第十六話 花弁宝石爛舞
神宮平 国立博物館。
今回の展示は大々的に宣伝されている。
テレビの取材も来ていて、かなり注目されていた。
時間によっては行列ができるほどの盛況ぶりだった。
招待状で入館した花見とかえで。
受付の先で沙耶が待っていた。
「さっそく来ちゃいました」
微笑みが重なる。
沙耶の胸の輝きを見た花見。
「キレイ」
「これは、花弁宝石爛舞と同じ宝石で作ったの」
光の具合で、様々な色に変化する石をペンダントにしていた。
「学校ではつけていませんけど、外出の時はお守りにするようにと、父が……」
「崇高な輝き」
かえでは、その光に目を細めた。
「ご案内します」
沙耶は館内に招いた。
貴重な天然石の展示から、芸術家の創作作品まで。
既存の展示品も人気だが、今回は宝石がテーマとなる品々に注目が集まっている。
ショーケースの周囲に人だかりができていた。
「見えないね」
背伸びする花見。
花弁宝石爛舞は、一番の話題作品、一目見ようと人が集まっている。
三人は、人を押し分け真ん中まできた。
「これは!!」
花見の瞳が虹色を映した。
生け花を思わせる外観。
ただ、花弁の一枚一枚は様々な宝石を薄く加工して作られている。
光によって、花の色が変わるから不思議だ。
どよめきや溜め息が、来場者から漏れている。
沙耶のペンダントが共鳴したのか、花の光を吸い込み、今まで以上に輝きだした。
「沙耶ちゃん、ペンダントが」
「うん、兄弟のような宝石同士が光を引き付け合うみたい」
花見とかえでは、不思議な現象に目を奪われた。
歩き出した三人。
「他にも珍しい芸術品があるのよ」
そこに、
「お父さん……」
沙耶の父、西園寺生馬が立っていた。現在、西園寺家の当主だ。
「いかがでした?」
ハンサムで高貴なお父さんだった。
「花弁宝石爛舞、すごくきれいでした」
「それはよかった。沙耶のこと、これからもよろしくお願いします」
生馬は、みんなを喫茶室へ案内した。
「遠慮せず、好きなものを注文して」
「ホットケーキが美味しいのよ」
生馬と沙耶にすすめられた。
生馬が芸術品について語っていると、オーダーしたケーキと飲み物が届いた。
その頃、ある絵画の前に、来場者の男が立っていた。
中世の人物、その肖像画だったが、とてもリアルに描かれている。
???
肖像画の目が動いたような???
男は不思議に思い、じっと見つめる。
男の瞳は赤く腫れていくように変化していた。
トイレでから煙がでた。
肖像画を見ていた男が逃げていく。
火災報知器が作動した。
喫茶店にも火災の発生が知らされる。
花見と生馬はすぐに立ち上がった。
花見と生馬が消火器をもってトイレに駆け込む。
炎に消火剤を噴射。
対応が早かったので、すぐに火は消えた。
非常事態??
花弁宝石爛舞に警備員が集まり警護する。世界的にも貴重な芸術品だ。盗難はもちろん破損も許されない。
その様子を見ている男がいた。
画家の貴理川凶治だった。