の監視下でウェールズへ送られた。っていうのが通説」

「北西部の有力貴族、トマス・スタンリーThomas Stanleyがヘイスティングスと同日に逮捕されたって話もあるみたい。この人はすぐ釈放されてる」



「バッキンガム公とジョン・モートンはこの後反乱を起こしてるから……黒? いやでもバッキンガム公がジョン・モートンの監視って事はバッキンガム公はこの時点では信用されてたはずで……」


「トマス・ロザラムはエリザベス義姉さんに味方してる。寺院に匿ったのがこの人らしい」

「いやおかしいだろ。何でエリザベス義姉さん寄りの奴とヘイスティングスが同時に逮捕される?」

「トマス・ロザラムは何か前も出てきた国璽(こくじ)の扱いに不備があったとか何とかあった気がするけど分かんないんでパス………」


「ヘイスティングスとトマス・スタンリーはリチャード3世寄りの同じグループとして見ていいはずだよな? ウッドヴィル家と仲が悪い。何で処分が違う? ヘイスティングスだけ黒だったって事?」


「トマス・スタンリー、ヘンリー7世の母親の再婚相手で、ボズワースで人質とられても動かなかった部隊だぞ。絶対処刑する相手を間違えてるって」


「混乱してきた」



「狙いがウッドヴィル家とネヴィル家の同士討ちだとすれば、リチャード3世暗殺は最優先課題だろ。

 ヘイスティングスがその為に義姉さん達を牽制してリチャード3世を呼び寄せてたら……?」


「いやいやいやいや普通に呼ぶでしょ!」

「戴冠式までには数か月かかるんだからヘイスティングスが呼ばなくても遅かれ早かれリチャード3世は来る。ヘイスティングスは無罪だよ」


「でもエリザベス義姉さん達の予定通りだったら5月の頭だったはずで、けっこうぎりぎりだったじゃん? 暗殺者が万全を期すならいつリチャード3世が居るかっていうのはかなり大事だ。やっぱりヘイスティングス……黒?」

「いや、ヘイスティングスの逮捕時にバッキンガム公が居たって話がある。後にリチャード3世に反乱起こしてる。

 この時に既にランカスター派と手を組んでて、ヘイスティングスの裁判に関して何か誘導したんじゃないか?」


「人 狼 ゲ ー ム み た い に な っ て る」


「いやでも……まさか本当に裁判を利用して味方削られてんのか?」

「怖すぎるよ、敵どこに居るんだよ」



「でもこれでむしろエリザベス義姉さんはほぼ白だ。

 リチャード3世抜きで戴冠式しようとしてたなら」

「それはちょっと良かったような……」

「え、待って混乱してる、説明詳しく」



 部長が軽くまとめる。

「落ち着いて整理しよう。陰謀が2つある。

 一つは軽い方。エリザベス義姉さんがリチャード3世を警戒して、息子の政権から遠ざけようとしてる。

 もう一つは重大な反逆罪。何者かがエドワード兄さん達夫妻の結婚無効を告発する事によって甥っ子の戴冠式と継承権ごと引っ繰り返し、偽王排除の暴動の混乱の最中にリチャード3世の暗殺を狙ってくる。

 この二つの陰謀は相反する。

 一方はリチャード3世を戴冠式から遠ざけるのが目的だ。

 もう一方はリチャード3世に戴冠式に出てもらわないと暗殺に都合が悪い」



「エリザベス義姉さん側じゃないって事は………

 ヘイスティングス……暗殺の方…?」

「いや絶対記録自体がおかしい。

 逮捕拘留が相次いだせいで記録が混在してるんじゃないか?」


「でもヘイスティングスしっかり処刑されてんのよ」


「ヘイスティングスがウッドヴィルと組んでリチャード3世暗殺は無い。

 ウッドヴィルが騒動を起こす方ならヘイスティングスの役割はどこだ? 実行犯か?

 リチャード3世は油断はしてくれるだろうけど、暗殺した後にヘイスティングスがウッドヴィルに裏切られてまとめて殺される。

 あるいは反逆の主犯を擦り付けられて処刑、ウッドヴィル一人勝ちのパターンの方がありうる。

 手を組む方がリスクが高い。仮にヘイスティングスがリチャード3世を殺そうと思ってても、この計画には絶対乗らない」



「黒幕がヘイスティングスだったりしない? リチャード3世を王位に就けるために、仲が悪くなったウッドヴィル家を甥っ子達ごと追い落とそうとしたとかさ」


「………多分違う。まず、このままの計画だとウッドヴィル家とリチャード3世と同時に敵対しないといけなくなって立つ瀬がない。

 リチャード3世に話を通しておかないと、ウッドヴィル家を追い落とした所で立場が悪くなるのはヘイスティングスだ。反逆罪なんだから」


「リチャード3世のおじいさんが勝手にモーティマー家を担ぎ上げてヘンリー5世を暗殺しようとしてるから、無い事も無いんじゃないか?」


「いや、ヘイスティングスが黒幕なら処刑した時点で決着はつくし、黒幕であったならなおさら背後を洗わなきゃいけない、即日処刑は無い。

 極めつけが、ヘイスティングスはエドワード兄さんと同じ墓所に葬られている。埋葬したのはリチャード3世。

 裏切り行為をしてこの扱いはないはずだ」


「じゃあヘイスティングス真っ白になっちゃうじゃん。

 何でリチャード3世は殺したの?」

「簒奪に利用するだけして口封じしたんじゃね? って言われるゆえんである」

「今、リチャード3世無罪説やってるんだけど」




「……この臨時法廷ってリチャード3世が開いたんですか?」


「他に居なくない?」

「詳しくは分からないけど、これってConstable of England以外にも、軍務伯Earl Marshalっていう役職も開けたりしませんか?」


「………軍務伯、誰?」

「出典が分からなかったんですが、1483年の軍務伯、多分途中で初代ノーフォーク公ジョン・ハワードに代わってます。交代時期は分かりませんが、その前任者と思われるのはリチャード3世の甥の弟の方、10歳のリチャード。その代理で初代ドーセット侯爵トマス・グレイThomas Grey。

 ドーセット侯トマス・グレイはエリザベス・ウッドヴィルの前夫との息子」


「待って。エリザベス義姉さんの息子って事はさっき北に送って処刑された……」

「この人から見てアンソニー・ウッドヴィルとリチャード・グレイは叔父と弟ですね。後にバッキンガム公の反乱に加わってリチャード3世と対立したのはそうした理由とされています」


「二人の逮捕に対する報復でヘイスティングスが殺された?」

「初手が過激すぎない?? 13日時点ではまだアンソニーさん達、死んでないよね?」


「え、待って。これって戒厳令発したリチャード3世しか開けないんじゃないの? 戒厳下ならトマス・グレイも権限持ってて開けるの?」

「戒厳令いつ出たの? 今戒厳下なの?」


「中世イングランドのそんな高度な法律分かんないよ」

「つーかこの戒厳令と臨時法廷システムもよく分かってないからな俺ら」

「普通はイングランドの偉い人しか把握してない法律だからな。何で日本の中学生がちょっと知ってるかって言ったらワールドワイドウェブのお陰でしかないぞ」

「仮に開けないとしても、リチャード3世達が必死で何か捜査してるのは皆分かるでしょ? いかにもリチャード3世に頼まれましたって顔で手続き始めたら………通しちゃうんじゃない………?」



「いや…おい………。グレイ家はたしかレスターシャーを巡ってヘイスティングス家と対立してて―………

 トマス・グレイ、どさくさに紛れて職権乱用して政敵葬ったんじゃないか?」


「………臨時法廷の記録はあまり残っていないらしい」


「それ成立したら無茶苦茶じゃねーか!」

「いや、この人は今、厳重マークされてるウッドヴィル家でしょーが!

 流石に無理じゃない? 裁判にかけられる側でしょ?」



「トマス・グレイは護国卿不在の間に、エリザベス義姉さんと一緒に議会を動かして戴冠式を前倒ししようとしてる。ある意味エリザベス義姉さんと同じぐらい暗殺に関しては白」


「実はヘイスティングスが処刑された正確な経緯も分かってない。

 ヘイスティングスは会議で暗殺用の武器を持ち込んだとしてリチャード3世に告発され、即日死刑が執行されたという話もあれば、奥に連れていかれて暗殺まがいに殺されたって説もある。

 これ、本当ならかなり無理筋らしいんだ」



「ヘイスティングスと共謀したとされるジェーン・ショアJane Shore、トマス・グレイとも関係してるよ。この人をめぐってウィリアム・ヘイスティングスとトマス・グレイは恋敵だ」

「え? 痴情のもつれ?」

「ジェーン・ショアを拘束したのはトマス・ハワード、二代目ノーフォーク公って説があるんだが」

「え?!」

「ジェーン・ショアの容疑はエリザベス・ウッドヴィル達による護国卿排除の共謀罪です。ヘイスティングスとの連絡役をしたとされています」

「あれ?! 軽い方!?」


「ヘイスティングスとエリザベス義姉さんが共謀はもっと違うだろ? リチャード3世を呼んだのヘイスティングスだぞ??」


「ジェーン・ショアの罪状は前に乱痴気騒ぎを起こしたからって話があるんだが……。前からエドワード兄さん達とつるんで悪さしてたとか」

「待って待って待ってまた混乱してきた」



「………ジェーン・ショア、エドワード兄さんの悪い遊び仲間だったはずだ。陰謀に関係ある無しは置いておいて、とりあえず拘束したんじゃないか?」

「よく考えたら甥っ子の戴冠式があるんだから、いつもの風紀乱す奴もどっか放り込んどこうって気も起きるか……」


「それで下着で晒し者に?」

「余計風紀乱れそうだけど」

「まぁ当時の刑罰の価値観とか実際に何があったのかとかは分かんないんで、その辺は何とも言えないけど」

「何かこのジェーンショア回りもごちゃごちゃしてるから正しい資料が分かんないんだよね」



「とりあえず、トマス・グレイ結局自由に動けたのか動けなかったのか、どっちだ?」

「わかんない」

「間違いなく暗殺の陰謀に関わって無いからって放っておいたら、どさくさに紛れて職権乱用した………?」


「……もしそうなら逮捕日が6月13日に重なってるの、多分偶然じゃない。ジョン・モートンやトマス・ロザラムの逮捕でリチャード3世達が忙しくなるのを見計らったんだ。

 そこでリチャード3世派と目されてたトマス・スタンリーやウィリアム・ヘイスティングスを………」


「………はっきり断言できないけど、ヘイスティングスに関してはすげーエリザベス義姉さんの息子のドーセット侯トマス・グレイが怪しい」


「ジェーンショアの逮捕容疑。トマスグレイを匿ったから説があったような………」

「もしかして、知り合い泊めたら知らん内に共犯者になっちゃってたパターンか?」



「トマス・スタンリーさ、ランカスター派の関与を洗うために、ランカスター派筆頭の再婚相手って事で事情聴取ってなったんじゃないか?」

「えーと………」

「トマス・スタンリーの奥さんはヘンリー7世のお母さん、再婚相手」

「ああ、つまり13日にリチャード3世達に一斉逮捕されたランカスター派容疑者の一人って事か」

「これはリチャード3世、忙しそう………」

「つまりリチャード3世が逮捕したのはジョン・モートン、トマス・ロザラム、トマス・スタンリーで、ランカスター派の陰謀を捜査していた。ドーセット侯トマス・グレイはどさくさに紛れて勝手に裁判してヘイスティングスを殺した?」

「この説だと、そういうことになる」

「リチャード3世にしてみれば疑わしい奴は一斉検挙するしかないからな。日付ずらして相手に気付かれたら、捕り逃がしたり証拠隠滅の可能性もあるし」



「このリチャード3世無罪説で行くと『リチャード3世達が暗殺計画を追ってたって話とドーセット侯トマス・グレイが何かやったって話が消えたせいで、逮捕容疑や執行内容の記録が混乱している』。

 ………ただ従来の『リチャード3世が簒奪の前準備に難癖付けて邪魔者を消しに行った』より強いかというと……」

「トマス・グレイとかが何かやってたとしても、誰が誰にどんな処分下したか証明できない……」

「つーかそもそもトマス・グレイ、本当にこの厳戒態勢の中で主要施設の中を動けんの?

 千載一遇とはいえ流石に無理じゃね? 臨時法廷開くのは……」


「おもしろいからリチャード3世無罪説は続けるよ。他に謎の刑死者は居ないかな?」

「他の処罰者全員は知らないけど、有名どころはアンソニー・ウッドヴィル達と同盟者のはずだったヘイスティングスのはず」


「そうなると次は教会の坊さんか」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ