第十八話 友達
神宮平国立博物館。
学芸員と設備スタッフが、新しい肖像画を飾っている。
「展示会に間に合わせていただいて」
と、学芸員が貴理川凶治に礼を言った。
「新作なので、大事に扱って」
作者である貴理川凶治の瞳はギラギラしていた。
誰もが才能ある画家だと思っている。その正体を知らずに……。
博物館の外には、悟が立っていた。
すでに、元霊界探偵の触角は、反応しているらしい。
霧獣院ハウス。
花見と沙耶は、姫乃樹優香の部屋にいた。
ここは姫乃樹フレグランスという香水占いをしている部屋。
沙耶の胸元には、宝石のペンダントが光っている。
「宝石を抱く少女というイメージで、調合してみるね」
優香は、沙耶に香水のプレゼントを約束した。
「いいマンションですね」
「まぁ、変な人が多いけどね」
「友達か?」
烈司がいた。
花見は烈司を沙耶に紹介した。
「これから修行なんだ」
と、出ていくとすぐに、キシムが刀を担いででてきた。
花見はキシムも紹介した。
「これから修行なので失礼します」
「修行している人が多いですね」
「だから言ったでしょ、変わった住人ばかりだって」
沙耶は苦笑していた。
二人は、集会室でお茶とお菓子を食べた。
沙耶は小学校から転校が多く、そんな悩みを打ち明けてくれた。
花見も、自分の境遇を話し、より二人の関係は深まった気がした。
最後に、沙耶は、古都音の聖女を識別する鏡とよばれるバイオリンの音色を堪能し、帰っていった。
「素敵なマンションですね」
そんな言葉を沙耶は残した。
花見は、色々と複雑な事情を抱えるマンションなんだけど……。
そう思ったが、何も言わず、沙耶に手を振った。